Khichdi 2: Mission Paanthukistan

2.5
Khichdi 2: Mission Paanthukistan
「Khichdi 2: Mission Paanthukistan」

 「Khichdi」はインドのエンタメTV番組Star Plusで放映されたコメディードラマのシリーズであり、今まで「Khichdi」(2002-04年)、「Instant Khichdi」(2005年)、「Khichdi Returns」(2018年)と作られてきた。さらに、TVドラマから派生して映画「Khichdi: The Movie」(2010年)も作られた。エキセントリックなグジャラーティー一家、パーレーク家の奇妙奇天烈な言動を主体としたドタバタ劇である。2023年11月17日公開の「Khichdi 2: Mission Paanthukistan」は「Khichdi」シリーズの映画第2弾となる。

 シリーズを通してアーティシュ・カパーリヤーが監督をしており、この「Khichdi 2」も彼が撮っている。メインキャストもお馴染みの面々だ。アナング・デーサーイー、スプリヤー・パータク、ラージーヴ・メヘター、ヴァンダナー・パータク、ジャムナーダース・マジェーティヤー、キールティ・クルハリが演じている。さらに、アナント・ヴィダート・シャルマー、リヤーンシュ・ヴィール・チャッダー、フローラ・サーイニーなどが出演している他、プラティーク・ガーンディー、ファラー・カーン、キクー・シャールダー、パレーシュ・ガナートラーが特別出演している。

 ちなみに劇中でヒマーンシュを演じるジャムナーダース・マジェーティヤーは「Khichdi」シリーズのプロデューサーでもある。ファラー・カーンは前作「Khichdi」に続く特別出演だ。ファラー・カーンがどういう縁でこのシリーズに顔を出し続けているのかは不明である。

 1947年8月、インドとパーキスターンの他に英領インドから独立した国があった。それがパーントゥーキスターンであった。

 インドの架空の諜報機関トーリー・インテリジェント・エージェンシー(TIA)は、パーントゥーキスターンの独裁者イマーム・カーケートゥク(ラージーヴ・メヘター)に囚われた科学者を救出しようとしていた。TIAのエージェント、クシャル(アナント・ヴィダート・シャルマー)は、カーケートゥクの顔がパーレーク家のプラッフル(ラージーヴ・メヘター)にそっくりであることに注目する。クシャルはパーレーク家をドキュメンタリー映画の撮影班に扮装させパーントゥーキスターンに送り込む。

 パーントゥーキスターンに着いたトゥルスィーダース(アナング・デーサーイー)、その息子プラッフル、その妻ハンサー(スプリヤー・パータク)、その弟ヒマーンシュ(ジャムナーダース・マジェーティヤー)、そしてトゥルスィーダースの亡き息子バラトの寡婦ジャイシュリー(ヴァンダナー・パータク)は、早速カーケートゥクに会いに行く。プラッフルだけは撮影機材の入った箱の中に隠れていたが、カーケートゥクの腹心ワズィール(リヤーンシュ・ヴィール・チャッダー)は不審に思っていた。カーケートゥクの妻グルカンダー(フローラ・サーイニー)は祖父の看病のためロンドンにいた。

 作戦では、ヒマーンシュがカーケートゥクに睡眠薬を飲ませ、プラッフルがカーケートゥクに成り代わって科学者を救出することになっていた。ところがカーケートゥクは何者かに誘拐されてしまう。計画の狂いはあったものの、カーケートゥクがいなくなったことには変わりがないため、プラッフルがカーケートゥクに成り代わり政治を行った。パーントゥーキスターンの国民はカーケートゥクの圧政に苦しんでいたが、プラッフルが次々に厳しいルールを撤廃したため、国民は大喜びした。

 ところがパーレーク家を怪しんでいたワズィールは彼らの正体を知ってしまう。ジャイシュリーがワズィールの頭を殴って気絶させたため事なきを得たが、捕縛されたワズィールはいつの間にか逃げ出し、グルカンダーを連れて戻っていた。ところが実はワズィールとグルカンダーは暴君カーケートゥクに対して謀反を画策しており、カーケートゥクを誘拐したのも彼らの差し金だった。ワズィールとグルカンダーはパーレーク家に協力することになる。

 ワズィールに監禁されていた本物のカーケートゥクは逃げ出し、プラッフルに扮装して戻ってくる。そして隙を見てパーレーク家、ワズィール、グルカンダーを捕らえ、形勢逆転する。カーケートゥクは科学者を呼び出し、彼の開発したロボット(キクー・シャールダー)を召喚する。ところが民衆が蜂起し、カーケートゥクは殺される。ロボットはパーレーク家抹殺の指令を受けており、科学者を連れて逃げ出した彼らを追いかける。だが、パーレーク家はロボットをも出し抜き、TIAによって送られた脱出用のヘリコプターに乗って去って行く。

 「Khichdi」シリーズは基本的にムンバイー在住のグジャラーテーィー一家パーレーク家の自宅内で起こるドタバタ劇を描いたTVドラマ及び映画である。ところがこの「Khichdi 2」はパーレーク家のメンバーがミッションを負って「パーントゥーキスターン」という架空の国に潜入するというスケールの大きなストーリーになっていた。パーントゥーキスターンはパーキスターンのパロディーのように感じられるが、パーキスターンとは別の国であり、カーケートゥクという独裁者によって恐怖政治が行われているという設定である。カーケートゥクは、最強のロボット兵器を開発した科学者を誘拐し、彼に大量のロボットを製造させ、世界征服をしようとしていた。パーレーク家に与えられたミッションは、その科学者の救出であった。

 ところがスケールが大きいのはそこまでで、そのストーリーを具現化するための美術、VFX、演出などはTVのコント劇と何ら変わらないレベルのチープな代物だった。正直いって2020年代に映画館で鑑賞するような出来ではない。

 なまじっかスケールが大きくなったことで、通常の「Khichdi」シリーズにあるような不条理なやり取りが場違いに感じられるようになり、無理矢理ギャグを押し込んでいるようなアンバランスさが生じてしまっていた。おそらくその安っぽさや無理矢理感もギャグの内なのだろうが、前作にあった切れ味の良さは失われてしまっていた。

 レギュラーメンバーの演技については申し分なかったが、それ以外の俳優たちは素人レベルであった。特別出演のファラー・カーンも手を抜いていたように感じた。彼女の本業はコレオグラファーであり、「Om Shanti Om」(2007年/邦題:恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム)などのヒット作を送り出した売れっ子監督でもあるが、彼女は過去に「Shirin Farhad Ki Toh Nikal Padi」(2012年)で俳優にも挑戦している。だから演技もできるはずだが、今回の彼女の演技には気合いが入っていなかった。

 「Khichdi 2: Mission Paanthukistan」は、人気TVドラマ「Khichdi」シリーズから派生した映画第2弾である。しかしながらスケールを大きくしすぎたためにシリーズが持っていたファミリー・コメディーの良さが失われ、粗が目立つ結果となってしまった。無理して観る必要はない。