What the Fish

3.0
What the Fish
「What the Fish」

 2013年12月13日公開の「What the Fish」は、伝言ゲームを発展させたようなコメディー映画である。題名の「What the Fish」とは、英語の俗語で、驚いたときなどに使う慣用句だ。日本語にすると「なんと」とか「おいおい」みたいな意味になるだろうが、文脈に依る。

 映画「What the Fish」の監督はグルミート・スィン。ほぼ新人の監督である。キャストは、ディンプル・カパーリヤー、スミト・スーリー、アーナンド・ティワーリー、ディープティー・プジャーリー、マヌ・リシ、ギーティカー・ティヤーギー、マンジョート・スィンなどである。ディンプル・カパーリヤーだけは大御所の女優だが、それ以外はマイナーな俳優たちだ。

 舞台はデリー。スダー・ミシュラー叔母さん(ディンプル・カパーリヤー)は1ヶ月の旅行に出る。留守の間、家の面倒は姪のスマンに任せるが、彼女はフィアンセのスミト(スミト・スーリー)にその仕事を押しつける。だが、スミトも無責任な男で、友人のニーラヴ(アーナンド・ティワーリー)とその恋人ゴーパー(ディープティー・プジャーリー)を家に住まわせる。二人は駆け落ち結婚しようとしていた。だが、ニーラヴは出張でマドゥライに行ってしまい、後に残されたゴーパーは、ニーラヴの先輩ラヴィ(マヌ・リシ)に口説かれ、彼と寝てしまう。そして、ゴーパーはニーラヴよりもラヴィの方を夫として認めるようになる。それを面倒に思ったラヴィは、友人のミーナル(ギーティカー・ティヤーギー)を使ってゴーパーを家から追い払う。その家には代わりにミーナルの弟ラージパールが住むようになる。ラージパールの次に相棒のフッダーが恋人のトンビと共に住み始めるが、ラージパールと相棒のフッダーの間で喧嘩が起き、家の家具は無茶苦茶になってしまう。スミト、ラヴィ、ミーナルは力を合わせて家の中を元通りにする。

 1ヶ月後、スダー叔母さんが帰ってくる。異変を感じ取るも、トイレの中から女の幽霊が飛び出てきて、驚いて気を失ってしまう。スダーは霊媒師を呼んで悪魔払いをしようとするが、その霊媒師は泥棒で、スダー叔母さんを眠らせて家の中のものを一切合切持って行ってしまう。霊媒師は以前にもパミー(マンジョート・スィン)が勤める観賞魚店から商品を持ち去ってしまっていた。スダー叔母さんは警察に被害届を提出する。ちなみに、その幽霊は、スミトが家を立ち去る前にトイレに閉じ込めてしまった唖の女性だった。

 何かと口うるさく潔癖症なスダー叔母さんが家を1ヶ月間空けることになり、その間に留守番として代わる代わる住むことになった人々が連鎖的に様々な事件を起こすというコメディー映画だった。題名に「魚」が出て来るが、これはスダー叔母さんが大事にしている熱帯魚ミスティーのことだ。スダー叔母さんはミスティーの世話をするのを厳命したが、留守番をした人々は何度もミスティーを殺してしまい、その都度、観賞魚店から同じ熱帯魚を買ってきて金魚鉢の中に入れる。そんなドタバタなシチュエーションが面白おかしい映画である。

 映画は、スダー叔母さんが1ヶ月の旅行から帰宅するところから始まる。何か異変を感じ取ったスダー叔母さんは、トイレから飛び出てきた女の幽霊と遭遇する。そこから1ヶ月前まで話が巻き戻され、彼女が留守の間、彼女の家で何が起こったかが観客に順に明かされていくという仕組みになっている。

 留守番をすることになった人々は皆無責任で、彼女が清潔に保っていた家は急速に乱れていく。そして最後には家具や置物などが破壊し尽くされてしまう。普通に考えたら復元不可能だったが、壁に掛けられた写真に部屋の様子が映っており、それを参考にして、似た家具などをアンティークショップなどでかき集めて復元する。だが、その写真は、スダー叔母さんが夫と共に暮らしていた頃に写されたもので、現在の状況とは微妙に異なっていた。だからスダー叔母さんは帰ってきた途端に異変に気付いたが、死んだ元夫の霊が舞い戻ったなどと思い込んでしまったのである。

 シチュエーションを楽しむ種類のコメディー映画で、特に後に何かが残るわけでもないが、熱帯魚などの小道具を軸に物語を構成しつつも、叔母さんから言い付けられた注意事項が、歴代の留守番に伝言ゲームのように伝わっていって段々内容がいい加減になっていくところで笑いを誘う手法など、秀逸だった。

 マヌ・リシ、マンジョート・スィン、ギーティカー・ティヤーギーなどが好演していたが、何といってもディンプル・カパーリヤーの貫禄の演技に注目が集まる。「Cocktail」(2012年)などでも見せた「大阪のおばちゃん」的な中年女性役を突き詰めており、映画にパンチ力を加えていた。

 「What the Fish」は、低予算ながら、よく練られた脚本に支えられた、シチュエーションを楽しむ種類のコメディー映画である。ディンプル・カパーリヤーが貫禄の演技を見せている他、多くの俳優が映画に貢献している。後に残るものはないが、カジュアルな笑いを求めるならばアリだ。