
「Masti」シリーズは、インドでもっとも下品なコメディー映画群だ。3人の既婚男性が何かと理由を付けて妻以外の女性と浮気をしようとするというのが基本的なストーリーラインであり、これでもかというくらい下ネタが連発される。1作目の「Masti」(2004年)と2作目の「Grand Masti」(2013年)は大ヒットしたものの、3作目の「Great Grand Masti」(2016年)はフロップに終わった。2025年11月21日公開の「Mastiii 4」は「Masti」シリーズの4作目である。
「Masti」シリーズの過去3作はインドラ・クマールが監督だったが、本作では「Satyameva Jayate」(2018年)などのミラープ・ミラン・ザーヴェーリーに交代した。ただ、インドラ・クマールはエークター・カプールなどと共にプロデューサーを務めている。音楽はミート・ブロス。
ヒンディー語映画の多人数型シリーズ物では珍しいことなのだが、全4作とも主演と主役の名前は共通している。リテーシュ・デーシュムク、ヴィヴェーク・オベロイ、アーフターブ・シヴダーサーニーがそれぞれアマル、ミート、プレームを演じる。デビュー順でいえばアーフターブが一番先輩なのだが、第1作「Masti」公開時にはヴィヴェークがもっともスター性があった。だが、時代の変遷により、現在この3人の中で結局もっとも安定して映画に出演しているのはリテーシュになっている。とはいってもリテーシュを含め3人ともお世辞にもトップスターとはいえない。
「Mastiii 4」はマルチヒロイン映画でもあり、シュレーヤー・シャルマー、ルーヒー・スィン、エルナーズ・ノーローズィーがリテーシュ、ヴィヴェーク、アーフターブの相手役を務める。3人のヒロインの名前は「Masti」から変わっていないが、女優だけが入れ替わっている。アーンチャル役のシュレーヤーは新人、ギーター役のルーヒーは「Calendar Girls」(2015年)に出演の女優、ビンディヤー役のエルナーズはイラン系ドイツ人女優で「Tehran」(2025年)に出演していた。
他に、アルシャド・ワールスィー、ナルギス・ファクリー、トゥシャール・カプール、ジェネリア、ニシャーント・スィン・マルカーニー、シャード・ランダーワーなどが特別出演枠や脇役で出演している。ちなみにジェネリアは「Masti」のビンディヤー役で、アマル役のリテーシュとカップリングされていた。その後、リテーシュとジェネリアは結婚した。
舞台は英国。動物園勤務のアマル(リテーシュ・デーシュムク)、カーディーラーのミート(ヴィヴェーク・オベロイ)、医者のプレーム(アーフターブ・シヴダーサーニー)は、それぞれ妻に悩まされていた。アマルの妻ビンディヤーは束縛が強く、しかも慈悲心にあふれており、乞食を家にかくまうなどしていた。ミートの妻アーンチャル(シュレーヤー・シャルマー)は毎分ミートに電話をするほど心配性だった。プレームの妻ギーター(ルーヒー・スィン)は極度に信心深く、毎日何かしらの神様にお祈りを捧げていた。
アマルとビンディヤー、ミートとアーンチャル、プレームとギーターは、友人カームラージ(アルシャド・ワールスィー)とその妻メーナカー(ナルギス・ファクリー)の結婚10周年記念パーティーに出席する。カームラージとメーナカーが結婚後10年経った後も仲睦まじいのを見て、アマル、ミート、プレームはいぶかしがる。そこで三人はカームラージを見張る。すると、メーナカーを送り出した後にカームラージは自宅にたくさんの女性たちを呼び込んでいた。ほくそ笑んだ三人は乱入し、メーナカーを呼び寄せる。だが、メーナカーは怒らないばかりか、カームラージを抱き寄せる。そして、「LV(ラブ・ヴィザ)」という聞き慣れない言葉を発する。
メーナカーは年に1回、カームラージに1週間のLVを与えていた。これはつまり浮気のライセンスで、この1週間、カームラージは思いっきり羽を伸ばすことができた。それを羨ましがった三人は妻にLVをくれるようにお願いするが平手打ちされて終わる。だが、ビンディヤー、アーンチャル、ギーターはメーナカーから助言を受け、一転して夫に1週間のLVを与えることにする。
アマル、ミート、プレームは1週間、妻以外の女性と公認の浮気をしようとするがうまくいかなかった。そして大した成果もなく1週間が過ぎ去ってしまう。すると、今度はビンディヤー、アーンチャル、ギーターがLVを求めてきた。実はカームラージもメーナカーにLVを与えていた。それを知ったアマル、ミート、プレームは後悔し、妻たちの浮気を阻止しようとする。
LV期間にビンディヤーはマフィアのドン、パブロ・プーチンワー(トゥシャール・カプール)と、アーンチャルは大富豪の息子スィド・ワーリヤー(ニシャーント・スィン・マルカーニー)と、ギーターは警察官のヴィラート(シャード・ランダーワー)と出会い、いい仲になる。パブロ、スィド、ヴィラートはヴァレンタインデーにそれぞれの女性たちとベッドインしようとするが、アマルが持っていたAV(アンチ・バイアグラ)を使って三人の男性の精力を減退させ、それを失敗に終わらせる。だが、その工作がばれ、アマル、ミート、プレームは彼らに追われることになる。
捕らえられたアマル、ミート、プレームは絞首台に吊り下げられる。だが、そこへビンディヤー、アーンチャル、ギーターが現れ、彼らを救う。実はLVを彼らに与えたときから彼らが出会った人物は全て彼女たちが仕組んでいた。反省したアマル、ミート、プレームはもう二度と浮気はしないと誓う。
既婚男性が浮気をしようとして失敗する様子を面白おかしく描いたコメディー映画であり、はっきりいって女性が観ても不快感しか催さないだろう。そうすると完全に男性向けの映画ということになるが、男性の視点から観ても、部分部分のコント劇で多少吹き出すことがあるのを除けば、全くもって楽しい気分になる映画ではない。あまりにチープすぎるし、あまりに下品すぎる。もしかしたらこの種のコメディー映画が大好物の人もいるかもしれない。だが、大衆受けする映画ではないことは確かである。
このような低レベルな映画に出演することになってしまった俳優たちには同情しか感じない。それぞれに事情があったのだと思う。リテーシュ・デーシュムク、ヴィヴェーク・オベロイ、アーフターブ・シヴダーサーニーについては、シリーズ第1作から欠かさず出演してきたメンバーであり、この企画が持ち上がったときに断ることができなかったのだろう。ただ、前述の通り、この三人は必ずしも引く手あまたというわけでもなく、自ら進んで出演を決めたとしても何ら不思議ではない。
ヒロインとして起用された3人の女優たちは、「Masti」シリーズがどんな映画なのか熟知しながらも、チャンスを求めて出演を決めたのだろう。確かに「Masti」の第1作と第2作は大ヒットした。特に第1作「Masti」に出演したジェネリア、アムリター・ラーオ、ターラー・シャルマーはその後それぞれ女優として一定の成功を収めた。だが、もはや「Masti」シリーズにはそんな神通力も残っていないように見える。シュレーヤー・シャルマー、ルーヒー・スィン、エルナーズ・ノーローズィーにとって「Mastiii 4」は彼女たちのキャリアの足しにならなかったばかりか黒歴史として残り続けることになるだろう。
特別出演扱いだったアルシャド・ワールスィーとナルギス・ファクリーはまだ尊厳のある役柄だった。トゥシャール・カプールが起用されていたのは、姉エークター・カプールがプロデューサーの一人というコネがあったからだろう。トゥシャールはヒンディー語映画界では既に終わった人である。
浮気がテーマの映画であるため、セックスに関する事柄があらゆるメタファーによって表現されており、それを笑うのがこの映画の基本的な楽しみ方になる。だが、それ以外にもヒンディー語映画のパロディーや楽屋オチがいくつもあった。だが、それがあるから楽しい映画になるわけでもない。
「Mastiii 4」は、下ネタで定評のある「Masti」シリーズの最新作だが、回を追うごとに完成度が低くなっており、4作目に至ってそれは目を覆わんばかりの体たらくとなってしまった。インドの下ネタに特に興味のある奇特な人以外、鑑賞するのは避けた方がいい。きっと、後悔するだろう。
