Kya Meri Sonam Gupta Bewafa Hai?

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 2021年9月10日からZee5で「Kya Meri Sonam Gupta Bewafa Hai?(僕のソーナム・グプターは不誠実なのか?)」という変わったタイトルの映画が配信開始された。監督は新人サウラブ・ティヤーギー。主演は「Panga」(2020年)に出演していたジャッスィー・ギルと、テレビドラマ女優のスラビ・ジョーティ。まだ駆け出しの若い俳優たちである。監督や主演俳優に、あまり注目する理由は乏しかったのだが、題名が思わせぶりであったために鑑賞を決めた。

 ただ、脇役陣にはまあまあ名の知れた俳優たちが揃っており、ヴィジャイ・ラーズ、スレーカー・スィークリー、アトゥル・シュリーヴァースタヴァ、ヴィバー・チッバル、ブリジェーンドラ・カーラー、ニールー・コーリーなどが出演している。

 舞台はウッタル・プラデーシュ州バレーリー。スィントゥー(ジャッスィー・ギル)は高校卒業後、父親ピンテー(アトゥル・シュリーヴァースタヴァ)の経営する店を手伝いながら無為に過ごしていた。母親スシュマー(ヴィバー・チッバル)は、スィントゥーが家を持ち、独立した店を持って、嫁をもらうことを夢見ていた。

 スィントゥーは、バレーリーで一番の美人と街中で有名なソーナム・グプター(スラビ・ジョーティー)に恋していた。ソーナムはスィントゥーに、電話番号が書かれた10ルピー札を渡し、そこから二人の交際が始まる。一方、ピンテーは妻の夢を叶えるため、高利貸しのサンジーヴ・ナーグラージ(ヴィジャイ・ラーズ)から大金を借り、スィントゥーのために家を購入する。

 スィントゥーはソーナムと結婚したがっていたが、ソーナムは、父親が反対していると言い、駆け落ち結婚を提案する。そのためにスィントゥーに5万ルピーを用意するように言う。スィントゥーが金を借りるために訪ねたのが、やはりサンジーヴ・ナーグラージであった。ところが、ソーナムは金を受け取った瞬間に行方不明となってしまう。同じようにソーナムに騙された男たちがバレーリーにはたくさんいた。

 ソーナムに裏切られ失意のスィントゥーは、紙幣に「ソーナム・グプターは不誠実だ」と書き、それをバレーリー中に流通させる。それはやがて国中のニュースとなり、ソーナム・グプターは一躍有名人となってしまう。

 あるとき、スィントゥーはソーナムが米国在住のインド人ガガン・グプターと結婚しようとしていることを知る。怒ったスィントゥーは同じ日に結婚式を挙げることを決意し、たまたま家に来ていた縁談を了承する。相手の名前は偶然ソーナムであった。一方、ガガンは「ソーナム・グプター」という名前がインドであまりに有名になってしまっていることを知って、彼女に改名を要求する。ソーナムはガガンとの婚約を破棄する。

 スィントゥーの結婚式にサンジーヴが乱入し、借金の返済を求める。ピンテーは誘拐され、結婚式は中断となる。そこへソーナムが現れ、サンジーヴに金を渡す。こうしてピンテーは解放された。スィントゥーは心を入れ替えて仕事に精を出し、ソーナムに出してもらった金を彼女に返そうとする。だが、ソーナムは受け取らなかった。代わりに彼とやり直すことを提案する。

 映画の題名にもなっている「ソーナム・グプターは不誠実か?」という問いであるが、映画を一通り観た限り、不誠実だと言わざるを得ない。彼女は「バレーリーで一番の美人」という評判を悪用して、いわゆる結婚詐欺をしており、多くの男性から金を騙し取った。その動機については、あまり明確に説明されていないのだが、彼女は海外に行きたがっており、その資金集めだったと思われる。それでも、多くの男性を騙して大金を巻き上げたことには変わりなく、彼女の行動が正当化されることはない。

 しかしながら、スィントゥーや父親が高利貸しから借りた借金を肩代わりしたことで、なぜかソーナムの株が上がったことになっており、最後はスィントゥーと結婚する方向になっていた。ソーナムがスィントゥーの家の危機を救ったからと言って、彼女がスィントゥーや他の男性たちに対して行った仕打ちが和らぐことはない、というのが大半の観客の感想ではなかろうか。ソーナム・グプターが完全に悪役としか見えないため、彼女が最後に幸せを掴むようなエンディングに容易に納得することができなかった。

 ただ、だからと言って、スィントゥーに同情できるかと言えば、そうとも言い切れない。彼は、高校卒業後、大学に行かずに、父親の仕事を何となく手伝いながら無為に過ごしている青年だった。とは言ってもチンピラではなく、信心深い純粋な男性である。しかし、自分で努力して何かを成し遂げると言った気概が全くなく、父親は店を担保にして借金してまで、息子のために家や店を用意する。あまりに甘やかされているのである。そんな男性が、バレーリーで一番の美女と結婚しようと考える方がおこがましい。結局、スィントゥーのキャラも弱いのである。

 最近、男性の性的なコンプレックスを攻める映画がちらほらある。勃起不全症候群、いわゆるEDを題材にした「Shubh Mangal Saavdhan」(2017年)、若年性脱毛症、いわゆる若ハゲを題材にした「Ujda Chaman」(2019年)と「Bala」(2019年)などが作られて来た。これは、強い女性像がもてはやされるようになった裏返しのひとつだと考えられる。「Kya Meri Sonam Gupta Bewafa Hai?」は、男性のコンプレックスを主題にした映画ではなかったが、ストーリーの中に、「小さい」というコンプレックスが出て来ていた。ソーナムに裏切られたスィントゥーは、彼女と再会したときに、自分の何がいけなかったのかと問う。すると彼女は「あなたは小さいから」と答える。スィントゥーはそれを自分の男性器が小さかったと早とちりし、男性器増大の手段を模索する。だが、実際に彼女が言いたかったのは、「あなたの脳みそは小さい」ということだった。

 ジャッスィー・ギルは今回、美女に振り回される弱々しい優男を演じていた。元々優しい性格の俳優なのか、とても板に付いていたが、今後様々な役柄に挑戦して行くことが求められるだろう。ソーナム・グプターを演じたスラビ・ジョーティは、映画女優としてのキャリアが浅い割にはかなり自信に満ちた演技をしていたが、役柄があまりよくなく、彼女の印象にプラスに働かないような気がする。

 一方で脇役陣の演技はかなり映画を盛り上げていた。スレーカー・スィークリー、ブリジェーンドラ・カーラー、そしてヴィバー・チッバルなど、主人公の両親や家族の方が目立っていたくらいである。ヴィジャイ・ラーズのマフィアじみた演技も良かった。

 ちなみに、「ソーナム・グプターは不誠実だ」と書かれた紙幣が話題となるというプロットは、インドで2016年に実際にあった事件である。以降、ソーナム・グプターという名前の女性は不誠実ということになってしまった。しかも、映画中では、ソーナムが結婚しようとした相手はグプター姓であり、結婚しても名前が変わらないというギミック付きであった。

 「Kya Meri Sonam Gupta Bewafa Hai?」は、ほぼ無名の監督と主演による、過去に実際にあった事件をベースにしたロマンス映画である。しかし、主演ソーナム・グプターの行動があまりにワルすぎて、ストーリーを受け容れることが困難である。もう少し万人受けする膨らませ方をして提示した方が良かったのではなかろうか。