Hum Dil De Chuke Sanam

4.0

 今日は午後6時からスィリー・フォート・オーディトリアム2にて「ミモラ」の試写会があった。「ミモラ」とは原題「Hum Dil De Chuke Sanam」という1999年6月18日公開のインド映画で、2002年4月27日(土)から日本で一般公開される作品である。今日は一足早くデリー在住の日本人を対象に試写会が行われることになっていた。会場は僕の家から歩いてすぐのところだから行かない手はない。一応初めて行く場所だったので、1時間前に家を出た。

 スィリー・フォート・オーディトリアム2は僕の家から歩いて15分ほどの場所にあった。日本人だけでなく、インド人も多く詰め掛けていた。と言っても一般のインド人ではなく、どうも日本語を勉強している学生が多かったように思えた。日本人は駐在員の奥様系の人々が多かったが、思ったほど多くはなかった。在インド日本大使館の平林大使も来ていた。初めて見たかもしれない。この映画は日印国交樹立50周年記念の看板を背負った映画なので、この試写会も大きなイベントと受け取られていたようだ。「Aaj Tak」や「ZEE TV」などのテレビ局もいくつか来ていて大使や観客にインタビューしていた。僕は大使のすぐ裏にいたので、もしかして僕の馬鹿面がインドのブラウン管に映ってしまったかもしれない。僕は幸か不幸かインタビューされなかった。インタビュアーとなるべく目を合わせないようにしていたのだ。僕がインド映画について何か話したらオタクぶりが明らかになってしまうところだった。

 「ミモラ」日本公開の推進役であるインド・センターのインド人や大使の簡単な挨拶の後、映画が始まった。オーディトリアム2は多目的用のイベント会場で、あまり映画上映用に特化されておらず、音の質があまりよくなかった。

 「ミモラ」はサルマーン・カーン、アジャイ・デーヴガン、アイシュワリヤー・ラーイ主演のロマンス映画である。日本語字幕付きだったのでかなり楽に内容理解ができた。今までいくつものインド映画を字幕なしで見てきたが、やはり日本語字幕があると細かい部分までよく分かる。字幕なしで100%理解できるようになる日は来るのだろうか?以下にあらすじを書くが、これから日本公開される「ミモラ」を見る予定でストーリーを知りたくない人は飛ばしてもらいたい。ちなみに僕がこの映画を観るのは2回目である。

 ナンディニー(アイシュワリヤー・ラーイ)は高名な音楽家パンディト・ダルバール(ヴィクラム・ゴーカレー)の長女として生まれ、伝統的な大家族の中で無邪気に成長した。そんなある日、ダルバールに弟子入りするためイタリアからサミール(サルマーン・カーン)という青年がやって来た。サミールはインド人の父とイタリア人の母を持ち、陽気で破天荒な性格だった。ナンディニーは最初サミールと対立するが、サミールが音楽家一家に自然に溶け込んで行く過程で次第に2人は惹かれあい、恋仲になってしまう。ところがそれは禁断の恋だった。

  実は親の間でナンディニーと青年弁護士ヴァンラージ(アジャイ・デーヴガン)の結婚の計画が進んでいたのに加え、恋愛結婚など認められるはずもない伝統的な家族だった。ナンディニーとサミールの仲は遂にダルバールの知るところとなり、サミールは破門、ナンディニーは強引にヴァンラージと結婚させられてしまう。

  ところがヴァンラージは口下手だが誠実な青年だった。結婚後も心を開かないナンディニーを見て不審に思い、その心の奥にある一人の男の存在が原因であることを突き止める。そしてヴァンラージはナンディニーをその男に引き合わせるためにイタリアへ一緒に行くことを決意する。

  舞台はイタリアへ。ヴァンラージとナンディニーはほとんどない手掛かりを元にイタリアを探し回る。その内にナンディニーはヴァンラージの自分に対する愛の大きさを知り、次第に気持ちが動き始める。遂にナンディニーはサミールと再会を果たすことができるが、そのときナンディニーはヴァンラージを一生の伴侶とすることを決意していた。そしてサミールもナンディニーをヴァンラージの元へ行かせる。こうしてヴァンラージとナンディニーは名実共に夫婦となったのだった。

 前半は見ていて恥ずかしくなるようなコテコテのインド映画的展開で、これじゃあ多くの日本人に堂々と見せるのは気が引けるなぁと思っていたのだが、確かに音楽と踊りは素晴らしいし、いかにもインドチックな装飾、衣装、セットは日本公開するのに向いているかもしれない。後半の展開は最近の恋愛ドラマを見慣れた若者たちに「こう来るか」と唸らせるものはあると思う。

 やはり恋愛結婚よりもお見合い結婚を正当妥当な結びつきとするのがインド映画の大前提みたいだ。最初はナンディニーは恋愛結婚の方向へ向かっていたのだが、急転直下、強引にお見合い結婚をさせられてしまう。しかし恋愛を忘れらず、ナンディニーは恋愛結婚を求めるようになる。ここから普通だったらヒロインは恋愛結婚を勝ち取ってハッピーエンドという脚本が思いつくと思うのだが、それを最後の最後でやっぱりお見合い結婚でハッピーエンドにしてしまったところがすごいと思う。この映画の最後には賛否両論があり、サミールと結びついた方がよかったという意見と、ヴァンラージと結びつく結末でよかったんだという意見がある。僕はじっくりとこの映画を観た結果、やはりヴァンラージと結びついた方がしっくり来ると思った。サミールと結びついてしまったら、インドの道徳に反するし、いかにも欧米または日本的な恋愛ドラマのこじんまりとした結末に落ち着いてしまうからだ。

 僕の予想ではこの映画は日本では大ヒットすることはないと思うが、久々のインド映画一般公開ということもあり、健闘を祈っている。いずれインド映画が1ヶ月に1本くらいのペースで日本一般公開されるようになる時代が来れば、僕も安心して日本に腰を落ち着けることができるのだが・・・(?)。