Dil Kabaddi

2.0

 2008年最後の月となったが、ヒンディー語映画界はラストスパートに入っており、年末までに数本の話題作が公開予定である。それを前に、小規模作品の投げ売りウィークになってしまったのが今週のようである。ヒンディー語映画だけで5本が同時公開されたが、どれも似たり寄ったりの中小規模映画で、どれが面白いのか全く分からない。とりあえず最寄りの映画館であるPVRプリヤーが上映する映画を観ることにした。最初に観たのは「Dil Kabaddi」である。2008年12月5日公開。

監督:アニル・シニア
制作:シャイレーシュ・R・スィン
音楽:サチン・グプター
歌詞:ヴィラーグ・ミシュラー
出演:イルファーン・カーン、ラーフル・ボース、コーンコナー・セーンシャルマー、ソーハー・アリー・カーン、ラーフル・カンナー、パーヤル・ローハトギー、サバー
備考:PVRプリヤーで鑑賞。

 銀行員のサミト(イルファーン・カーン)と美容外科医のミーター(ソーハー・アリー・カーン)は夫婦であった。また、ドキュメンタリー映画監督兼教授のリシ(ラーフル・ボース)と編集者のスィミー(コーンコナー・セーンシャルマー)は夫婦であった。結婚から数年経った両夫婦は、家族ぐるみの付き合いをしながらムンバイーに住んでいた。両夫婦には子供がいなかった。

 ある日、サミト&ミーター夫婦がリシ&スィミー夫婦の家を訪れ、別居を決意したと告げる。その後、本当に2人は別居を始めてしまう。

 サミトは、別居を始めるや否や、エアロビクス・インストラクターのカーヤー(パーヤル・ローハトギー)と同居し始めた。一方、スィミーはミーターに、同僚のアート・ディレクター、ヴィール(ラーフル・カンナー)を紹介する。ヴィールはミーターに一目惚れし、彼女にアタックするようになる。

 親友夫婦の別居状態を見て、リシとスィミーも自らの結婚生活を反省するようになり、二人の仲はギクシャクして来る。リシは教え子のラーガー(サバー)と急接近していた。また、スィミーは、ミーターとヴィールの仲が縮まるにつれて嫉妬を覚えるようになり、本当は自分がヴィールのことを好きだったと自覚する。

 そうこうしている内にサミトはカーヤーに愛想を尽かし、ミーターのところへ戻って来る。ミーターの家にはちょうどヴィールが来ており、大混乱となるが、結局サミトとミーターはよりを戻す。

 ところが今度はリシとスィミーが夫婦喧嘩をするようになり、遂に二人は離婚してしまう。スィミーはヴィールと再婚して暮らし始めた一方、リシは独身のままであったが、また別の教え子をターゲットにしているところであった。

 倦怠期に入った2組の夫婦、つまり4人の男女の、それぞれの不倫物語という、インドではかなりレアなプロットの映画である。しかし、「Kabhi Alvida Naa Kehna」(2006年)のような、2組の夫婦がパートナーを取っ替えるスワッピング的映画ではなく、各々が外部にボーイフレンドやガールフレンドを見つけるというストーリーになっていた。ストーリーテーリングの手法は少し変わっており、各登場人物やその関係者へのインタビューを所々に挟みながらストーリーが進んで行くという形であった。ジャンルとしては、コメディータッチのドラマということになるだろう。途中でちょっとしたダンスシーンも挿入され、インドの娯楽映画のテイストも持っていた。

 題名の「カバッリー」とは、日本で一般に「カバディー」として知られているインドの伝統的スポーツである。鬼ごっことドッジボールと格闘技が合わさったような競技であるが、これはつまり、夫婦生活というのはカバッリーのようなゲームであるということを言いたいのであろう。時には敵陣へ突撃して相手を攻撃し、時には自陣に突っ込んで来た相手の攻撃をうまくかわしながら捕まえ返すのが夫婦生活の常であるとの主張が見られた。

 しかし、ストーリーテーリングに凝りすぎな部分があり、物語の筋や登場人物の心情を見失うことが多かった。結局この映画の中に正しく生きている人間はおらず、感情移入もしずらかった。当初離婚の危機に直面していた夫婦が何となく仲直りし、彼らの夫婦喧嘩を傍観していた別の夫婦が最後に離婚してしまうという結末は、メッセージを曖昧にしていた。おかげで、倦怠期に陥った夫婦はいったいどうすればいいのか、その答えは映画でうまく提示されていなかったように思えた。所々で面白い部分もいくつかあったが、全体としては完成度に欠ける映画だと言わざるをえない。

 ヒンディー語映画界ではクロスオーバー映画を中心に活躍する俳優に数えられるイルファーン・カーン、ラーフル・ボース、コーンコナー・セーンシャルマーら演技派俳優が主演をしており、人選は悪くなかっただろう。ソーハー・アリー・カーンも最近は幅広く活躍しており、このような典型的娯楽映画を外れた映画にも時々出演している。

 「Dil Kabaddi」は、興味深い顔ぶれを揃えた映画ではあるが、テーマが一般的なインドのモラルに反するものである上に、ストーリーテーリングに不必要な凝りがあるおかげで分かりにくいストーリーになってしまっている。わざわざ観る必要はないだろう。