The Revolutionaries

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The Revolutionaries
「The Revolutionaries」

 新宿中村屋は、日本に本場インドのカレーを広めたことで知られている。そのきっかけになったのは、中村屋の創業者である相馬愛蔵・黒光夫妻が、英領インドで反英活動に身を投じ指名手配され、日本に亡命していた革命家ラース・ビハーリー・ボースをかくまったことだった。ボースは、当時日本で一般化していた小麦粉を使った英国風カレーを毛嫌いし、「本物」のカレーを日本人に知らしめようとしたのである。もちろん、インド式カレーの普及は彼の功績の中でも些末な事柄に過ぎない。ボースは、1910年代から40年代まで、インド独立運動の最前線にいた重要人物である。ちなみに、「ネータージー」の愛称で呼ばれ、日本軍と共同でインパール作戦を実行したスバーシュ・チャンドラ・ボースとは別人なので注意が必要だ。

 2026年9月11日からAmazon Primeで配信開始されたAmazonオリジナルのウェブドラマ「The Revolutionaries」は、ラース・ビハーリー・ボースをはじめとした革命家たちが主人公の歴史フィクション物語である。日本のAmazon Primeでも日本語字幕付きで配信されており、邦題は「レボリューショナリーズ ~名もなき革命家たち~」になっている。

 監督は「Kal Ho Naa Ho」(2003年)や「Chandni Chowk to China」(2009年/邦題:チャンドニー・チョウク・トゥ・チャイナ)などで知られるニキル・アードヴァーニー。サンジーヴ・サーンニャール著「Revolutionaries: The Other Story of How India Won Its Freedom」(2023年)を原作としている。

 主要キャストは、インフルエンサー出身のブヴァン・バーム、「Sunny Sanskari Ki Tulsi Kumari」(2025年)に出演のローヒト・サラーフ、「Laapataa Ladies」(2023年/邦題:花嫁はどこへ?)に出演のプラティバー・ラーンター、そして「Brahmastra Part One: Shiva」(2022年/邦題:ブラフマーストラ)に出演のグルファテー・ピールザーダーである。まだ駆け出しの俳優たちばかりで、抜擢人事だ。

 他には、ジェイソン・シャー、エド・ロビンソン、プラティーク・モートワーニー、パーオリー・ダーム、トーター・ロイ・チャウダリー、カシシュ・サルージャー、テンジン・ボード、アヴィジート・ダット、KCシャンカル、ギリーシュ・セヘデーヴ、バヴィヤー・グローヴァー、パッラヴィー・チャタルジー、ニール・ブーパーラム、ラージディープ・バッターチャーリヤ、アナンニャブラタ・チャクラヴォルティー、スシッダーント・ラージなどが出演している。

 日本人としては、ボースの日本時代まで描かれるのか興味が湧くのだが、残念ながらシーズン1ではボースが日本に渡航する前までの出来事が描かれるのみである。シーズン1は全8話構成で、各エピソードの題名は以下のようになっている。括弧内は日本語字幕の題名である。

  1. Behroopiya(覆面の暗殺者)
  2. Shaagird(若き革命家)
  3. Ekla Chalo Re(独り歩め)
  4. Paigaam(言葉の力)
  5. Shabaash!(快挙なり!)
  6. Komagata Maru(駒形丸事件)
  7. Aur Bhi Aayenge(革命は続く)
  8. Gadar!(ガダル!)

 インド時代のボースが関与した事件の中でもっとも有名なのは、ハーディング卿暗殺未遂事件である。1912年12月23日、デリーのチャーンドニー・チャウクを行進していたチャールズ・ハーディング総督は爆弾を投げつけられ重傷を負った。その首謀者がラース・ビハーリー・ボース(ブヴァン・バーム)であった。ボースは、デヘラー・ドゥーンの森林研究所で事務主任をするかたわら密かに独立運動に関わっており、爆弾の製造も行っていた。その後、ボースは追われる身となり、バナーラス、カルカッタ、シャンデルナゴルなどに潜伏した。「The Revolutionaries」シーズン1は、このハーディング卿暗殺未遂事件から始まる。

 ボースの逃亡を手助けしたのがサチンドラナート・サーンニャール(ローヒト・サラーフ)だった。バナーラスのバンガーリー・トーラー地区の名家サーンニャール家は、昔から反政府勢力を陰ながら支援してきた家系だった。だが、若くて血気盛んなサチンは表立って革命に参加したいという野心を抱き、ハーディング卿暗殺未遂事件後にサーンニャール家に逃げ込んできたボースと行動を共にするようになる。サチンの許嫁プラティバー・ラーヒリー(プラティバー・ラーンター)も後からサチンに合流し、グループの一員になる。

 カルカッタでボースが頼ったのが、「虎退治」の伝説で知られるバーガー・ジャティン(グルファテー・ピールザーダー)だった。ジャティンは、英国に協力的なインド人を暗殺するなどして革命家仲間たちから一目置かれた存在だった。

 ボースたちの宿敵として設定されているのがレジナルド・エドワード・ハリー・ダイヤー中佐(ジェイソン・シャー)である。ダイヤー中佐は、1919年4月13日にジャリヤーンワーラー庭園の虐殺(アムリトサルの虐殺)を行った軍人として悪名高いが、「The Revolutionaries」シーズン1ではそこまで描かれない。おそらくダイヤー中佐がボースを執拗に追うというのもフィクションなはずである。ダイヤー中佐は、デリーで発生したハーディング卿暗殺未遂事件をきっかけにボースを追ってバナーラスやカルカッタを訪れる。「ルパン三世」でいう銭形警部的な立ち位置である。

 シーズン1の第8話はラホール蜂起で終わっている。1915年2月21日、ラース・ビハーリー・ボースは、米国やカナダで旗揚げされた反英政治団体ガダル党のメンバーと共にラホールで武装蜂起し、英国軍駐屯地を占領しようとした。だが、仲間の裏切りによって彼らの動きは事前に当局に察知されており、蜂起は失敗に終わった。ただ、「The Revolutionaries」の中では、駐屯地にはためていた英国旗を下げ、ガダル党の旗を掲げることに成功しており、それでもって蜂起の目的が達成されたかのような達成感ある描写がなされていた。

 ニキル・アードヴァーニー監督は、「Kal Ho Naa Ho」という不朽の名作を監督したことで知られるが、基本的には大味な映画を作る人物であり、この「The Revolutionaries」も時代考証や歴史的事実の再現などにこだわった硬派な作りにはなっていなかった。いくつかの歴史的事実を脚色してつなぎ合わせ、ラース・ビハーリー・ボースなどを極度に英雄化した、娯楽優先、愛国主義高揚のフィクション作品である。映画よりも予算が限られていると見えて、セットや衣装などに安っぽさが感じられたし、サチンとプラティバーの恋愛が余分に感じられるなど、全体的に冗長でもあった。

 主要キャストの中では、サチン役のローヒト・サラーフ、プラティバー役のプラティバー・ラーンター、そしてジャティン役のグルファテー・ピールザーダーは悪くなかったが、肝心のラース・ビハーリー・ボース役を演じたブヴァン・バームが中途半端だった。FacebookやYouTubeのインフルエンサーからのし上がった人物であり、主演を張る俳優としてはもう少し研鑽が必要だろう。

 意外に良かったのが、ダイヤー中佐役を演じた英国人俳優ジェイソン・シャーだ。ムンバイーを拠点にインドで芸能活動を行っており、ヒンディー語も達者である。悪役ながら、吃音症から生じた劣等感を出世欲につなげてきた内面的旅路もよく表現されていた。「RRR」(2022年/邦題:RRR)でエドワード役を演じた米国人俳優エドワード・ソネンブリックなど、インドに住んで複数のインド映画に出演している外国人俳優がちらほらと現れ始めており、注目される。

 ところで、もし「The Revolutionaries」が今後も続くならば、2つの方向性が考えられる。ひとつは、別の革命家に話が移ることだ。シーズン1の最後には、バガト・スィン、ウダム・スィン、チャンドラシェーカル・アーザードが一瞬だけ登場していた。これは、彼らがシーズン2の主役であるという布石だった可能性がある。ただ、バガト・スィンやウダム・スィンは既に十分なほど映画化されているので、改めて彼らを取り上げる意義は少ない。それよりは、日本人としても期待したいのだが、シーズン2以降も引き続きラース・ビハーリー・ボースを主人公にして、彼が日本に渡った後の人生を描いてもらいたいものである。