Tamanchey

3.0
Tamanchey

 2014年10月10日公開の「Tamanchey」は、米国映画「俺たちに明日はない」(1967年)を彷彿とさせる犯罪映画である。わざとなのか、低予算映画だからなのか、映像が古めかしいのだが、それがかえって味になっていた。

 監督は新人のナヴニート・ベヘル。主演は「Hate Story」(2012年)のニキル・ドゥイヴェーディーと「Fukrey」(2013年)のリチャー・チャッダー。他に、ダマンディープ・スィッドゥー、マヘーシュ・クマール、ジャイディープ・デーサーイーなどが出演している。

 麻薬の密売人バーブー(リチャー・チャッダー)と誘拐を生業とするムンナー(ニキル・ドゥイヴェーディー)は、別個に警察に逮捕され、同じ護送車に居合わせたときに事故に遭い、一緒に逃げることになった。二人は列車に乗り込み、そこで身体の関係を持つ。だが、翌朝ムンナーが目を覚ましてみるとバーブーはいなかった。列車はデリーに着いていた。

 バーブーは、ボスであり愛人でもあるラーナー(ダマンディープ・スィッドゥー)のところに戻っていた。ムンナーはバーブーに恋してしまい、彼女を探してラーナーのところまで辿り着く。そしてラーナーの信頼を勝ち取り、彼の子分となって働き出す。バーブーは彼を追い返そうとするが、彼女もムンナーに惹かれていた。

 ムンナーは、ラーナーがラーワト警部(ジャイディープ・デーサーイー)と大きな取引をする情報を警察に密告し、ラーナーを消そうとするが、ラーナーは生き残る。ラーナーの忠実な部下ミカ(マヘーシュ・クマール)に裏切りがばれるが、ムンナーは彼を殺す。そしてミカを密告者に仕立てあげ、ラーナーの疑いを逸らす。

 ラーナーはラーワト警部に賠償するために大金が必要になる。ムンナーは銀行強盗を提案し、バーブーやラーナーの部下たちと共にデリーの銀行に押し入って大金を手にする。ラーナーは気を良くして彼らに銀行強盗を続けさせる。だが、やがて警察に包囲されてしまう。何とかムンナーとバーブーは逃げ出す。また、ラーナーもデリーから姿をくらます。

 ムンナーとバーブーは、古い邸宅に拠点を変えたラーナーと合流するが、ムンナーがバーブーの写真を持っていたことから二人の関係がばれてしまう。バーブーはムンナーと共に逃げ出すが、バーブーはラーナーに捕まり、ムンナーは警察に捕まってしまう。だが、ムンナーは警察を引き連れてバーブーを救出しに現れ、ラーナーを殺す。ムンナーとバーブーは警察に投稿しようとするが、ラーワト警部は彼らを殺そうとする。ムンナーとバーブーは、結婚していたかもしれない将来を考えながら殺されるのを待つ。

 ものすごく低予算で作られた映画であり、細部を見ていくと粗も目立つが、それを補って余りある魅力のある映画だった。勝因はひとつ、リチャー・チャッダーの演じたバーブーのキャラクターと彼女の演技である。孤児院で育ち、デリーで麻薬密輸を牛耳るラーナーの愛人兼部下として暗躍する女丈夫で、拳銃も易々と使いこなす。口を開けば罵詈雑言のオンパレードで、ヒンディー語映画の典型的なヒロインとは正反対だ。しかも、ムンナーを手込めにしてしまう。かなりぶっ飛んだキャラクターだが、リチャーの演技力が彼女の存在を説得力のあるものにしていた。

 バーブーと禁断の恋愛を繰り広げるムンナー役に、あまり際立った容姿をしていないニキル・ドゥイヴェーディーが適任だったかどうかは疑問である。だが、ムンナーも十分に面白いキャラクターだった。一見するとチンピラみたいな風貌なのだが、意外に頭が切れ、ラーナーを手玉に取って、彼を破滅の道に誘い込む。そしてラーナーの鼻の下でバーブーとの恋愛を繰り広げる度胸もある。

 やがて二人は、情事に耽るために銀行強盗をし出す。しかしながら彼らにハッピーエンドは用意されておらず、最後には「俺たちに明日はない」のボニーとクライドのような結末が待っている。

 題名の「Tamanchey」には主に2つの意味がある。ひとつは「拳銃」という意味、もうひとつは「平手打ち」という意味である。そして映画の文脈からはどちらの意味にも取ることができた。ムンナーもバーブーも拳銃を撃つことに抵抗のない犯罪者であり、彼らが拳銃を武器に戦うシーンは何度も出て来た。また、序盤にバーブーがムンナーに平手打ちを喰らわすシーンがある。その平手打ちが物語の重要な伏線になっていたわけではなかったが、二人の関係を前進させる効果があった。

 「Tamanchey」は、「俺たちに明日はない」型の犯罪映画である。低予算映画の作りなのだが、それがわざとそうしているかのような効果もあって、逆に映画の魅力になっていた。リチャー・チャッダーの演技も素晴らしい。意外に楽しめる作品である。