Khatta Meetha

2.5
Khatta Meetha
「Khatta Meetha」

 ヒンディー語映画界で「コメディーの帝王」と称されるプリヤダルシャン監督は、人気男優アクシャイ・クマールと共にこれまで「Hera Pheri」(2000年)、「Garam Masala」(2005年)、「Bhagam Bhag」(2006年)、「Bhool Bhulaiyaa」(2007年)、「De Dana Dan」(2009年)などのコメディー映画を作って来た。それらの多くはヒット作となっており、業界内でこの二人は「稼げるコンビ」と見なされている。そのプリヤダルシャンとアクシャイ・クマールの最新コンビ作「Khatta Meetha」が本日(2010年7月23日)より公開された。ヒロインは、タミル語・テルグ語映画界で人気のトリシャーで、彼女にとってヒンディー語映画デビュー作となる。プリヤダルシャン監督の多くのヒンディー語作品と同様に、この映画もマラヤーラム語映画「Vellanakalude Nadu」(1989年)のリメイクとなっている。

監督:プリヤダルシャン
制作:シュリー・アシュタヴィナーヤク・シネヴィジョン
音楽:プリータム
歌詞:イルシャード・カーミル、シェヘザード・ロイ、ニティン・ラーイクワール
出演:アクシャイ・クマール、トリシャー、マクランド・デーシュパーンデー、ラージパール・ヤーダヴ、マノージ・ジョーシー、ニーラジ・ヴォーラー、ミリンド・グナージー、アスラーニー、アルナー・イラーニー、ウルヴァシー・シャルマー、ティーヌー・アーナンド、クルブーシャン・カルバンダー、ジョニー・リーヴァル、サチェート・エンジニア
備考:DTスター・サーケートで鑑賞。

 道路工事請負業者のサチン・ティチュクレー(アクシャイ・クマール)は、学生時代には学生運動を率いて正義のために闘っていたが、夢破れた今ではすっかり堕落した請負業者となってしまっていた。しかし根は正直な男だった。過去に請け負った橋梁工事に欠陥が見つかり、市局からの支払いがストップし、財政難に陥っていた。サチンはこの件に関し市局に対して訴訟も起こしていたが、周囲では笑い者になっていた。

 ティチュクレー家は王族の家柄で、父親のラームカント・ティチュクレー(クルブーシャン・カルバンダー)は、既に引退したものの、地元で尊敬を集める正義の弁護士であった。だが、請負業者の兄ハリーシュや姉婿のスハース(ミリンド・グナージー)、姉婿の市局エンジニア、トリグン(マノージ・ジョーシー)は腹黒い男たちで、政府と癒着して莫大な金を得ていた。

 あるとき、ハリーシュ、スハース、トリグンらが関わって建設した橋が、バス通過中に崩落し、多数の死者が出る大事故が起こった。完全に手抜き工事が原因であったが、三人は地元政治家と結託して、ティチュクレー家に長年仕えて来た運転手ヴィシュワース・ラーオ(ティーヌー・アーナンド)に罪をかぶせ、自殺と見せかけて殺してしまう。だが、この事故で妻と子を失ったアーザード(マクランド・デーシュパーンデー)はそれを信じず、独自に真犯人を探り出していた。

 一方、サチンは市局に新しい局長が就任したと聞き、早速挨拶に行く。だが、新局長は、学生時代の恋人ゲヘナー・ガンプレー(トリシャー)であった。サチンとゲヘナーは学生運動を巡って喧嘩別れした過去があり、因縁の仲であった。ゲヘナーはサチンに対し訴訟を取り下げるように要求するが、サチンは聞き入れなかった。運良くサチンは訴訟に勝利し、市局からロードローラーを接収する。だが、このロードローラーもトラブルメーカーで、なかなか動かなかったばかりか、象に引かせて移動させているときに誤ってゲヘナーの家に突っ込ませてしまう。ゲヘナーの家は大破し、ゲヘナーの兄はティチュクレー家に怒鳴り込んだ。おかげで父ラームカントが弁償しなければならなくなった。

 サチンとゲヘナーの対立はさらに続いた。ゲヘナーはサチンが請け負っていた道路の検査をし、その質が標準に達していないことを理由に、彼から業務を取り上げる。その仕返しにサチンはゲヘナーに収賄の濡れ衣を着せる。だが、ゲヘナーはそれを苦に自殺未遂してしまう。反省したサチンは入院中のゲヘナーを見舞う。このとき2人の間で絆が戻り始めていた。

 ティチュクレー家では、サチンの妹アンジャリ(ウルヴァシー・シャルマー)の結婚話が持ち上がっていた。ハリーシュ、スハース、トリグンらと仲が良かった地元政治家がアンジャリに興味を示しており、彼に嫁がせることで話はまとまった。サチンはアンジャリの気持ちを尊重すべきだと主張するが、聞き入れられなかった。アンジャリは嫁いで行ってしまう。だが、すぐにアンジャリの訃報が飛び込んで来る。アンジャリと特に仲の良かったサチンは悲しみに沈む。

 その頃、アーザードは橋崩落事故の真犯人を確認し、動かぬ証拠も掴む。アーザードと協力していたゲヘナーは、記者会見を行って政治家、官僚、請負業者の汚職を公表しようとする。だが、ゲヘナーは突然転勤となり、さらに地元政治家は部下を送ってアーザードを殺し、証拠を強奪する。死に際にアーザードは、アンジャリは地元政治家やその友人に暴行を受けて殺されたことを話し、汚職暴露の仕事を託して息を引き取る。

 サチンは建設労働者ランギーラー(ラージパール・ヤーダヴ)と協力して、地元政治家が隠した証拠を見つけ出し、奪って逃走する。地元政治家は奪い返そうとするが、乱闘の末に自動車に轢かれて死亡する。

 サチンの活躍により汚職は暴かれ、ハリーシュ、スハース、トリグンらは逮捕される。ラームカントはサチンの行動を褒めるが、サチンはしばらく旅に出ると言い出す。そこへゲヘナーが現れる。ゲヘナーが今まで独身でいたのは、サチンことを想っていたからだと明かす。二人は昔のよりを戻す。

 プリヤダルシャン監督のコメディー映画には定評があるが、多作なだけあって当たり外れが大きい。コメディー映画というのは特に全体のストーリーと個々の笑いの間のバランス感覚が重要なジャンルであるのだが、プリヤダルシャン映画では時として個々の笑いに注力し過ぎてストーリーがなおざりになってしまっている場合が少なくない。「Khatta Meetha」も残念ながら個々の笑い重視のコント寄せ集め映画で、コメディー映画としての完成度は低かった。

 1989年のマラヤーラム語映画をリメイクした作品であることは前述の通りだが、そのせいか、設定にヒンディー語映画らしくない部分が多く、それもマイナスだった。例えば主人公が所属するティチュクレー家は複数の世帯が集住しているが、このような大家族の設定はヒンディー語映画ではもはや時代遅れである。さらに、その中には婿養子世帯が2世帯もあり、北インドの文化からすると異様である。主人公サチンの姉2人が夫と共に同居しており、マノージ・ジョーシー演じるトリグンと、ミリンド・グナージー演じるスハースは、サチンにとってはジージャージー(姉婿)となる。これはケーララ州の文化を反映しているのであろうか。北インドでは当然のことながら、結婚したら女性が嫁ぎ先へ行くことになる。

 それでも、道路や橋などの工事を請け負うテーケーダール(請負業者)の腐敗ぶりと、腐敗せざるを得ない社会システムの糾弾が行われていたのは、単なるコメディー映画に終わらない部分であり、高く評価できる。政府から請負業者に渡る工事費用の内、多くは書類が様々な部署を回る内にそれぞれの役人が懐に入れてしまい、請負業者は残った僅かな予算の中で工事を行わなければならなくなる。当然、そうやって完成した建築物や道路は、標準よりも劣った品質のものになってしまう。請負業者にとってもそっちの方が都合が良い。なぜなら頑丈な道路を造ってしまったら、それが壊れるまで彼らは仕事を請け負えなくなってしまうからだ。貧弱な道路を造っておけば、すぐに再工事の必要が生じ、彼らにとってまた稼ぎ時となる。インドのインフラ問題の原点をよく表現した映画であった。

 すっかりコメディー俳優としても定着したアクシャイ・クマールは、水を得た魚のような自由な演技で、映画を楽しく彩っていた。ラージパール・ヤーダヴもいつも通りクレイジーな演技で笑わせてくれた。往年の名コメディアン、ジョニー・リーヴァルがチョイ役ながら出演していたのもポイントが高い。彼らの活躍もあり、コミックシーンはなかなか面白かった。

 本作がヒンディー語映画デビュー作となるタミル語映画女優トリシャーは、多少タイミングを間違えたような感じだ。彼女が演じたゲヘナーは、役人ということもあって仏頂面をしていることが多く、彼女の魅力があまり出ていなかった。それでも学生時代シーンや、サチンと仲直りした後のシーンで、自然な笑顔を見せる機会があり、ヒンディー語映画でも十分に存在感を示せる女優であることを匂わせていた。「Khatta Meetha」ではまだインパクトが足らないが、あと数作ヒンディー語映画に出演すれば、ヒンディー語映画でも地位を築けるかもしれない。

 多少驚いたのはアンジャリ役で出演していたウルヴァシー・シャルマーである。「Naqaab」(2007年)で大々的にデビューしたウルヴァシーであるが、どうもうまく軌道に乗れなかったようで、本作でセカンドヒロインと言うよりも脇役と言っていいチョイ役での出演を余儀なくされていた。いつの間にか覇気もなくなってしまっており、もはやヒロイン女優に舞い戻れることはないのではないかと感じさせられてしまった。

 音楽はプリータム。「Nana Chi Taang」、「Aila Re Aila」など、派手な音楽が多いが、南インド映画的な突然のダンスシーン挿入が多く、ストーリーの流れが断ち切られていた。エンドクレジットの「Bull Shit」もダンスナンバーとしては秀逸である。

 ところで、「Khatta Meetha」は公開直前にとある団体から動物酷使の訴えを受けた。問題となったのは、象が動かないロードローラーを引くシーンである。カットにはなっていなかったが、象の部分がCGっぽく色づけされていた。実際の映像をCGで塗りつぶしたような感じである。ヒンディー語映画では劇中での動物使用が動物愛護団体などから問題視されることが過去に数例あるが、多くの場合、その修正のせいで映画の質が下がってしまう。とても残念なことである。

 「Khatta Meetha」はヒット率の高いプリヤダルシャン監督とアクシャイ・クマールのコンビ作であり、期待は高かったのだが、蓋を開けてみれば並以下のコメディー映画に過ぎなかった。意外にシリアスなシーンも多い。コメディー映画を観たいのだったら、現在は「Tere Bin Laden」(2010年)の方がオススメである。


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