Chippa

3.0
Chippa

 2020年6月1日からNetflixで配信開始された「Chippa」は、チッパーという名のストリートチルドレンが10歳の誕生日の日にコルカタの夜の街で繰り広げるちょっとした大冒険を描いた作品である。基本的にはヒンディー語映画だが、コルカタを舞台にしているだけあってベンガル語の台詞もかなり出て来る。また、ウルドゥー語が重要な役割を果たす。

 監督は新人のサフダル・レヘマーン。主人公の子役はサニー・パーワル。「Lion」(2016年/邦題:ライオン 25年目のただいま)や「Love Sonia」(2018年)などに出演していた俳優である。他に、マスード・アクタル、チャンダン・ロイ・サーンニャール、ジョイラージ・バッターチャルジー、スミート・タークルなどが出演している。

 ストリートチルドレンのチッパー(サニー・パーワル)には両親がおらず、道端で屋台を経営する叔母に育てられていた。チッパーの父親は彼が幼い頃に姿をくらまし、母親は死んでいた。

 10歳の誕生日を迎えたチッパーは父親から手紙を受け取る。だが、その手紙はウルドゥー語で書かれていた。チッパーは家出をし、夜のコルカタを彷徨う。タクシー運転手、警察官、酔っ払いなどとの出会いを繰り返しながら、チッパーはウルドゥー語が読める人を探す。また、途中でチッパーは子犬を拾い、ピッパーと名付ける。

 とうとう、ウルドゥー語新聞を売る男サーヒル(チャンダン・ロイ・サーンニャール)に行き着く。だが、彼もその手紙を読むことはできなかった。サーヒルはチッパーとピッパーを家に招待する。だが、家では夫婦喧嘩が起き、チッパーとピッパーは黙って外に出る。

 こうしてチッパーは叔母のところに戻ってくる。一方、実はサーヒルこそがチッパーの父親であることが分かる。

 両親がおらず、育ての親となっていた叔母からは冷遇されるストリートチルドレンが家出をする物語であり、普通に構成したら暗い話になりがちなのだが、サニー・パーワルが天真爛漫にチッパーを演じていることや、時に不釣り合いとまで感じられるほど軽快なBGMが物語を彩っていることなどから、全体を通して愛嬌あふれる映画になっている。子供向け映画の範疇に入ることもその一因かもしれない。

 夜のコルカタを10歳の子供が徘徊するのは実際には危険なのだが、主人公チッパーが出くわす人々は基本的にとても優しい。それは、チッパーがやけに大人びた態度を取る姿がかわいらしく、大人の心を癒やしていたからでもある。また、チッパーは機転の利く子供でもあり、大人にどんなことを言えばかわいがってもらえるのかを熟知している。こうしたわけで、チッパーはうまく世渡りしていいくのである。

 チッパーが求めていたのは、行方不明になった父親から突然届いたウルドゥー語の手紙を読める人だった。出合った大人と少し仲良くなると、ウルドゥー語が読めるか聞く。ベンガル語が主流のコルカタの、しかも夜中の路地において、ウルドゥー語の読み書きができる人を探すのは難しいだろう。それでもチッパーは諦めずに様々な大人との出合いを重ね、最終的にウルドゥー語が読める男サーヒルに巡り会う。

 実は、サーヒルこそがチッパーの父親だった。チッパーの母親を捨てて、別の女性と暮らしていたのである。だが、この夫婦の間には子供がおらず、夫婦仲は悪かった。また、サーヒルはチッパーが自分の息子だと気付き、彼を家に招くが、チッパーに自分が父親だとは明かさなかった。おそらくサーヒルとチッパーはその後再び会うことはなかっただろう。

 シンプルな映画ではあったが、詩的な映画でもあり、様々な解釈が可能だ。少年が一夜の大冒険をして成長する物語とも捉えることができるし、父親に恋い焦がれる少年が一夜だけ父親に出合えたことをシンミリと味わう映画とも捉えることができる。意地悪な叔母の元を離れて家出した少年が結局叔母のところに戻ってくる結末からは、どんな環境でも家族の元が一番というメッセージを受け取ることができる。

 「Chippa」は、10歳の少年が家出をし、夜のコルカタを彷徨いながら、様々な大人との出合いを繰り返す物語である。どこかお伽話のような、それでいてシンミリする映画に仕上がっている。また、チッパー役を演じたサニー・パーワルの見事な演技も見所だ。