Maurh (Punjabi)

2.5
Maurh
「Maurh」

 2023年6月9日公開のパンジャービー語映画「Maurh」は、英領時代に実在した盗賊ジェオナー・マウルの伝記映画である。といってもパンジャーブ地方限定の英雄であり、全国的に知られている人物ではないはずである。Zee6でヒンディー語吹替版が配信されていたため、オリジナルのパンジャービー語版ではなくヒンディー語版の方を鑑賞した。

 監督はジャティンダル・マウハル。主演はアミー・ヴィルク。パンジャービー語映画界のトップスターの一人で、「Bhuj: The Pride of India」(2021年)や「83」(2021年)などのヒンディー語映画にも出演経験がある。他に、デーヴ・カロウド、ヴィクラムジート・ヴィルク、アミーク・ヴィルク、クルジンダル・スィン・スィッドゥー、マーク・ランダーワー、ナイクラー・カウル、リチャー・バットなどが出演している。

 時は19世紀、パンジャーブ地方では、英国人と地主による横暴が続いており、貧しいジェオナー・マウル(アミー・ヴィルク)の家族や村の人々は苦しんで生活していた。ジェオナーの兄キシュナー(デーヴ・カロウド)は耐えることができず、盗賊ジャイマル(クルジンダル・スィン・スィッドゥー)に誘われて自身も盗賊になる。キシュナーは地元の有力者アハマド・ドゥッガル(ヴィクラムジート・ヴィルク)と義兄弟の契りを結び、富裕者から金品を強奪して貧しい人々に分け与えた。

 キシュナーは、妹ビシュニー(リチャー・バット)の結婚を邪魔した悪党を殺すが、彼は王の従兄弟だった。王は英国人ジョン・ハートン(アミーク・ヴィルク)にキシュナーの逮捕を厳命する。ハートンはドゥッガルを買収し寝返らせる。裏切られたキシュナーはハートンに逮捕され、流刑になる。

 キシュナーは流刑先で死亡した。その報を受け取ったジェオナーはドゥッガルへの復讐を誓い、兄の後を追って盗賊になる。ジェオナーは英国人や権力者には立ち向かったが、貧しい人々は救済したため、救世主として崇められるようになる。一度、キシュナーは逮捕されるが、内通者の助けによって牢屋からの脱出に成功する。

 ジェオナーはドゥッガルの命を付け狙う。ドゥッガルも受けて立つが、最後にはジェオナーに殺される。ハートンは、ナイナー女神参拝に訪れていたジェオナーを包囲する。ジェオナーは崖から飛び降りる。

 冒頭に書いたようにジェオナー・マウルは実在の人物ではあるが、伝説も多いようで、彼の最期に定説はない。逮捕されて獄死したという説もあれば、逃亡中に射殺されたという説もある。この映画でも、彼の最期はナレーションによっていくつかの説が語られているだけで、彼の死を特定しようとはしていない。彼の最期がどんなものであれ、英領時代に英国人や封建領主などの権力者に立ち向かった「パンジャーブのロビン・フッド」とでもいうべき義賊であり、地元では英雄視されているようである。

 おそらく本当はもっと長いであろう映画を無理に短くしたような編集で、ぶつ切れになっている場面が散見された。銃撃戦のシーンがいくつかあったが、ただお互いに撃ち合いをしているだけで工夫がなく、単調であった。俳優たちはいい演技をしており、決して素人ではないことが分かったが、登場人物の大半がターバンをかぶっているため、顔の区別が付かなくなることがある。気になったのは、英国人オフィサーのハートンをインド人俳優が演じていたことだ。言葉のしゃべり方で英国人らしさを出そうとしていたが、どう見ても外見はインド人であり、違和感があった。白人俳優を雇う余裕がなかったのだろうか。

 「Singh is Kinng」(2008年)というヒンディー語映画でもそうだったが、スィク教徒が登場する映画には必ずターバン魂が注入される。「Maurh」でも、義兄弟の契りを交わすときにお互いのターバンを交換するという儀式が行われているのを観察でき、スィク教徒たちがいかにターバンを大事にしているのかが分かるのは面白い。

 「Maurh」は、19世紀のパンジャーブ地方で暗躍した義賊ジェオナー・マウルの伝記映画であり、パンジャービー語映画界のスター、アミー・ヴィルクなどが出演する、パンジャービー語映画としては大作感のある作品だ。ただ、完成度は高くない。無理して観る必要はない映画だ。