Judwaa 2

3.5
Judwaa 2
「Judwaa 2」

 ヒンディー語映画界で「コメディーの帝王」と呼ばれる監督の一人、デーヴィッド・ダワンは、コンスタントに良質のコメディー映画を送り出し続けている。2012年に息子のヴァルン・ダワンが俳優デビューを果たしてからは、彼が主演のコメディー映画を作るようになった。

 2017年9月29日公開の「Judwaa 2」は、デーヴィッド・ダワン監督自身の過去のヒット作「Judwaa」(1997年)のリメイクである。「~2」とあるが、続編ではない。題名は「双子」という意味で、原作ではサルマーン・カーンが一人二役で双子を演じ、今回のリメイク作ではヴァルン・ダワンがダブルロールを演じた。ヒロインは、ジャクリーン・フェルナンデスとタープスィー・パンヌー。他に、アヌパム・ケール、サチン・ケーデーカル、ラージパール・ヤーダヴ、マノージ・パーワー、ザーキル・フサイン、ヴィヴァーン・バテーナー、マノージ・ジョーシー、ジョニー・リーヴァルなどが出演している。ヒンディー語映画界を代表するコメディアン俳優が揃っている。また、原作の主演サルマーン・カーンが最後に特別出演している。プロデューサーはサージド・ナーディヤードワーラーである。

 実業家ラージーヴ・マロートラー(サチン・ケーデーカル)には双子が生まれた。元々双生児で、手術により切り離されたが、神経が遠隔でつながっており、一方の行動や感情がもう一方に伝わる、奇跡的なペアだった。ところが生まれた途端に片割れがマフィアのチャールズ(ザーキル・フサイン)に誘拐されてしまう。誘拐された子はラージャー(ヴァルン・ダワン)と名付けられてムンバイーの下町で育った一方、ラージーヴの元に残った子はプレーム(ヴァルン・ダワン)と名付けられてロンドンで育った。双子の能力には偏りがあり、ラージャーは力が強く、プレームは頭が良かった。

 ラージャーは、チャールズの息子アレックス(ヴィヴァーン・バテーナー)と諍いを起こし、子供の頃からの親友ナンドゥー(ラージパール・ヤーダヴ)と共にロンドンに逃亡する。飛行機の中で美女アリシュカー(ジャクリーン・フェルナンデス)と出会い、恋に落ちる。一方、プレームは大学でサマーラー(タープスィー・パンヌー)と出会い、恋をする。だが、彼は、父親の親友バルラージ(アヌパム・ケール)の娘とお見合いをさせられることになった。その相手はなんとアリシュカーであった。アリシュカーはプレームをラージャーと勘違いし、この縁談を歓迎する。

 ロンドンにプレームとラージャーの二人が揃ったことで、二人の動きはシンクロするようになる。ラージャーが人を殴るとプレームも人を殴り、ラージャーがキスをするとプレームもキスをするなどが起こる上に、プレームとラージャーの取り違えもあったりして、周囲を大いに混乱させる。まずはプレームとラージャーが顔を合わせるが、単なる瓜二つだと考えた。アリシュカーとサマーラーも、そっくりのプレームとラージャーが存在することを知り驚く。ラージーヴは、ラージャーこそプレームと生き別れた双子の片割れだと気付き、彼を息子として受け容れる。

 だが、ロンドンにはチャールズとアレックスも来ていた。チャールズはラージーヴに、アレックスはラージャーに復讐しようとするが、プレームとラージャーは力を合わせて危機を乗り越える。

 基本的には原作「Judwaa」のストーリーラインをなぞっているが、細部は異なり、現代的なコメディー映画となっていた。「Judwaa 2」のコメディー要素は大きく分けて2つある。ひとつはシチュエーションの笑い、もうひとつは台詞の笑いである。生き別れた双子が偶然同じ街に揃い、周囲を混乱に陥れるのはシチュエーションの笑いだが、これは原作に則ったものだった。もうひとつの台詞の笑いは、ダジャレや言い回しによって観客を笑わせるもので、こちらは現代向けにアレンジがなされていた。よって、「Judwaa 2」のオリジナリティーを評価するならば、後者の方を中心に論じる必要がある。

 とは言っても、当世を代表するコメディアン俳優が脇を固めており、彼らにかなり自由に演技をさせていたような印象だった。一人二役で主演を張るヴァルンも見せ場は十分で、大いに笑いを取っていたし、助演のラージパール・ヤーダヴも面白おかしかった。過去のヒット作のパロディーが何度も出て来るので、ヒンディー語映画に親しんでいる人にはその種の笑いも楽しめる。

 コメディー映画で主演が頑張っていても、ヒロインが雰囲気に乗れないと笑いのブレーキになってしまうのだが、今回の2人のヒロイン、ジャクリーン・フェルナンデスとタープスィー・パンヌーは、どちらもコメディー映画と相性が良く、笑いをさらに前に推し進めることができていた。

 最後には、原作の主演サルマーン・カーンが双子役で登場し、ヴァルン演じる双子と相見える。これはサプライズだ。しかし、このサプライズで曖昧になってしまっていたが、ラージーヴを殺そうとしたチャールズの始末が最後に付けられておらず、尻切れトンボになってしまっていた。それともこれは続編の布告だったのであろうか。

 だが、生き別れていた双子が出会い、しかも双子であることが分かったシーンは、本来ならばこの映画でもっとも感動のシーンであるはずであり、もう少し強調して描いても良かったのではないかと思った。それら細かい部分を見ていくと、やはり詰めの甘い映画だと言わざるを得ないところがあった。

 典型的な娯楽映画であり、「Chalti Hai Kya 9 Se 12」など、ダンスシーンにも力が入ったものがあった。ただ、最近のヒンディー語映画の傾向で、数は少ない。ちなみに、「Chalti Hai Kya 9 Se 12」と「Oonchi Hai Building 2.0」の2曲は、「Judwaa」の挿入歌のリメイクである。

 「Judwaa 2」は、ヒンディー語映画界の「コメディーの帝王」の一人、デーヴィッド・ダワンが、自身の息子を主演にし、自身の過去のヒット作「Judwaa」をリメイクした作品である。興行的にはスーパーヒットとなっている。確かによくできたコメディー映画だが、その半分は原作の出来の良さをそのまま受け継いでいるからであり、もう半分は主演俳優たちや脇を固めるコメディアン俳優たちの好演があったからだと評価できる。最高傑作のコメディー映画とはいえないが、楽しく鑑賞できる作品である。