Masti-Zaade

2.5
Masti-Zaade

 ヒンディー語映画には、数は少ないものの、下ネタ満載のお下劣コメディー映画の系譜がある。「Masti」(2004年)や「Kyaa Kool Hai Hum」(2005年)に始まるシリーズが代表的だ。さすがに露骨な局部の露出などはないが、ダブルミーニングや錯覚などを有効活用して婉曲的にエロティックさを醸し出しており、大ヒット作に化けることもある。

 2016年1月29日公開の「Masti-Zaade」もお下劣コメディー映画の一種である。監督はミラープ・ミラン・ザーヴェーリー。「Masti」などの脚本家であり、「Jaane Kahan Se Aayi Hai」(2010年)で監督デビューした。「Masti-Zaade」が監督2作目になる。どうやら「Masti」シリーズの続編という位置づけではないようである。

 主演はトゥシャール・カプール、ヴィール・ダース、そして元AV女優のサニー・リオーネ。はっきり言ってサニーのセクシーな肢体に極度に依存した作品であり、彼女に比肩し得る女優が見つからなかったと見えて、彼女がダブルロールを演じている。

 その他のキャストは、スレーシュ・メーナン、シャード・ランダーワー、アスラーニー、スシュミター・ムカルジーなど。また、リテーシュ・デーシュムク、ブルーナ・アブドゥッラー、そしてミラープ・ミラン・ザーヴェーリー監督自身が特別出演している。

 ちなみに題名の意味は「悦楽の子供たち」のような意味である。

 サニー・ケーレー(トゥシャール・カプール)とアーディティヤ・チョーティヤー(ヴィール・ダース)は大の親友だった。二人とも性的にフラストレーションを抱えていたが、セックスライフを楽しんでいる先輩ディープ(リテーシュ・デーシュムク)からナンパの奥義を教わり、彼らはモテモテになる。いつしか彼らは、女性の衣服を透視する「チックスレイ」という特殊能力を手にするに至った。

 ところが、そのチックスレイが効かない女性が現れた。ライラー・レーレー(サニー・リオーネ)とリリー・レーレー(サニー・リオーネ)という双子の姉妹である。サニーはライラーに、アーディティヤはリリーに恋をする。ライラーとリリーはセックス中毒者のリハビリをしており、サニーとアーディティヤはそれに参加して接近しようとする。ところが、リリーには許嫁がいた。デーシュプレーミー・スィン(シャード・ランダーワー)という名前で、幼少時の事故により下半身不随になっており、車椅子生活をしていた。

 リリーとデーシュプレーミーの結婚式がタイのパタヤーで行われることになり、サニーとアーディティヤも参列する。そこで二人は、ライラーとリリーの父親ウラシット(アスラーニー)や兄のダース(スレーシュ・メーナン)に出会う。ダースは男色で、サニーに恋してしまい、ライラーとサニーを取り合うことになる。

 アーディティヤは何とかリリーとデーシュプレーミーの結婚を破談にさせようと考えていた。そんなとき、夜の街で二人はデーシュプレーミーが立って女性たちをいちゃついているのを目撃する。デーシュプレーミーは身体障害者だと嘘を付いていると考えた二人は、リリーの目の前でデーシュプレーミーに暴行を加える。ところがデーシュプレーミーは立てなかった。実は二人が街で見たのは双子の兄弟デーシュドローヒーであった。

 二人は活路を見出すために、ディープのところへ行く。ところがディープは女性たちにオーガズムを教える宗教指導者に転向していた。彼の道場でウラシットの妻スィーマー(スシュミター・ムカルジー)を見つける。二人はスィーマーと共にリリーとデーシュプレーミーの結婚式に殴り込み、結婚を止めさせる。そしてサニーはライラーを連れて、アーディティヤはリリーを連れて逃げる。

 基本的には、インド映画レベルを超越したサニー・リオーネのサービス満点のセクシーボディーと、連発されるダブルミーニングを駆使した下ネタの数々を楽しむ映画である。ストーリーにロジックを求めてはならない。下ネタのレベルは高く、しかもねちっこくて、こういうのが好きな観客は必ずいると断言できる。

 「Masti-Zaade」は何と言ってもサニー・リオーネの映画だ。「Ragini MMS 2」(2014年)の「Baby Doll」が大ヒットし、ヒンディー語映画界に足がかりを作ったサニーだったが、どうしても元AV女優というイメージが抜けず、セクシー要員としてしか起用されて来なかった。観客が期待するのもそれだから仕方がない。「Masti-Zaade」でもそれは変わらず、サニーはとにかくセクシーな演技に終始していた。しかしながら、そんなステレオタイプにふてくされることなく、逆に楽しんで演技をしている様子がサニーからは感じられ、好感が持てるほどだった。さらに、今回は一人二役という、一定の演技力を求められる役を与えられており、女優としての成長が見られた。

 コメディーの大部分は下ネタである。まるで男子小学生のように執拗におちんちんネタが繰り返されており、しょうもないのだが、そのしょうもなさもここまで徹底的にやると、感心するレベルに達する。この映画の年齢認証は成人向けになっており、18歳未満は観ることができないが、この種の下ネタ満載映画が好きな成人にはたまらない。

 ヴィジュアル的にも下ネタを楽しむことはできるが、真骨頂は台詞回しだ。ダブルミーニングやスラングなどを多用して仄めかすことで下ネタを表現しており、その全てを理解するためには、俗語を含む広範な語彙力と瞬発力を伴った文学的な才能を要する。決して脳みそを家に置いて楽しめばいいだけの映画ではない。

 ただし、ストーリーを追うために余計な脳みそを使わない方がいい。ストーリーに論理的な一貫性はほとんどない。サニーとアーディティヤが「チックスレイ」をいつどうやって身に付けたのか、サニーとライラーがなかなか結ばれないのはなぜか、デーシュプレーミーの双子の兄弟デーシュドローヒーが結婚式に現れないのはなぜか、スィーマーがなぜリリーとデーシュドローヒーの結婚を止める必要があるのかなどなど、よく分からない部分が多すぎる。

 「Masti-Zaade」は、成人向けの下ネタ満載コメディー映画であり、観る人を選ぶ作品だ。しかし、下ネタ好きなインド映画ファンには絶対にオススメできる映画であるし、スラングを含む語学力を試すにも絶好の教材である。使い方に注意をして鑑賞して欲しい。