Khiladi

3.5
Khiladi
「Khiladi」

 1992年6月5日公開の「Khiladi」は、アクシャイ・クマールの出世作であり、「Khiladi」シリーズの第1弾だ。この映画の成功によりアクシャイはスターの仲間入りし、「Khiladi」を冠した彼の主演作が作られ続けることになった。ただし、まだ当時のヒンディー語映画界に続編やシリーズといった考え方はなく、アクシャイを主演にした「Khiladi」シリーズのプロデューサーや監督は別々である。

 題名の「Khiladi」は、「遊ぶ」という意味のヒンディー語の動詞「खेलनाケールナー」から派生した言葉で、「スポーツ選手」という意味から「プレイボーイ」「賭博師」「遊び人」という意味までさまざまである。「Khiladi」の主人公ラージは博才があるという設定だったため、「賭博師」という訳がもっとも本題と近いだろう。

 「Khiladi」の監督はアッバース=マスターン。ヒンディー語映画界きってのB級映画メーカーだ。本作は彼らにとって2つめのヒンディー語映画になり、そのヒットによって名声を獲得した。音楽はジャティン=ラリト、作詞はアンワル・サーガル、シャーム・ラージ、マヘーンドラ・デヘルヴィー、デーヴ・コーリーなどである。

 主演のアクシャイ・クマールは空手、ムエタイ、テコンドーなどを極め、モデルやバックダンサー、そして端役での演技を経て、「Saugandh」(1991年)で既に本格デビューしていたが、まだ駆け出しの俳優だった。彼の台頭はこの「Khiladi」から始まった。彼がしばしば「キラーリー」の愛称で呼ばれるのも、この映画が人々に与えたインパクトが強かったからだ。

 ヒロインはアーイシャー・ジュルカー。やはり撮影時は駆け出しの女優で、「Khiladi」の成功によって注目を集めた。

 他に、ディーパク・ティジョーリー、サビーハー、プレーム・チョープラー、シャクティ・カプール、ティーヌー・アーナンド、シャラト・サクセーナー、アナント・マハーデーヴァン、ビーナー、ジョニー・リーヴァル、アムルトラール・パテール、クニカー・サダーナンド、グッディー・マールティ、ディンヤール・コントラクターなどが出演している。

 2026年9月9日に鑑賞し、このレビューを書いている。

 ラージ・マロートラー(アクシャイ・クマール)は賭け事が大好きな大学生だった。兄のスレーシュ(シャクティ・カプール)は警察官で、弟の素行を心配していた。ボニー(ディーパク・ティジョーリー)はラージの相棒で、シータル(サビーハー)はボニーの彼女的存在だった。大学にニーラム・チャウダリー(アーイシャー・ジュルカー)という女の子が転校してきて、三人と仲良くなる。

 ラージとニーラムは恋仲になる。ニーラムとシータルが大学の研修旅行のためにナーシクに出掛けたとき、ラージとボニーは女装して合宿先の女子寮に忍び込む。彼らは捕まってしまい、シータルの父親カイラーシュナート(プレーム・チョープラー)に叱られる。そこでラージはカイラーシュナートに一泡吹かせることを賭け事にし、計画を立てる。

 ラージは、シータルの誘拐をでっち上げてカイラーシュナートに電話を掛け、10万ルピーの身代金を要求する。スレーシュの介入があったために金の受け渡しに苦労するが、何とか身代金を受け取ることに成功する。ところがシータルが何者かに殺されてしまう。三人はシータルの遺体を隠し、犯人にされないようにする。

 やがてシータルの遺体は発見される。カイラーシュナートは有名な実業家かつ政治家であったため、事件は大々的に報じられる。スレーシュは犯人逮捕のため捜査を始め、ラージやボニーの聴取も行う。

 大学の文化祭でラージとボニーはダンスを踊るが、ゲストダンサーのジュリー(クニカー・サダーナンド)に見覚えがあった。ボニーは彼女の後を付けたが、彼女も何者かに殺されてしまう。ボニーは殺人の目撃者になり命を狙われるようになる。瀕死の重傷を負ったボニーは、ラージとスレーシュに、ニーラムの命が危ないと告げる。そのときニーラムは大学の女子寮にいた。

 刺客がニーラムに迫っていた。ニーラムは逃げ惑いながら隙を見て反撃し、刺客を窓から突き落とすが、まだ死んでいなかった。ニーラムが見ると、それは叔父のウダイチャンド(アナント・マハーデーヴァン)だった。ウダイチャンドはニーラムの亡き父親から事業を継承したが、ニーラムが18歳になったら事業を彼女に譲り渡さなければならないと知り、ニーラムを殺そうとしたのだった。まずはジュリーに暗殺を依頼したが失敗し、今度は彼が自分自身でニーラムを殺そうとしたが、誤ってシータルを殺してしまったとのことだった。ウダイチャンドは警察に逮捕される。

 場末の劇場で上映されることを念頭に作られたような低予算映画の体裁であったが、スリラー映画の名手として後に知られることになるアッバース=マスターン監督デュオの持ち味が既に遺憾なく発揮されており、チープだがついつい引き込まれてしまうという不思議な魅力を持っている。それはおそらくマサーラー映画の完成されたレシピに忠実に従って作られているからであろうと思う。ロマンス、アクション、スリラーなど、ありとあらゆる娯楽要素が詰め込まれ、それらが混ざり合って絶妙な味わいを生み出している。まるでエモーションのローラーコースターである。

 物語の軸になっているのはスリラー映画の定番のひとつである狂言誘拐だ。主人公ラージたちは、シータルの父親カイラーシュナートに一泡吹かせたいという安易な動機のみによって、シータルの誘拐を演出する。「若気の至り」そのものである。だが、身代金を受け取った後にシータルが何者かに殺されてしまい、ラージたちは殺人罪を免れるために隠蔽工作を始める。狂言誘拐をして身代金を要求したのは事実であるため、警察に頼ることもできなかった。王道といえば王道だが、最後まで真犯人が分からず、スリルがある。特にニーラムが女子寮で刃物を持った刺客に追い回されるシーンは秀逸だった。各主要シーンにおいてのカメラワークにも工夫が見られた。

 マーシャルアーツを学んだアクシャイ・クマールの潜在力も引き出されていた。他の俳優たちに比べて身体能力が圧倒的に優れており、アクションシーンやダンスシーンでそれを発揮していたし、コメディーシーンも難なくこなしていた。後の大スターの片鱗が既に感じられる。

 コミックシーンは脇役たちの出番でもあった。ジョニー・リーヴァルやティーヌー・アーナンドといった才能あるコメディアン俳優たちが一瞬の笑いを演出していた。中でも目を引いたのはディンヤール・コントラクターだ。大学の学長役を演じていたが、独特のしゃべり方や顔の筋肉の使い方は爆笑を誘わずにはいられない。

 「Khiladi」は、アクシャイ・クマールをスターに押し上げた「Khiladi」シリーズの記念すべき第1作であり、アッバース=マスターン監督デュオの持ち味がよく出たスリラー映画だ。「豪華な低予算映画」と呼びたくなる。チープさの奥底にあるエッセンスを楽しめる人にはおすすめできる作品である。


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