Luv Ki Arrange Marriage

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Luv Ki Arrange Marriage
「Luv Ki Arrange Marriage」

 2024年6月14日からZee5で配信開始した「Luv Ki Arrange Marriage(ラヴのお見合い結婚)」は、インド映画の十八番、結婚を巡るラブコメ映画である。

 監督はイシュラト・R・カーン。過去にはヒンディー語映画界で多くのコメディー映画をヒットさせてきたアニース・バーズミー監督などの助監督を務めており、「Guthlee Ladoo」(2023年)で監督デビューした。主演は「Sonu Ke Titu Ki Sweety」(2018年)のサニー・スィンと「Tiku Weds Sheru」(2023年)のアヴニート・カウル。他に、アンヌー・カプール、スプリヤー・パータク、ラージパール・ヤーダヴ、スディール・パーンデーイ、ムシュターク・カーン、パリトーシュ・トリパーティーなどが出演している。

 マディヤ・プラデーシュ州オールチャー在住のラヴ(サニー・スィン)は、父親プレーム(アンヌー・カプール)がいい年になっても女好きが治らず困っていた。プレームの妻は既に亡く、彼は近所の人妻たちを侍らせていた。プレームには瓜二つの姉妹プレーマー(アンヌー・カプール)がいた。プレーマーはラヴのお見合い相手を探し出してきた。プレームはラヴ、プレーマー、プレーマーの夫ミシュラー(ムシュターク・カーン)を連れてボーパールまで行き、相手の家を訪れる。

 ラヴのお見合い相手はイシカー(アヴニート・カウル)といった。イシカーは母親のスプリヤー(スプリヤー・パータク)の手に負えないほどのお転婆娘だった。つい最近も恋人のティトゥー(パリトーシュ・トリパーティー)と駆け落ち結婚しようとしたが途中で気が変わって帰ってきてしまっていた。ラヴとイシカーは初対面から反りが合わなかった。この縁談は破談となった。

 ところがちょうどそのときボーパールで暴動が発生し、ラヴの家族はイシカーの家に暴動が収まるまで滞在することになった。この間にラヴとイシカーの心は通じ合う。だが、それ以上にプレームとスプリヤーの間に恋が芽生えてしまった。実はこの二人は幼馴染みで、しかも初恋の相手同士だった。子供の頃からスプリヤーに片思いし、彼女の家に通い続けていたピャーレー(ラージパール・ヤーダヴ)は嫉妬する。

 父親がスプリヤーと結婚しようとしていることを知り、ラヴはあの手この手を使ってその結婚を阻止しようとする。だが、母親の幸せを第一に考えるイシカーは、それを妨害しようとするラヴに反感を感じ、彼を拒絶する。そして、改めて縁談を持ってきたティトゥーとの結婚を決めてしまう。

 ラヴはピャーレーなどと結託して、プレームと瓜二つのプレーマーをプレームに変装させ、スプリヤーがプレームに幻滅するように仕向ける。それはうまく行くが、ラヴは自分の行動に罪悪感を感じ、スプリヤーに対し全てを打ち明ける。こうしてプレームとスプリヤー、ティトゥーとイシカーの結婚式が同時に行われることになった。だが、プレームとスプリヤーは婚姻の儀式直前に仲違いする。ラヴとイシカーは二人を仲直りさせようとするが、実はそれは演技だった。プレームとスプリヤーは、実は今でも愛し合っていたラヴとイシカーの結婚を後押しする。ティトゥーはイシカーをラヴに譲り去って行く。

 赤塚不二夫のギャグ漫画「天才バカボン」に似て、主人公ラヴよりもその父親プレームの方に強烈な個性があり、それで成立しているコメディー映画であった。プレームは既に50代半ばを過ぎているにもかかわらず女好きが治っておらず、近所の人妻たちにちょっかいを出しては迷惑を掛けている。演じるのは、コミックロールに定評のあるアンヌー・カプールだ。面白くないはずがない。さらにはコメディアン俳優ラージパール・ヤーダヴなども出演している。悪くない布陣であった。

 アンヌーは今回、何気に一人二役を演じている。プレームと、その姉妹プレーマーの役だ。瓜二つという設定になっていたため、彼が一人でプレームとプレーマーを演じていたが、終盤にプレーマーがプレームの振りをするという場面があり、演技力が試される。実力のあるアンヌーが起用された訳がこのときよく分かった。

 アンヌーやラージパールなどの尽力のおかげでコメディーシーンにはクスッと笑えるものが多い。しかしながら中盤以降の展開が無茶苦茶で、筋が通っていない。まず、当初は馬が合わなず破談になったラヴとイシカーが一転して恋に落ちる部分が非常に雑であった。そのためにロマンス映画としてはかなり弱い作品になっていた。イシカーの母親スプリヤーとプレームの結婚を止めようとラヴたちが暗躍するシーンになると支離滅裂になり、シーンとシーンのつながりが分からなくなる。これは世に出してはいけない映画であった。

 ヒロインのアヴニート・カウルは現在売り出し中の女優だ。作品自体は残念な出来であったが、彼女の存在はフレッシュな印象を与えた。作品に恵まれれば伸びていきそうな女優である。

 「Luv Ki Arrange Marriage」は、優秀なコメディアン俳優たちがいい仕事をしているために何とか笑える映画になっていたが、ストーリー自体が支離滅裂であるため、鑑賞後は狐につままれたような気分になる。とても映画館で上映できる作品ではないが、だからといってOTTでの配信が許されるわけでもない。お勧めできない映画である。