Tera Intezaar

1.5
Tera Intezaar
「Tera Intezaar」

 2017年12月1日公開の「Tera Intezaar(あなたを待って)」は、元AV女優サニー・リオーネ主演のエロティックなサスペンス映画である。サニーの特殊な人気だけにあやかった作りであり、B級映画臭がプンプンした。

 監督は新人のラージーヴ・ワーリヤー。サニー・リオーネ以外に目立つキャストといえば、相手役のアルバーズ・カーンくらいである。他にはアーリヤ・バッバル、サリール・アンコーラー、スダー・チャンドラン、ガウハル・カーンなどが出演している。

 画廊経営のロウナク(サニー・リオーネ)は、趣味で画家をする裕福なヴィール(アルバーズ・カーン)と出会い、恋に落ちる。ロウナクの友人で画商のヴィクラム(アーリヤ・バッバル)は、大富豪の顧客から1週間以内に恋人のために絵を用意して欲しいと依頼を受ける。100万ドルという多額の報酬に目の色を変えたヴィクラムと3人の仲間はロウナクに相談した。ロウナクは彼らにヴィールを紹介する。ヴィクラムたちはヴィールの絵を気に入るが、ヴィールは簡単には売ろうとしなかった。

 その後、記憶が途切れ、ロウナクはヴィールの家で目が覚める。ロウナクは、ヴィールの家の壁に飾られた絵の中にヴィクラムたち四人が入っているのを発見し驚愕する。その一方でヴィールは行方不明だった。ロウナクは黒魔術師(スダー・チャンドラン)に相談する。黒魔術師はロウナクを市立病院に導く。そこの死体置き場でロウナクはヴィールの遺体を見つけ崩れ落ちる。だが、実はその遺体はロウナクの双子の弟プリンス(アルバーズ・カーン)のものだった。ヴィールは同じ病院の特別室で昏睡状態にあった。ロウナクが駆け寄るとヴィールは目を覚ます。

 目を覚ましたヴィールが語ったところによると、ヴィクラムたちはヴィールの絵を力尽くで奪い取ろうとしたため、殴り合いが発生した。ヴィールは頭を打たれて気を失ったため、四人は彼を市立病院の前に置き去りにして逃げ出した。

 また、その前にプリンスがロウナクに語ったところによると、ヴィクラムたち四人はヴィールを市立病院に置いた後にヴィールの家に向かったが、途中でプリンスの自動車と衝突し、彼を殺してしまった。亡霊となったプリンスは四人に復讐し、彼らをヴィールの絵の中に閉じ込めた。絵の中で四人は次々に命を落としていく。プリンスはロウナクに、自分の死はしばらくヴィールに伏せておくように頼み、姿を消す。

 期待通りのB級映画だった。人が絵の中に閉じ込められるなど、冒頭から突拍子もない展開が続き、しかもCGがチープで、このB級映画感に逆にワクワクしてくる。ところが、途中からストーリーに意外に理屈が通ってくる。最後はアルバーズ・カーンが一人二役を演じていたという意外な種明かしがストーリーを盛り上げ、まさかのハッピーエンドで幕を閉じる。

 登場人物の多くは絵に関わっている。ヴィールは素人画家であるし、ロウナクは画廊オーナーである。そして悪役の四人は画商だ。絵や美術を主題にしたヒンディー語映画は珍しいかもしれない。ストーリー上、ヴィールの描く絵は誰もが絶賛するほど素晴らしいということになっているが、どう見ても写真をPhotoshopで絵画風に加工しただけのもので、そこには何の芸術性もない。こういうあからさまな突っ込み所を提供しておいてくれているところもニクい。

 演技面でも安定の大根役者振りを発揮してくれる俳優たちが揃っている。監督は元からサニー・リオーネに演技をさせようとは思っておらず、潔いまでにセクシーショットに集中している。もちろん、局部の露出を伴うような極端なヌードシーンや濡れ場シーンはないが、十分に想像力をかき立てている。アルバーズ・カーンもほとんど無言で立ち尽くすのみだし、悪役の四人は白々しい演技を繰り返すのみだ。

 サニー・リオーネが出演する映画は音楽がヒットすることがある。彼女の代表作は何と言っても「Ragini MMS 2」(2014年)の「Baby Dall」だ。「Tera Intezaar」では、その二匹目のドジョウを狙い澄ました「Barbie Girl」というアイテムソングがある。ただ、踊っているのはサニーではなくアイテムガール出演のガウハル・カーンである。

 映画の舞台はインドだが、撮影の多くはモーリシャスで行われたようだ。度々、美しい海が背景として登場する。自動車のナンバープレートが「GJ」になっていたので、グジャラート州を想定しているのかもしれないが、実際にグジャラート州で撮影されたのか不明であるし、グジャラート州が舞台の映画という設定なのかも分からなかった。

 「Tera Intezaar」は、主演のサニー・リオーネやアルバーズ・カーンを含め、関わった人全員にとって黒歴史となるB級映画だ。だが、そのB級映画振りを楽しめる人なら、もしくはサニー・リオーネのファンなら、全く観る価値のない映画でもないかもしれない。


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