
2025年7月18日公開の「Nikita Roy」は、ソーナークシー・スィナーが合理主義者として世の中のインチキ霊媒師や怪しげな新興宗教教祖の正体を暴いていくホラー映画である。
監督はクシュ・スィナー。往年の名優シャトゥルガン・スィナーの息子で、ソーナークシーの兄である。クシュには双子の兄ラヴがいる。「Sadiyaan」(2010年)で俳優デビューしたが体格が俳優向きではなく全く鳴かず飛ばずであった。クシュにとっては本作が初の長編映画監督作になる。脚本を書いたパヴァン・クリパーラーニーはホラーコメディー映画「Bhoot Police」(2021年)の監督である。
主演ソーナークシーの他には、パレーシュ・ラーワル、アルジュン・ラームパール、スハイル・ナイヤルなどが出演している。
ロンドン在住のニキター・ロイ(ソナークシー・スィナー)は国際合理主義者協会(IRC)のメンバーで、最近、現代に残る迷信について本を出版した。ニキターはブックローンチのためにムンバイーに滞在中、兄サナル(アルジュン・ラームパール)の訃報を受け取る。サナルはIRCの創立者で、迷信に囚われた人々の救済に人生を捧げていた。ニキターはロンドンに急いで帰る。
警察からはサナルの死因は自殺だと告げられる。だが、ニキターはそれを信じられず、友人のジョリー(スハイル・ナイヤル)の助けを借りて独自に捜査を始める。IRCのメンバーたちから、サナルは死の直前までアマル・デーヴ(パレーシュ・ラーワル)の新興宗教団体「トゥルー・フェイス・ファウンデーション」について調べていたと知ったニキターは、アマルが兄の死に関係していると直感する。
ニキターはジョリーと共にトゥルー・フェイス・ファウンデーションの本部に潜入するが、アマルは彼らのことを調べ上げており、呼び寄せる。ニキターがアマルに、1週間以内に悪事を暴くと挑発すると、アマルはニキターに呪いを掛け、3日以内に死ぬと宣告する。
ニキターは、兄のインフォーマントだったフレヤーの家に行く。フレヤーは気が触れており、彼女の前で自殺する。だが、フレヤーから受け取った本に隠されていたメモリーカードから情報が得られた。また、ニキターはフレヤーが教団から盗み出し地面に埋めていた薬品を掘り起こす。だが、次第にニキターは何者かの影におびえるようになっていく。
フレヤーの家の壁に書かれた数字をIRCで分析してもらったところ、それは座標であった。その座標の示す場所にあった廃墟にニキターとジョリーは乗り込むが、ニキターはそこで怪物を目にし気を失う。ニキターはジョリーに助け出される。
ジョリーは気絶したニキターを連れてアマルのところへ駆け込み許しを乞う。アマルは得意げになるが、実はそれは罠だった。二人はアマルの奇跡や呪いの正体を暴いていた。アマルには植物の知識があり、植物から幻覚症状のある薬品を作ってライバルに密かに摂取させていたのだった。ニキターも知らず知らずの内に薬品を摂取し幻覚を見るようになっていたが、フレヤーの家で見つけた薬品は中和剤で、それを飲むことで回復していた。また、インフルエンサーのジョリーは全てを録画してライブ配信しており、アマルの悪事は多くの視聴者に知れ渡ることになった。アマルは怒った信者たちから袋だたきに遭う。
事件を解決したニキターは、次なる目標を定め旅立つ。
上映時間は2時間未満で、インド映画としてはコンパクトにまとまったホラー映画であった。主人公のニキターは兄サナルの影響により、あらゆる謎は科学によって説明できると信じていた。兄が設立した国際合理主義者協会(IRC)のメンバーであり、世の中から迷信を一掃しようと活動する作家でもあった。その彼女が、兄の死の原因になったと思われる怪しげな新興宗教団体とその教祖アマルに立ち向かうのが「Nikita Roy」の内容である。
映画の中では屈強な体格をした怪物が登場し、殺戮を繰り広げる。果たして迷信の方が真実で、科学の方が間違っていたのだろうか。そんな問い掛けが何度もされるが、結局は科学の勝利で終わる。すなわち、アマルには奇跡を起こしたり呪いを掛けたりするような特殊能力は備わっておらず、サナルやニキターが見た怪物も幻覚であった。アマルは薬品によってサナル、フレヤー、ニキターなど教団の脅威となる者たちに幻覚を見せ、彼らに死を招いてきたのだった。だが、ニキターと相棒ジョリーの活躍によってその手口が露呈し、アマルは信者たちによって袋だたきに遭う結末になっている。ホラー映画ながら幽霊や怪物などを存在するものとして扱わない手法はインドで昔からよく見られるものだ。
おそらくシリーズ化を意識して撮られた作品である。IRCのメンバーであり科学しか信じないニキターが、迷信によって社会に不安を広めたり不当な利益を得ていたりするペテン師たちの正体を暴くのが毎回のお約束になるはずだ。ただ、「Nikita Roy」は大コケしてしまっており、シリーズ化は望めそうにない。
ただ、決してつまらない映画ではなかった。筋書きは悪くなかったし、怪物を表現するCGがチープだったことを除けば、技術的な欠点も見当たらなかった。さらに、俳優たちの演技も良かった。主演ソーナークシー・スィナーは一皮剥けた大人の女性を演じており、成長を感じたし、教祖アマルを演じたパレーシュ・ラーワルも貫禄の演技を見せていた。アルジュン・ラームパールは多少オーバーアクティング気味であったが、ホラー映画なので許容範囲内であろう。「Murder Mubarak」(2024年)などに出演のスハイル・ナイヤルはジョリー役を演じていたが、当初は絶対こいつが怪しいと思っていた。結局最後までいい奴で、疑いはお門違いであったが、観客に怪しいと思わせるだけの引っ掛けができるくらいの存在感を発揮できていたのは彼にとってプラスだ。
「Nikita Roy」は、ソーナークシー・スィナーが兄クシュ・スィナーの監督の下、迷信撲滅のために活動する女性作家役を演じた、幽霊などが登場しないタイプのホラー映画である。悪くはなかったのだが、全体的にスケールが小さく、不必要に急ぎ足になってしまっていた印象を受けた。続編を匂わせる終わり方であったが、興行的に失敗しているので、シリーズ化はされないだろう。悪くはない映画だが、無理して観る必要はない。
