Aa Dekhen Zara

2.5

 過去に何度も繰り返されて来たことではあるが、現在、映画プロデューサーの組合と大手マルチプレックス・チェーンのオーナーたちの間で、興行収入の取り分を巡って対立が起こっている。その結果、プロデューサーたちが抗議のボイコットを決め、2009年4月1日以降、新作映画を全国のマルチプレックスで公開しない方針を固めた。その影響をまず受けた映画が「Aa Dekhen Zara」である。この映画は2009年3月27日に公開されたが、その週に4月1日が始まることから、大手マルチプレックスでは全く上映されないことになった。デリーでは、シングルスクリーンの映画館の他、サティヤムやムービータイムなど、一部のローカル・マルチプレックス・チェーンのみで公開されている。デリーの映画シーンを牛耳るPVR系列の映画館でも当然のことながらこの映画は公開されていない。PVRで見られないとなると、デリーではかなり選択肢が狭まってしまう。興行収入にも大きな影響が出るだろう。果たしてこの紛争はいつまで続くのだろうか?

監督:ジャハーンギール・スルティー(新人)
制作:ヴィッキー・ラジャニー
音楽:プリータム、ガウラヴ・ダースグプター
作詞:シールシャク・アーナンド、イルシャード・カミール、サイヤド・グルレーズ、プラシャーント・パーンデーイ
振付:アハマド・カーン、ハルシャル・ヴィッタル
出演:ニール・ニティン・ムケーシュ、ビパーシャー・バス、ラーフル・デーヴ、ソフィー・チャウダリー、ボビー・ヴァッツ、シュリーニワース・ナーイドゥ、ディーパク・ダーリーワール、ビシュワジート・チャタルジー、サミール・スィッディーキーなど
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞。

 ムンバイー在住の野生動物写真家ラーイ・アーチャーリヤ(ニール・ニティン・ムケーシュ)は無職状態の上にカメラを盗まれてしまい、生活に困窮していた。ある日、彼を写真の道に導いてくれた祖父アンメーシュ・ジョーシー(ビシュワジート・チャタルジー)が急死したことを知り、彼の家を訪れる。そこで弁護士のアローラー(ディーパク・ダーリーワール)はラーイに遺言を渡す。ラーイは模型の船をいじっている間にそこに仕掛けがあるのを見つけ、中からロッカーの鍵が出て来る。ラーイはロッカーから祖父の荷物を取り出す。その中には旧式のカメラが入っていた。カメラをなくしたばかりだったラーイは、祖父の遺物をこれ幸いと喜ぶ。

 そのカメラをいじっている内に、ラーイはそれが普通のカメラではないことを発見する。それは未来を写し出すカメラで、祖父がここ数年間研究していたものだった。ラーイはそのカメラをギャンブルに有効活用し、大金を手に入れる。また、彼にはスィーミー・チャタルジー(ビパーシャー・バス)というミュージシャン志望のガールフレンドも出来た。ラーイはカメラのおかげで人生の絶頂期にいた。しかし、スィーミーはラーイの性格がどんどん変わって行くことに危惧を感じていた。一度2人の関係は破局寸前まで行くが、ラーイは人生の中で一番大切なのはスィーミーだと考え直し、彼女に素直に謝ると同時に、プロポーズする。だが、スィーミーはミュージシャンへの夢を追っている最中だったため、あと少し時間が欲しいと答える。ラーイはそれを喜んで受け容れる。

 しかし、ラーイはそのカメラのもうひとつの特徴を知る。死すべき人間の写真を撮ると、真っ暗な写真が出て来るのである。ラーイ自身を撮った写真は真っ黒になっており、日付はあと数日後になっていた。

 ある日、ラーイの家にキャプテンという殺し屋が訪ねて来て、「カメラをよこせ」と言い出す。ラーイとスィーミーはカメラを持って逃げ出すが、キャプテンはどこまでも追って来る。このときカメラの秘密やラーイの運命を初めて知ったスィーミーは、ラーイの未来の1日ごとの写真を撮り、それを手掛かりに何とか彼の運命を変えようとする。ラーイとスィーミーはバンコクへ飛び、逃亡を続ける。だが、二人は写真に写っている通りの行動をしてしまう。二人の後を追うのはキャプテンだけではなかった。インド政府の諜報機関、研究分析局(RAW)のエージェント、ソフィア(ソフィー・チャウダリー)とプリー(ボビー・ヴァッツ)もカメラを追っていた。だが、プリーはカメラを我がものにしようとし、ソフィアを殺すが、ラーイとスィーミーには逃げられてしまった。

 殺し屋と諜報部に追われることになり、絶体絶命のピンチに陥ったラーイは、死が予言された日の前日、奇策に打って出る。カメラをスィーミーに託し、単身キャプテンと接触して、もし今後24時間、自分を守ってくれたら、カメラを渡すと提案する。キャプテンもそれを受け容れる。

 プリーはタイの警察を使ってラーイとスィーミーを追う。スィーミーはプリーに捕まってしまうが、そこにラーイとキャプテンも駆けつける。銃撃戦の中でカメラは壊れてしまい、ラーイはキャプテンに撃たれて井戸の中に落ちてしまう。プリーは失望してその場を去り、プリーは殺される。だが、ラーイは生きていた。カメラは、真っ暗な井戸に落ちたラーイを写していたため、真っ黒な写真が出て来たのだった。

 未来を写すカメラを中心としたSFスリラー。前半は果てしなく退屈であるが、後半で何とか持ち直す。カメラによって数日後の死を予言された主人公ラーイが、カメラを手に入れようとどこまでも追って来る殺し屋キャプテンを、死から逃れるためにボディーガードに雇うところは秀逸であった。劇中では、黒い写真が死を予言することになっており、ラーイ自身を映し出した写真も黒くなってしまい、彼は自分が死ぬ運命にあると考えるのだが、実は真っ暗な井戸に落ちたところが写っていただけというオチであった。それもなかなか機転の利いたアイデアだった。最後の銃撃戦でカメラは壊れてしまうが、祖父の遺物の中にはカメラの他に懐中時計もあり、それも不思議な力を持っている可能性が臭わされてジ・エンドとなっていた。大いに続編を予測させる終わり方であった。

 主演のニール・ニティン・ムケーシュは、歌手ムケーシュの孫で、「Johnny Gaddaar」(2007年)で本格デビューした若手俳優である。ハルマン・バヴェージャーと同様にリティク・ローシャン系の外見をしている。「Johnny Gaddaar」では好演していたように記憶しているのだが、どうもまだ迫力に欠ける部分があり、「Aa Dekhen Zara」では弱さの方が目立った。特に前半は、実はどうしようもない大根役者なのではないかと思えたほどだ。

 ヒロインはもはや大御所の風格を漂わしているビパーシャー・バス。彼女のベストの演技ではないが、よく若手のニール・ニティン・ムケーシュを支えていた。ただ、ニールとのスクリーン上の相性はよくない。二人は同じインド人でありながら全く別の人種のような外観で、まるで違う作家の漫画の登場人物がひとつのコマに登場してしまったかのような印象を受けた。

 題名になっている「Aa Dekhen Zara」は、ヒンディー語映画「Rocky」(1981年)の中の同名挿入歌から取られている。映画中、その歌のリミックスも使われている。音楽監督はプリータムなどだが、この映画のサントラはあまり気合いが感じられなかった。

 「Aa Dekhen Zara」は、未来を予知するカメラを巡る攻防を描いたSF要素のあるスリラー映画である。前半我慢して観ていれば、後半はある程度楽しめるが、娯楽映画というのはそこまで苦労して観るものでもない。スキップしても問題ないだろう。