Mere Yaar Ki Shaadi Hai

3.5
Mere Yaar Ki Shaadi Hai

 2002年6月7日公開の「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」は、1990年代の娯楽映画の雰囲気を引きずったロマンス映画である。この映画の公開時にはインド在住中だったが、学校が夏期休業中だったため、インド国内旅行や一時帰国をしており、見逃していた。Amazon Prime Videoで配信されていたことから、2022年8月9日に鑑賞することができた。よって、公開から20年後に振り返った視点でのレビューになる。

 プロデューサーはヤシュ・チョープラー。言わずと知れたヒンディー語映画界の重鎮であり、当時ヤシュラージ・フィルムスの社長である。監督はサンジャイ・ガードヴィー。後に「Dhoom」(2004年)や「Dhoom: 2」(2006年)で有名になる監督であるが、このときはまだ駆け出しであった。音楽監督はプリータムとジート・ガーングリーのコンビ。作詞はジャーヴェード・アクタルである。

 メインキャストはウダイ・チョープラー、チューリップ・ジョーシー、そしてジミー・シェールギルの3人である。ウダイとジミーは「Mohabbattein」(2000年)で共演して注目を集めており、このときは若手の有望株であった。また、ウダイはヤシュ・チョープラーの息子でもある。ヒロインのチューリップ・ジョーシーはこのとき「サンジャナー」とクレジットされている。2000年代に一定の知名度は獲得したが、それほど伸びなかった女優だ。元々はデビュー作「Kaho Naa… Pyaar Hai」(2000年)で一躍人気女優になったアミーシャー・パテールが起用される予定だったが、彼女がウダイとの共演を断ったため、代わりにチューリップに白羽の矢が立てられたようだ。

 また、特別出演扱いながら、ビパーシャー・バスがセカンドヒロインと呼んでいいほどの非常に重要な役で出演しているのが特筆すべきである。「Ajnabee」(2001年)でセンセーショナルなデビューを果たしたモデル出身女優のビパーシャーは、メインヒロインのチューリップを圧倒する存在感を放っている。ただし、彼女の声は吹き替えである。ベンガル人の彼女はまだこのときヒンディー語が得意ではなかったようだ。

 他に、アーローク・ナート、サウラブ・シュクラー、パリークシト・サーニー、タンナーズ・イーラーニーなどが出演している。また、シルパー・シェッティーの妹シャミター・シェッティーがアイテムナンバー「Sharara」でアイテムガール出演している。シャミターも「Mohabbatein」でデビューし注目を浴びた女優である。

 ムンバイー在住のサンジャイ・マロートラー、通称サンジュー(ウダイ・チョープラー)には、リヤー(ビパーシャー・バス)という親友がいた。リヤーは、失恋してばかりのサンジューを慰めていた。だが、サンジューを強く落ち込ませたのは、彼の幼馴染みアンジャリ・シャルマー、通称アンジュー(チューリップ・ジョーシー)の結婚であった。サンジューとアンジューは元々デヘラードゥーンに住んでおり、近所同士だったが、サンジューの父親が死んだことがきっかけで、彼はムンバイーに出て来ていた。アンジューも米国留学し、離れ離れになっていたが、久々にアンジューから掛かって来た電話で、彼女がインドに戻って来ていること、そして米国で出会ったラーフル(ジミー・シェールギル)というインド人医師ともうすぐ結婚することが伝えられたのだった。密かにアンジューのことが好きだったサンジューは意気消沈するが、リヤーに励まされ、結婚式を壊すためにデヘラードゥーンに戻ることを決意する。

 久々にデヘラードゥーンに戻り、アンジューと再会したサンジューは、まずローヒトがどんな男性か確かめる。見たところ敬虔かつ謙虚で非の打ち所のない男性であった。そこでサンジューは巧みにアンジューの前でローヒトの欠点や失態を引き出そうとする。だが、ローヒトは、サンジューがアンジューを愛していること、そしてサンジューがローヒトとアンジューの結婚を邪魔しようとしていることに気付く。サンジューとローヒトは、結婚式までの1週間でどちらがアンジューにふさわしい男性か、勝負することになる。

 しかし、どうもサンジューの方が分が悪かった。それを見かねたリヤーは突然デヘラードゥーンまでやって来て、サンジューの恋人と嘘の自己紹介をし、アンジューを嫉妬させようとする。だが、同棲していることにしてしまったため、度が過ぎてしまった。サンジューも負けを認めてしまう。リヤーはムンバイーに去り、サンジューも結婚式の前日にデヘラードゥーンを後にする。

 だが、アンジューはローヒトに、実はサンジューを愛していたと明かす。それを聞いたローヒトは、アンジューを連れてムンバイーまで行き、彼女をサンジューに引き渡す。サンジューとアンジューはデヘラードゥーンに戻り、結婚する。

 「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」という題名は、「私の友人の結婚式だ」という意味になる。この「友人」の意味する内容が、物語が進行するにつれて変わっていく。それが面白かった。

 映画の冒頭では、主人公サンジューの幼馴染みであり、「友人」であるアンジューが結婚することが伝えられる。アンジューとは「友人」のつもりだったが、いざアンジューが他の男性のものになってしまうとなると、サンジューの心にはアンジューへの恋愛感情が浮かび上がる。そして、「友人」の結婚式を壊し、「友人」の結婚を阻止するために、ムンバイーから故郷デヘラードゥーンに向かうのである。

 ヤシュラージ・フィルムスの大ヒット映画である「Dilwale Dulhania Le Jayenge」(1995年)の後半も、主人公ラージが自分の好きな女性スィムランの結婚式に忍び込んで、何とかその女性と結婚しようとするが、「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」は、前半がそのパターンであった。ただ、スィムランの婚約者クルジートは悪い奴だったため、「Dilwale Dulhania Le Jayenge」のラストは成立していた一方で、「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」の恋敵になるローヒトは、非の打ち所のない、いい奴だった。そこでもうひとつ捻りが必要になってくるのである。

 サンジューはあの手この手でローヒトを追い落とそうとするが、完全な成功は収められない。その内、ローヒトにも妨害工作がばれてしまい、彼の心の内まで知られてしまう。ローヒトが悪知恵の働く男性だったら、サンジューの裏工作をアンジューやその家族に告発することで、簡単にサンジューを消すことができた。だが、ローヒトはあくまでいい奴なので、そういうことはしない。逆にサンジューに対し、結婚式までの1週間、アンジューの気持ちをどちらが勝ち取るか、勝負することになる。そして、その勝負でサンジューは負けてしまうのである。

 サンジューはローヒトに対し、潔く負けを認める。だが、そういう潔い態度が恋敵である二人を「友人」にする。そしてローヒトは、ムンバイーに立ち去ろうとするサンジューを引き留め、「友人」として結婚式に出席するように頼む。ここに至って、題名の中の「友人」は、サンジューにとってのローヒトに変化するのである。

 ただ、アンジューの心は実はサンジューにあった。サンジューがいつまでも告白してくれなかったため、アンジューはサンジューが自分を求めていないと考え、ローヒトを結婚相手に選んだのだった。それを打ち明けられたローヒトは、やはり勝負はサンジューの勝ちだと考え、アンジューをサンジューに譲る。もちろん、ローヒトはサンジューとアンジューの結婚式に参列し、「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」という楽曲を歌って踊る。最後の最後になって、「友人」は、ローヒトにとってのサンジューになるのである。

 また、リヤーも本当はサンジューのことが好きだった可能性がある。リヤーはひたすらサンジューの恋愛を支援していたが、もしサンジューがそのまま恋に破れていたら、サンジューとくっ付いていたことだろう。だが、サンジューとアンジューがようやくお互いに思いを打ち明け、結ばれることになったため、それは実現しない。リヤーもサンジューとアンジューの結婚式に出席する。リヤーにとってのサンジューも「友人」だといえるだろう。

 本来ならばスター俳優のオーラを持っていないウダイ・チョープラーであるが、父親が有力なプロデューサーであることもあって、主演の座を用意してもらった。彼なりに演技を頑張っていたが、スター性が欠如しているため、彼の立ち振る舞いはどうしてもチグハグに感じてしまった。明らかにジミー・シェールギルの方が男前であり、演技にも重みがあった。

 チューリップ・ジョーシーについても似たことがいえる。アミーシャー・パテールが出演拒否したことで幸運にもこの映画で主演としてデビューすることができ、次世代のヒロイン女優として売り出されていた。だが、特別出演のはずのビパーシャー・バスの方にどうしても目が行ってしまい、損をしていた。

 「Mere Yaar Ki Shaadi Hai」は、大ヒット映画「Mohabbatein」のキャストを多数起用し、「Dilwale Dulhania Le Jayenge」の後半を発展させた内容のロマンス映画である。結婚式を下敷きにしているところ、多数の家族が住む邸宅で物語が進行するところなど、2000年代よりも1990年代のヒンディー語映画の特徴を持っている。ヒットはしたが、主演のウダイ・チョープラーをスターに浮上させる力まではなかった。