Fukrey 3

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Fukrey 3
「Fukrey 3」

 2023年9月28日公開の「Fukrey 3」は、「Fukrey」(2013年)、「Fukrey Returns」(2017年)と続くコメディー映画「Fukrey」シリーズの最新作だ。ストーリー上のつながりがある続編である。

 監督は前作、前々作に引き続きムリグディープ・スィン・ラーンバー。プロデューサーも変わらずリテーシュ・スィドワーニーとファルハーン・アクタル。ただしキャストには変化がある。「Fukrey」シリーズでは4人の若者が主人公だったが、今回はアリー・ファザルが撮影スケジュールの関係で主演から外れており、カメオ出演のみになっている。従って、キャスティングされているのはプルキト・サムラート、ヴァルン・シャルマー、マンジョート・スィンのみだ。それに加えて前作、前々作に出演していたパンカジ・トリパーティーとリチャー・チャッダーも起用されている。他に、マヌ・リシ、アミト・ダワンなどが出演している。

 舞台はデリー。ボーリー・パンジャーバン(リチャー・チャッダー)は州議会選挙に出馬することになり、ハニー(プルキト・サムラート)、ラーリー(マンジョート・スィン)、チューチャー(ヴァルン・シャルマー)を呼び寄せる。彼らはボーリーの選挙活動を助けるが、ボーリーに勝たせてはいけないと考えていた。ボーリーは水マフィア撲滅を公約に掲げるが、実は裏で水マフィアのディーングラー(アミト・ダワン)とつながっていた。ディーングラーはボーリーを水大臣にしてさらに水の支配力を強めようと画策しており、彼女に多額の資金を投じた。

 ボーリーの選挙活動を助けている内に有権者からチューチャーが人気になる。そこでハニーたちはチューチャーをボーリーの無所属の対立候補として立候補させる。選挙前の観測ではチューチャーに有利に進んでいた。そこでボーリーはハニーたちを罠にはめる。ボーリーのボディーガード、エディーとボビーはハニーたちをケープタウンに呼び寄せる。彼らの叔父シュンダー・スィン・アフルワーリヤー(マヌ・リシ)はダイヤモンド鉱を所有していたが、なかなかダイヤモンドが見つからなかった。そこで、チューチャーが持っている特殊能力「デジャ・チュー」を使ってダイヤモンドを掘り当てようとしたのである。大儲けの話にまんまと乗ったハニーたちはチューチャーがデジャ・チューを見るのを待ち続けた。だが、なかなかデジャ・チューは起こらない。その内10日が過ぎてしまった。ようやく彼らはボーリーの罠だったことに気付く。そのとき、チューチャーがデジャ・チューを見る。それに従ってチューチャーが地面を掘ると、ダイヤモンドが出て来た。チューチャーに片思いしていた、シュンダーの姪モンバサは、チューチャーと結婚したいと言い出すが、彼らは逃げ出す。その際にチューチャーはダイヤモンドを呑み込んでしまう。

 彼らはケープタウンの廃墟に逃げ込むが、そこでハニーとチューチャーが電気ショックを受ける。そのおかげで、ハニーの汗とチューチャーの尿を水と混ぜ合わせることでガソリンになることを発見する。どうやらチューチャーの腹の中にあるダイヤモンドが作用しているようだった。

 デリーに舞い戻ったハニーたちは、自分たちで作り出したガソリンを安価で貧しい人々に売り、支持を集める。その秘密を知ったボーリーは、チューチャーと結婚する。さらに秘密はディーングラーにも知られてしまう。ディーングラーはハニーたちを誘拐し、彼らから汗や尿を絞り取って大量にガソリンを作り出し大儲けしようとする。だが、ディーングラーによって水を止められたデリーの人々が怒ってディーングラーの経営するウォーターパークになだれ込み、ディーングラーをリンチする。

 助け出されたチューチャーは選挙運動を続け、州議会議員になる。ところが、ガソリンを作り出す能力は失われていた。

 「Fukrey」シリーズは、ヴァルン・シャルマー演じるチューチャーの暴走で回っているシリーズだ。チューチャーには「デジャ・チュー」と呼ばれる予知能力があり、それを使って大儲けしようというのがシリーズに共通した流れになっている。「Fukrey 3」でもデジャ・チューは出て来たが、今回新たに加わったのが、ガソリンを作り出す能力である。ただし、チューチャーの尿とハニーの汗を水と混ぜ合わせる必要があり、彼一人ではできない。ケープタウンで二人が高圧電流を受けたことでこの特殊能力が備わったということになっている。

 汗、尿、水からガソリンができるという突拍子もないアイデアは、おそらく昨今の物価高、原油高から端を発しているだろう。物価や原油価格の高騰は庶民の生活を直撃しており、ガソリンを安価に生み出せるという設定は魅力的に映る。「Fukrey 3」は選挙の物語でもあり、この特殊能力は選挙を有利に戦うために使われていた。

 もうひとつの主題は水であった。デリーには水道が通っていない地域がある。そこに住む人々は定期的に訪れる水タンカーから給水を受けている。水タンカーの運営は水道局が担っているが、民間も水タンカーを供給しており、それを牛耳ることで貧しい人々の生活を支配しているのが水マフィアである。選挙に立候補したボーリーは、水マフィアと結託して水タンカーを巡る利権を強化し、大儲けしようとしていた。

 お馬鹿なコメディー映画ながら、水やガソリンという生活に欠かせない事物を巡る問題を取り上げた点は面白い。しかしながら、コメディー映画としてテンポが悪く、チューチャーにコメディー要素が偏りすぎで、その他のメンバーの個性が活かされていない点がマイナスだった。ロマンスの要素もかなり雑だ。チューチャーはボーリーに片思いをし、モンバサはチューチャーに片思いをしていた。チューチャーはボーリーと結婚するが、ボーリーとしてはガソリンが狙いだっただけで、チューチャー自体はどうでもよかった。この辺りの人間関係は発展させられずに終わっていた。このように詰めが甘い部分がいくつもある映画だ。ヴァルン・シャルマーやパンカジ・トリパーティーの好演もあって、散発的に笑えるシーンはあるのだが、全体として満足感のあるコメディー映画にはなっていなかった。

 選挙に立候補したボーリーが、有権者の支持を集めるため、トイレ掃除をするシーンがあった。これは、スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)運動を始めたナレーンドラ・モーディー首相の政策を反映している。近年では政治家がトイレ掃除をして見せたりして有権者にアピールをすることが出て来た。

 「Fukrey 3」は、人気コメディー映画「Fukrey」シリーズの第3作だ。相変わらずヴァルン・シャルマーの独壇場で話が進み、笑えるシーンもあるが、全体的なまとまりは悪かった。興行的には成功したようだが、無理して観る必要のない映画である。