
2025年12月5日公開のテルグ語映画「Akhanda 2: Thaandavam」は、シヴァ神の化身アカンダを主人公にしたファンタジー・アクション映画「Akhanda」(2021年)の続編である。やはりアカンダが大暴れし、今度は中国人民解放軍の侵略を阻止する活躍を見せる。キャラクターやストーリーのつながりのあるタイプの続編なので、本作を楽しむに当たって前作の鑑賞が前提となる。
監督は前作と同じくボーヤパーティ・シュリーヌ。音楽監督もタマンSが続投。そしてもちろん、主演もナンダムーリ・バーラクリシュナで変わらず。今回も彼は一人二役である。
他に、アーディ・ピニシェッティ、サムユクタ、ハルシャーリー・マロートラー、ヴィジ・チャンドラシェーカル、シャーシュワタ・チャタルジー、サンゲイ・ツェルティム、サルヴァダマン・D・バナルジー、カビール・ドゥハーン・スィン、プールナー、シャラト・ローヒトアーシュワ、タルン・カンナーなどが出演している。
キャストで特筆すべきは、「Bajrangi Bhaijaan」(2015年/邦題:バジュランギおじさんと、小さな迷子)でムンニーを演じていたハルシャーリー・マロートラーが大人になって再デビューしていることだ。彼女は完全なる北インド人だが、テルグ語映画でカムバックすることになった。ただ、子供の頃はかわいかったが、大人になったら女優としてやっていけるような感じではなくなっていた。
映画の冒頭ではガルワーン渓谷の名前が出て来て、物語への導入になっている。この地にはインドと中国の実質的な国境を成す実効支配線(LAC)が通っている。ここでは2020年6月15日にインド軍と人民解放軍の間で衝突が起き、双方に死者が出る事件が起きた。また、イラーハーバードのマハークンブメーラー祭も序盤で描かれるが、これは2025年にあった。ただ、ジャナニーの成長を見ると時間の流れが一致していない。
ヒマーラヤ山脈の奥深く、育ての師匠のもとに戻ったアカンダ・ルドラ・スィカンダル・ゴーラー(ナンダムーリ・バーラクリシュナ)は、さらなる力を解放するために「アシュタ・スィッディ・サードナー」と呼ばれる苦行を始める。アナンタプルでは州議会議員になったムラリー・クリシュナ(ナンダムーリ・バーラクリシュナ)が麻薬密輸組織を壊滅させる。
一方、チベットでは中国人民解放軍のシャン・リー将軍(サンゲイ・ツェルティム)がチャン元将軍(シャーシュワタ・チャタルジー)と結託してインドへの侵略を画策していた。チャン元将軍は、インドの強みは宗教であると見出し、インド人から信心を取り除く作戦を提案する。そして、リー将軍にインドの野党の党首アジト・タークル(カビール・ドゥハーン・スィン)を引き合わせる。
タークルはマハークンブメーラー祭でガンガー河にウイルスを散布し、巡礼者たちを病気にする。そして、タークルは人々の前で演説し、「神はいない」と主張する。こうして、全国各地で宗教を破棄し寺院を閉鎖する動きが広まる。
ヒマーチャル・プラデーシュ州にある国防研究開発局(DRDO)ではアルチャナー・ゴースワーミー(サムユクタ)の指揮の下、ワクチンの開発が急ピッチで進められる。DRDOの有望な研究者だったジャナニー(ハルシャーリー・マロートラー)はワクチン開発に成功するが、タークルの弟アジャイの襲撃を受ける。DRDOの局員や研究者たちは惨殺されるが、ジャナニーだけはワクチンを持って逃げ出すことに成功する。ジャナニーは雪の中を逃げ惑うが、やがてアジャイに追いつめられてしまう。だが、そのとき苦行から目覚めたアカンダが現れ、アジャイを殺してジャナニーを救う。そこへタークルが駆けつけ、アジャイの遺体を発見する。アカンダをライバル視する呪術師ネートラ(アーディ・ピニシェッティ)が現れ、タークルに対し、彼の父親を殺したのはアカンダだと吹き込む。
アカンダはジャナニーを連れて近くの村を訪れる。その村では寺院が捨て置かれていたが、アカンダが人々の心に信仰心を蘇らせる。この村でネートラの襲撃を受けるが、アカンダは撃退する。だが、アナンタプルでは、アカンダの帰りを待ちわびていた母親ダラニー(ヴィジ・チャンドラシェーカル)が息を引き取る。その知らせを受けたジャナニーはアカンダに訃報を知らせる。アカンダは神通力を使ってアナンタプルに現れ、母親の葬儀に参加する。
印中国境地帯ではリー将軍とチャン元将軍がインド侵略の準備を進めていた。そこへアカンダが現れ、人民解放軍を一網打尽にし、リー将軍とチャン元将軍を殺す。インドではワクチンの大量生産が開始され、ウイルスに感染された人々が助かる。
前作はアーンドラ・プラデーシュ州ラーヤラスィーマー地方を舞台にしたコテコテのテルグ語映画であった。そのヒットを受けて作られた続編「Akhanda 2: Thaandavam」では世界観が拡大され、汎インド映画化することになった。それは北インド人を起用したキャストにも現れているし、中国人が敵になったりヒマーチャル・プラデーシュ州が主な舞台になったりしている点からも分かる。そして、主人公アカンダはインドとヒンドゥー教を救うという大仕事をやってのける。
実は劇中で敵が「中国」「中国人」と明示はされていないのだが、「チベット」という地名は出て来るので、インド侵略を狙う敵勢力は人民解放軍と考えて差し支えないだろう。インドを侵略するにあたって彼らは「バガヴァドギーター」を通してインドを研究し、宗教こそインドの強みだと結論付ける。そして、インドをバラバラにするためにインド人の心から神様への信仰を排除しようとする。着想は非常に面白い。
また、インドの歴史をひもとくと、インドが外敵の侵略を許したときには必ず内通者がいたということも分かった。そこで敵役のリー将軍やチャン元将軍が白羽の矢を立てたのが、野党の政治家タークルであった。タークルはマハークンブメーラー祭に参加するためにイラーハーバードに集まった人々をウイルスに感染させる。これはもちろん新型コロナウイルスを意識しているだろう。そして、タークルは、一大宗教行事で人々が病気になったことを根拠に「神はいない」と宣言するのである。このひとつの事件だけでインド人が信心をやめてしまうというのは考えにくいのだが、映画だからよしとしよう。
「Akhanda 2: Thaandavam」にはインド首相も登場する。近年のインド映画では首相が登場すると必ずナレーンドラ・モーディー首相に似せてあるが、この作品でサルヴァダマン・D・バナルジーが演じたアーディティヤ・ラーム・バガトを名乗る首相はそれほどモーディーっぽくなかった。だが、ヒンドゥー教徒であることは間違いなく、中国共産党からの挑戦を受けることで、自然とヒンドゥー教の保護者的な立場になっていた。
ただ、インドを中国からの脅威から守り、人々の心に神を信じる心を蘇らせるのは首相ではなくシヴァ神の化身アカンダである。「アシュタ・スィッディ・サードナー」と呼ばれる苦行を完了し、前作での自身を超える神通力を手に入れたアカンダは、単身人民解放軍と対峙し、圧倒的な力で壊滅させる。基本的には「Akhanda 2: Thaandavam」はアカンダのこの無双状態を楽しむ映画である。アカンダがあまりに強いので、スーパーヒーロー映画と呼んでも問題ない。
前作では、ナンダムーリ・バーラクリシュナが一人二役で双子の兄弟を演じていながら、この一人二役がストーリーにあまり生かされていないと感じた。その不満は本作にも共通していた。アカンダは縦横無尽の活躍をするが、バーラクリシュナが演じたもう一人の役柄ムラリー・クリシュナはやはりサイドストーリー程度の取り上げられ方であった。ムラリーと共に暮らす母親ですらも、ムラリーを脇に置いてアカンダの帰りを待ちわびていた。その執着振りはムラリーがかわいそうになるくらいだった。結局、ムラリーの存在が「Akhanda」シリーズの足を引っ張ってしまっている。本来ならばアカンダのみに集中していた方がもっとすっきりしたストーリーになっていたことだろう。
「Akhanda 2: Thaandavam」は、ローカル色の強かった前作「Akhanda」を一気に汎インド映画化し、全インド的な成功を狙った作品である。ただ、話が大きくなりすぎたことや宗教に触れたことなどが嫌われたのか、興行的には大失敗に終わった。前作の成功自体が、コロナ禍中の公開という特殊事情もあって過大評価だったと感じていたので、続編の失敗は予想できない事態ではなかった。それでも、インド全体で観察される、宗教を題材にしたファンタジー・アクション映画というトレンドを象徴する作品のひとつであることには変わりない。
