Monsoon Shootout

3.5

 2013年5月18日にカンヌ国際映画祭で上映され、インドでは2017年12月15日に公開された「Monsoon Shootout」は、新人警官が直面した岐路において、それぞれの道を選んだ場合にどのような結果が待っているのかを、それぞれ映像で見せる構造のネオノワール作品である。

 監督は、長編映画は初となるアミト・クマール。主演は「Chittagong」(2012年)などのヴィジャイ・ヴァルマーだが、物語のキーとなる役をナワーズッディーン・スィッディーキーが演じている。他に、タニシュター・チャタルジー、ニーラジ・カビー、ギーターンジャリ・ターパー、シュリージーター・デー、イラーワティー・ハルシェー・マーヤーデーヴ、シュルティ・バープナー、ファルハーン・ムハンマド・ハニーフ・シェークなどが出演している。

 ムンバイー警察の新米アーディティヤ(ヴィジャイ・ヴァルマー)は、ベテラン警官カーン(ニーラジ・カビー)の下に付く。カーンは、とにかく犯人を射殺して物事を終わらせる手法を採っており、アーディティヤにもその方法を教え込む。また、アーディティヤは病院で、大学時代の友人アヌ(ギーターンジャリ・ターパー)と出会い、昔の恋心が再燃する。

 カーンとアーディティヤは、不動産業者を脅して金を巻き上げるダーガル・バーイーと、その殺し屋シヴァー(ナワーズッディーン・スィッディーキー)を追っていた。ある雨の日、アーディティヤはシヴァーを追い詰める。だが、そこで彼の前には3つの選択肢が浮かぶ。それは、正しい道、間違っている道、そして中間の道だった。

 ひとつめの選択肢では、アーディティヤはシヴァーを見逃す。シヴァーが本当に殺し屋か分からなかったからだ。シヴァーはその後、殺しを繰り返し、大きな脅威となった。アーディティヤは現場の仕事を外され、デスクワークに回される。しかし、諦め切れなかったアーディティヤは銃を盗んで一人で捜査をし、シヴァーの行きつけの売春宿で彼を再び追い詰めるが、逃げられてしまう。負傷したシヴァーは、アーディティヤがアヌと一緒にいるところを襲撃し、二人に塩酸を浴びせかける。

 ふたつめの選択肢では、アーディティヤはシヴァーを撃ち殺す。だが、シヴァーは殺し屋ではなかった。シヴァーの息子チョートゥー(ファルハーン・ムハンマド・ハニーフ・シェーク)はまだ小さかったが、ダーガル・バーイーに見出されて殺し屋になり、シヴァーよりも大きな脅威となる。カーンはチョートゥーを殺そうとするが、アーディティヤは彼を逃がす。この失態によりアーディティヤはデスクワークに回される。チョートゥーはダーガル・バーイーを殺し、警察署に現れて、丸腰だったアーディティヤを撃ち殺す。

 みっつめの選択肢では、アーディティヤはシヴァーに威嚇射撃をして逮捕する。アーディティヤの緩急ある尋問によりシヴァーは罪を自白する。だが、カーンたちが裁判所にシヴァーを連れて行く前に彼を殺そうとしたため、アーディティヤはシヴァーを助け、裁判所まで連れて行く。だが、アーディティヤの油断もあり、シヴァーには保釈が認められてしまう。アーディティヤはデスクワークとなるが、タレコミを入手したカーンに連れ出されて港まで行く。そこでカーンは殺され、アーディティヤも足を撃たれる。

 アーディティヤは現場に復帰し、売春宿でシヴァーを捕まえる。ダーガル・バーイーと密約を交わした政治家と結託したニシー警視(イラーワティー・ハルシェー・マーヤーデーヴ)からはシヴァーを解放するように言われるが、アーディティヤはシヴァーとその手下(オーンカルダース・マニクプリー)の間でわざと銃撃戦を起こさせ、始末する。こうしてアーディティヤは昇進する。

 ところが、実際に待っていたのは上記3つ以外の選択肢だった。人生においては、選択肢を選んでいる時間があるわけではなかった。アーディティヤはシヴァーに撃たれ、殺されてしまう。

 殺し屋を追う新米警官が、標的らしき人物を袋小路に追い詰める。彼の目の前には3つの選択肢があった。それは、正しい道、間違っている道、そして中間の道で、警察官だった父親からの教えでもあった。映画はそこを起点として、それぞれの選択肢を選択した場合の未来を辿って見せてくれる。

 正しい道とは、まだ容疑者かどうかも分からない人物を殺しもせず、負傷もさせない選択肢である。だが、この場合は恋人のアヌにまで危害が及ぶ酷い結末が待っていた。それでは間違った道、つまりその男を問答無用で射殺してしまう選択肢はどうか。この選択肢を選んだ場合、シヴァーの息子がまだ子供なのに殺し屋となり、さらに血が流れることになる。しかもアーディティヤはこの子供に復讐されてしまう。

 多くの観客は、中間の道にこそハッピーエンディングがあると考えるだろう。3つめに見せられる未来は、逃げようとするシヴァーに威嚇射撃をして足止めし、逮捕する道だった。アーディティヤは、用済みになったシヴァーをさっさと片付けようとする上司カーンに逆らってまでもシヴァーを救い、法律に則った裁きを受けさせようとする。この選択肢では、カーンは殺されてしまうものの、アーディティヤは警官として成長し、昇進し、そして恋人のアヌにもプロポーズする。中道を説いたブッダを生んだ国らしい結末の付け方だと納得していた。

 ところが、そのハッピーエンディングは突然かき消される。そして、真のエンディングが観客に提示される。シヴァーを袋小路に追い込んだアーディティヤは、正しい道、間違った道、中間の道のそれぞれを考えていたが、あまりに長く考えすぎたためにシヴァーに反撃のチャンスを与えてしまい、撃たれてしまう。人生においては、どの道が正しいか、適切かを考える暇もなく決断しなければならない瞬間がある。そんな教訓を観客に投げ掛けながら、バッドエンディングで終幕する。

 主演ヴィジャイ・ヴァルマーは新米警官らしい初々しさをよく出せていた。ハードボイルドなストーリーの割には女優の登場が多く、メインヒロインのギーターンジャリ・ターパー、売春婦役のシュリージーター・デー、シヴァーの妻を演じたタニシュター・チャタルジー、警視役のイラーワティー・ハルシェー・マーヤーデーヴ、そしてアーディティヤの部下となった新米警官シュルティ・バープナーなど、それぞれ印象を残していた。

 だが、シヴァーを演じたナワーズッディーン・スィッディーキーの存在感の前には、上記の俳優たちの影はどうしても薄くなってしまう。痩せ型で見たところ殺し屋には見えないが、その実、斧での殺人を好む猟奇的な殺人鬼であり、物語の中心として大いに暴れ回っていた。彼のためにあるような映画であった。ベテラン警官カーンを演じたニーラジ・カビーの渋い演技も際立っていた。

 「Monsoon Shootout」は、極限状態において複数の選択肢から道を選ぶことになった新米警官の葛藤と、それぞれの選択肢を選んだ場合の結末を順に描いた、映画らしい作りの映画であった。その選択肢の起点となる役を演じるナワーズッディーン・スィッディーキーの迫真の演技が最大の見所の作品である。