ヒンディー語の標準文法では、「~する」という意味の他動詞「करना」の完了分詞と、二人称代名詞「आप」に対応する命令形は以下のように不規則変化する。
原形 | 男性単数形 | 男性複数形 | 女性単数形 | 女性複数形 | 命令形 |
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करना | किया | किए | की | कीं | कीजिए |
だが、口語のヒンディー語では、以下の表のように「करना」が規則変化する現象が観察される。誤用ではあるが、市井では既に普通に通用するようになっている。
原形 | 男性単数形 | 男性複数形 | 女性単数形 | 女性複数形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
करना | करा | करे | करी | करीं | करिए |
正直いって、未完了分詞としての男性複数形「करे」と女性複数形「करीं」だけは聞き慣れないのだが、理論的にはこうなるはずということで表を埋めてある。
例えば、以下の標準ヒンディー語の文がある。
मैंने आपसे प्यार किया है। आप भी मुझसे प्यार कीजिए।
私はあなたに恋をしました。あなたも私に恋をしてください。
「करना」が2つ使われ、標準ヒンディー語の文法に従ってそれぞれ不規則変化をしているが、これが規則変化になると以下のようになる。
मैंने आपसे प्यार करा है। आप भी मुझसे प्यार करिए। 私はあなたに恋をしました。あなたも私に恋をしてください。
実は、ヒンディー語映画の台詞の中にも時々「करना」のこの口語的な変化形が出て来る。動詞の不規則変化を苦労して覚えたヒンディー語初学者がヒンディー語映画を観て、こういう規則変化を耳にすると混乱してしまうかもしれないが、最初から口語にこういう用法があると知っていれば驚くことは少ないだろう。
歌詞に「करा」が入ったヒンディー語映画の楽曲が思い付かないのだが、「करी」や、規則変化的な命令形「करिए」が歌詞に使われている曲はいくつかある。
「करी」の例として挙げられるのは、「Double Dhamaal」(2011年)の「Jalebi Bai」だ。
दीवानों ने है देख ली
देखी मेरी कारीगरी
ज़ुल्फ़ों से मैंने रात की
चेहरे से चाँदनी करी
恋に狂った人は見た
私の技を見た
髪の毛で私は夜を作った
顔から月の光を発した
また、「Taal」(1999年)の「Kariye Naa」の歌詞には、題名にもなっている通り、規則変化的な命令形「करिए」が出て来る。
करिए न करिए न
कोई वादा किसी से करिए न
करिए करिए
तो वादा फिर तोड़िए न
してはいけない
誰とも約束はしてはいけない
してしまったら
約束は破ってはいけない
「Chak De! India」(2007年)のタイトルソング「Chak De! India」の歌詞にも「करिए」が多用されている。
कुछ करिए कुछ करिए
नस नस मेरी खोले
हाय कुछ करिए
कुछ करिए कुछ करिए
बस बस बड़ा बोले
अब कुछ करिए
何かしろ 何かしろ
血が吹き出すように
ああ 何かしろ
何かしろ 何かしろ
おしゃべりはたくさんだ
さあ 何かしろ
特に「करना」のこの規則変化的な用法を多用するのはデリーやインド北西部に住む人々なので、パンジャービー語の影響と考えていいのかもしれない。