One by Two

3.0
One by Two
「One by Two」

 インド映画に限らず、古今東西のロマンス映画は、男女が出会って物語が始まる。かつて、インドのロマンス映画では、一目惚れから物語が始まり、何らかの障害に直面しながらも、それを乗り越え、いかに結婚まで辿り着くかという筋書きになることが多かったが、最近のロマンス映画はかなり多様化して来て、かなりユニークな恋愛映画も登場している。2014年1月31日公開のヒンディー語映画「One by Two」は、その中でもかなり特異なロマンス映画である。なぜなら、主人公である男女が出会ったところで映画が終わるからである。

 監督はデーヴィカー・バガト。「Jab Tak Hai Jaan」(2012年)などの脚本を書いており、監督は本作が初となる。主演はアバイ・デーオールとプリーティ・デーサーイー。プリーティはインド系英国人で、「Shor in the City」(2011年)でデビューした。他には、ラティ・アグニホートリー、ジャヤント・クリパーラーニー、リレット・ドゥベー、アニーシュ・トリヴェーディー、ダルシャン・ジャリーワーラー、ギーティカー・ティワーリー、ヤシカー・ディッローン、ユディシュティル・ウルスなどが出演している。

 舞台はムンバイー。企業に勤めるアミト・シャルマー(アバイ・デーオール)は、恋人のラーディカー(ギーティカー・ティワーリー)に振られ、沈んでいた。アミトは上司から期待されていたが、彼は仕事に身が入らなかった。両親は彼を結婚させようと、シシカー(ヤシカー・ディッローン)とお見合いさせるが、アミトは全く乗り気ではなかった。

 サマーラー・パテール(プリーティ・デーサーイー)はダンサーとして身を立てたいと考えており、ダンススクールに通っていた。コーチのジョナサン(ユディシュティル・ウルス)と恋仲にあったが、彼の嫉妬に耐えきれず別れる。ダンススクールも辞めることになった。また、サマーラーの母親カルプナー(リレット・ドゥベー)はアルコール中毒であった。離婚した父親ラメーシュ(アニーシュ・トリヴェーディー)はロンドンに住んでおり、サマーラーは頻繁に彼にメールを送っていた。

 サマーラーはダンス・コンペティション番組のオーディションに応募する。一方、アミトは、ラーディカーの新しい恋人ランジャンがダンス・コンペティション番組のプロデューサーであることを知り、復讐を思い立つ。彼は番組のサーバーにハッキングし、視聴者投票で1位となった候補者を片っ端から最下位にして行った。サマーラーは2回戦まで勝ち上がり、1位のパフォーマンスをするが、アミトのハッキングによって最下位となり、コンペティションから脱落してしまう。

 それでも、サマーラーは、コンペティションでペアとなったダンサーと共に、拾い物の音楽にダンスを付けてネットにアップロードする。それがネットで話題となる。だが、実はその音楽はアミトが大学時代に作曲したものだった。彼はその曲が入ったCDを紛失していた。それを見てラーディカーがアミトに連絡をして来た。アミトはダンス・コンペティション番組の決勝戦の音楽を担当することになる。それに合わせて踊ったのが、怪我をした候補の代理として再びコンペティションに復帰したサマーラーであった。だが、サマーラーは結果を待たずに会場を去ってしまったため、優勝しなかった。

 決勝戦後、アミトとサマーラーは初めて顔を合わし、会話を交わす。新たな恋の予感がした。

 題名となっている「One by Two」とは、「2人でひとつをシェアする」という意味で、特にレストランなどで、ひとつの料理を2人用に分けて出してもらうことを指す。映画の中では、直接的には、アバイが中華料理レストランでスープを頼むとき、量が多いため、いつも「One by Two」にしていることを示していた。アバイは運命の人を求めており、彼は漠然と、好みのスープを分け合える女性との出会いを夢見ていた。彼がお見合いをしたシシカーは、そのセンチメントを理解しない女性であった。

 ただ、映像的な工夫として、画面が左右2つに分割され、アミトとサマーラーがあたかも同じタイミングで同じようなことをしている様子が度々映し出されていた。ひとつのスクリーンを2人で分け合うことで、この2人が運命の人同士であることが暗示されていた。

 だが、驚くべきことに、アミトとサマーラーは映画の最後まで出会わない。時々ニアミスし、顔が見えない状態で会話も交わすのだが、面と向かって自己紹介し合うのが、映画終了数分前である。まだ見ぬ運命の人は、もしかしたらすぐそばであなたと同じようなことをしているかもしれない。そんなロマンティックな妄想が感じられる展開であった。

 主人公の二人の生き方は正反対だと言っていいかもしれない。アミトは、大学時代にバンドをしており、ミュージシャンになる夢を持っていたと思われる。だが、現在は退屈なサラリーマン生活を送っている。元恋人からは「退屈な男」と言われ、振られてしまった。映画が進む中で、彼はミュージシャンになる夢を思い出し、会社を辞めて、音楽の道へ飛び込む。偶然のハプニングではあったが、サマーラーを通じて彼の音楽は世間に知られ、チャンスを得る。

 一方、サマーラーは最初からダンサーになる夢を追っていた。彼女にはロンドン在住の父親がおり、彼を頼ってロンドンに行けば、さらにチャンスが広がったかもしれなかった。彼女がそれをせず、ムンバイーに留まっていたのは、アルコール中毒の母親のためであった。一度は、母親の元を飛び出して夢を追うことも考えるのだが、やはり母親と共に過ごすことを選択する。周囲の人々の目からしたら、サマーラーにとって母親は夢を追う上での障害となっていたが、サマーラー自身が最後に至った結論は、夢を追うよりも大事なものがあるということだった。

 こうして見てみると、アミトとサマーラーの生き方は別の方向を向いているため、果たして結末にて出会い、その後、親交を深め、恋仲になったとしても、相性がいいかは分からない。だが、デーヴィカー・バガト監督の描き方が、この二人こそが運命のカップルであるという方向に誘導しているため、そう感じてしまうのである。

 主演のアバイ・デーオールは変わった映画に出るのを好む俳優だ。今回もただのロマンス映画ではなく、彼らしいチョイスであった。ただ、彼の演技力が十分に発揮されるような難しい役柄ではなかったと感じた。相手役のプリーティ・デーサーイーは、美人系の顔立ちの女優で、運動神経も良さそうだった。

 「One by Two」は、主人公の男女が出会うまでにニアミスし続ける様子を延々と追った、ユニークなロマンス映画である。その試みは斬新だが、無意味にじらされていて、もどかしい映画に受け止められた。冷静に考えてみると、二人の相性が実際にいいかも疑問である。実験的なロマンス映画ということで、記憶に留めておく価値はあるだろう。