Wajah Tum Ho

2.0

 シャルマン・ジョーシーは、「Rang De Basanti」(2006年)や「3 Idiots」(2009年/邦題:きっと、うまくいく)などでの演技が印象的な俳優である。多くの人が、人の良さそうな笑顔とコミカルな演技を彼の特徴として挙げるだろう。だが、俳優は得てして特定のイメージに押し込められるのを嫌うものである。ヴィシャール・パンディヤー監督の「Hate Story 3」(2015年)では主演兼悪役を演じるなど、従来のイメージに囚われない役柄を演じるようになっている。

 2016年12月16日公開の「Wajah Tum Ho(理由は君だ)」は、ヴィシャール・パンディヤー監督、シャルマン・ジョーシー主演のエロティック・クライム映画である。今回、シャルマンは警察役をシリアスに演じており、やはりイメチェンを意識しているのを感じさせる。他には、グルミート・チャウダリー、サナー・カーン、ラジニーシュ・ドゥッガル、ヒマーンシュ・A・マロートラー、プラールタナー・ベヘレーなどが出演している。また、シャーリン・チョープラーが「Dil Mein Chhupa Loonga」、ザリーン・カーンが「Maahi Ve」にてアイテムガール出演している。

 舞台はムンバイー。ラメーシュ・サルナーイク警部補がガソリンを飲まされて殺される様子が、衛星テレビ局GTNのチャンネルで生放送で放映された。カビール・デーシュムク警部(シャルマン・ジョーシー)は、GTNのラーフル・オーベローイ社長(ラジニーシュ・ドゥッガル)を容疑者とし、尋問を行う。ラーフルの裁判が始まったが、ラーフルの顧問弁護士スィヤー(サナー・カーン)と、検察官ランヴィール(グルミート・チャウダリー)は恋仲にあった。

 カビールは、サルナーイク警部補と最後に話したのが、ゴアのカジノ王カラン・パレーク(ヒマーンシュ・A・マロートラー)だったため、カランを逮捕しようと動くが逃げられる。しかも、今度はカランが水攻めによって殺される様子が生放送される。

 カビールは捜査の過程で、ラーフル、カラン、サルナーイク警部補がかつて、ラジニー(プラールタナー・ベヘレー)という女性のレイプに関わったことを突き止める。しかも、ラジニーの弁護士を務めたのがランヴィールであった。公判では、証人となるはずだったシャルマーという通りすがりの目撃者が火事で死んだため、彼らを裁くことができなかった。カビールはラジニーを容疑者と特定する。

 だが、今度はラーフルが行方不明となる。ラーフルの目の前に現れたのはスィヤーであった。実はスィヤーはシャルマーの娘だった。シャルマーは火事で事故死したのではなく、ラーフル、カラン、サルナーイクによって焼き殺されたのだった。スィヤーは復讐のためにラーフルの会社に入り、機会をうかがっていたのだった。スィヤーは糖尿病のラーフルに砂糖水を注射して殺す。

 だが、シャルマー殺害に関わった4人目の人物がいた。それはランヴィールであった。ラジニーの裁判においてランヴィールはラーフルらに買収されており、シャルマーの殺害を持ちかけたのもランヴィールであった。それを知ったスィヤーはランヴィールを呼び出し、彼を殺そうとする。そこへカビールが駆けつけるが、スィヤーはランビールを殺す。

 全ての内情を知ったカビールはスィヤーの犯した罪を全てなかったことにする。

 「Hate Story 3」のときから薄々分かっていたが、ヴィシャール・パンディヤー監督は緻密な映画を作れる人ではない。力技でどんでん返しを繰り返す強引な展開ばかりで、まともな知性のある観客ならば途中で観るのを投げ出してしまうようなスリラー映画を作る。だが、同時にエロティックな味付けをしており、そのおかげでまあまあ観客が入るようだ。「Hate Story 3」は、その低い完成度とは裏腹にヒットとなったようだが、この「Wajah Tum Ho」も経費を回収するぐらいの興行成績は収めたようである。出来は悪いのにヒットしてしまう映画を作る映画監督は評価に困る。

 「Wajah Tum Ho」は、パンディヤー監督の前作「Hate Story 3」と全く同じなのだが、どんでん返しをいくつも用意して観客を驚かせようとするあまり、取って付けたようなストーリーになってしまっている。衛星テレビ局をハッキングして、恨みのある人物の公開処刑を生放送で行った犯人を、シャルマン・ジョーシー演じる主人公の警官カビールが追うのだが、容疑者として次から次へと新しい人物が浮上する。きちんと伏線を張っておいて、後から考えても論理的に成立するようなどんでん返しならいいのだが、パンディヤー監督はどうもそういう細かい部分は考えていないようで、思いつきで撮っているのではないかと思えるほど稚拙な展開が続く。

 コミカルなイメージのあるシャルマン・ジョーシーがシリアスな演技に挑戦していたのは映画のひとつの見所ではある。シャルマンが警官役を演じたのはこれが初めてのようだ。だが、どうしてもお人好しなイメージがこびりついており、怒鳴ったり戦ったりするシーンが似合わない。この点も観ていて苦しかった。

 映画のヒロインといえるサナー・カーンは、リアリティー番組「Bigg Boss」で人気となった女優であり、「Wajah Tum Ho」で一番忙しく立ち回っていたのも彼女が演じるスィヤーであった。最初は顧問弁護士として控えめな登場をするのだが、法廷で検察官ランヴィールと論戦を交わした後に、彼とラブシーンを演じてみたり、終盤で悪役に転向してみたり、ファイトシーンで自らランヴィールと戦ったりと、一人でかなりのことをこなしていた。駄作とのそしりも免れないこの映画において、唯一光っていたのはサナー・カーンであった。

 とはいっても、パンディヤー監督は出演料の高くなさそうなB級以下の俳優を使って映画を作るのが好きのようで、この映画に出演していた俳優は、サナー・カーンも含め、まだ経験が浅いか、なかなか売れない俳優ばかりである。ラジニーシュ・ドゥッガルは出演作は多いのだが、いまいち伸びなかった俳優だし、グルミート・チャウダリーにしてもまだ無名の俳優である。

 音楽もリサイクルで対応している。「Blackmail」(1973年)の「Pal Pal Dil Ke Paas」、「Darling Darling」(1977年)の「Aise Na Mujhe Tum Dekho」、「Kaante」(2002年)の「Maahi Ve」などのリミックスが使われていた。

 「Wajah Tum Ho」は、作りは雑だがヒット率は高い迷監督ヴィシャール・パンディヤーが、いつも通りの手法で作ったエロティック・クライム映画である。コミカルなイメージのあるシャルマン・ジョーシーが初めてシリアスな警官役を演じたり、リアリティー番組で人気を博したサナー・カーンが八面六臂の活躍をしていたりと、特筆すべき点はあるのだが、いかんせん、ストーリーが弱く、観るに値しない映画で終わってしまっている。