The Legend of Michael Mishra

3.5

 マニーシュ・ジャー監督は「Matrubhoomi」(2003年)や「Anwar」(2007年)といったシリアスな映画で知られるのだが、2016年8月5日公開の「The Legend of Michael Mishra」は、彼のフィルモグラフィーの中では異色の、奇想天外なロマンス映画である。

 「The Legend of Michael Mishra」の主演はアルシャド・ワールスィーとアディティ・ラーオ・ハイダリー。ボーマン・イーラーニーとその息子カーヨーズ・イーラーニーが共演している。

 ビハール州の山間部を通過中だったバスがパンクして止まった。乗客は近くにあった「マイケル・ミシュラーのダーバー(食堂)」で休憩する。彼らを迎えたのがFP(ボーマン・イーラーニー)であった。FPは、ダーバーの名前の元になったマイケル・ミシュラーについて語り出す。

 パトナーで生まれ育ったマイケル・ミシュラー(アルシャド・ワールスィー)は、仕立屋から誘拐マフィアの親玉にのし上がった人物だった。一方で、マイケルは子供の頃に出会った女性を探し続けていた。あるとき、マイケルはタレント発掘オーディションでワルシャー・シュクラー(アディティ・ラーオ・ハイダリー)を見つけ、彼女こそ幼年時代からの一目惚れの相手だと確信する。マイケルはワルシャーの家の近くに引っ越して、彼女にアプローチをする。遂にマイケルは、ワルシャーと恋文を交わすようになった。だが、その手紙には、「更正して欲しい」と書かれていた。マイケルはワルシャーを手に入れるため、警察に自首する。

 マイケルの第一の子分、ハーフパンツ(カーヨーズ・イーラーニー)は、マイケルが刑務所に入っている間、ワルシャーを密かに守り続けた。ワルシャーは家を抜け出してムンバイーへ行き、そこで女優になった。

 2年後・・・。マイケルは刑務所を脱出し、パトナーに戻ってくる。ワルシャーの家族は去っており、なかなか彼女は見つからなかったが、タレント発掘オーディションの審査員としてワルシャーがパトナーに来ることを知る。そこへ潜入してワルシャーの前でトウガラシを200個食べるパフォーマンスをするが、ワルシャーは彼のことを思い出さなかった。マイケルは病院に搬送される。

 マイケルの秘めた恋心を初めて知ったハーフパンツは、ワルシャーが書いた手紙を持って彼女のところへ行く。だが、ワルシャーが恋文を送っていた相手は、実はマイケル・ミシュラーではなく、その上の階に住んでいたミュージシャン、ミティレーシュ・マートゥルであった。ワルシャーの人生の中にマイケル・ミシュラーは最初から存在しなかったのである。それでも、ワルシャーは、子供の頃に出会った少年のことは覚えており、彼からもらったペンダントも大事に持っていた。マイケルに会いに行ったワルシャーは、彼を抱きしめる。

 マイケル・ミシュラーのダーバーは、正にマイケルとワルシャーが抱き合った場所に建てられていた。FPは、かつてのハーフパンツであった。今はフルパンツになっていたのである。

 まずはヒロイン、アディティ・ラーオ・ハイダリーの美しさが際立っていた映画だった。アディティは王族の血を引いている上に、美女が多いことで有名なサーラスワト・ブラーフマンの血まで入っている。そのためか、浮世離れした高貴な美しさを持っているのだが、ヒンディー語映画界ではなぜかあまりいい役をもらえていない。「The Legend of Michael Mishra」では単独ヒロインであり、しかも少し間の抜けたところのある美女を演じていた。「Luv Letter」でのダンスも良かったし、田舎っぽいダンスを踊るシーンも2度あり、かわいらしい。いかにもビハール州出身の田舎者といったしゃべり方もしている。

 ストーリーは基本的には不条理なコメディータッチで進んで行く。マイケル・ミシュラーが辿った数奇な人生が昔話口調で語られる。例えば、元々仕立屋をしていた彼がマフィアの親玉になったきっかけも完全にギャグだった。彼の店にやって来たマフィアの親玉の採寸をしているときに首を絞めて殺してしまい、マフィアの子分たちから親玉に担ぎ上げられたのである。このような調子でビハール州の誘拐ビジネスを取り仕切るようになったマイケルが恋に落ち、更正するためにどんな行動を取ってきたのかが語られる。

 ダーバーを物語の入口にして、ダーバーに付けられた名前の由来が徐々に明らかになっていくストーリーテーリング法は斬新であった。また、あくまで元ハーフパンツ、現フルパンツが、ダーバーの収益を上げるために、バスをパンクさせて乗客を呼び込み、語っている物語なので、それが本当なのかどうかも怪しい。だが、確かにインドには、本当かどうか分からないような物語を糧にした、無理矢理作られた観光名所みたいなものがあり、そういうインド独特の現象を風刺した作品だと見れば、違った面白さを感じるようになる。

 まずはアディティ・ラーオ・ハイダリーを絶賛してしまったが、中心となっていたのはマイケル・ミシュラーを演じたアルシャド・ワールスィーである。「Munna Bhai M.B.B.S.」(2003年)や「Lage Raho Munna Bhai」(2006年)などでマフィアの子分役が板に付いているが、今回はマフィアの親玉に出世していた。しかも、恋した女の子を手に入れるために更正するという筋書きは、「Munna Bhai」シリーズと似ている。アルシャドがいつも演じているような子分役は、今回はボーマン・イーラーニーの息子カーヨーズ・イーラーニーが熱心に演じていた。

 「The Legend of Michael Mishra」は、普段はシリアスな映画を作っているマニーシュ・ジャー監督が作ったラブコメ映画である。アルシャド・ワールスィーとアディティ・ラーオ・ハイダリーという異色の組み合わせが異色の演技をしており、なかなか面白い映画だったのだが、興行的には失敗したようである。決して何の価値もない駄作ではない。