ネットでインド映画を観る方法

 現在、日本には多数の動画配信サービスがあり、中には日本で過去に劇場一般公開されたインド映画などを多数配信してくれている気の利いたところもある。だが、ここで主に扱うのは、日本でまだ公開されていない、最新のインド映画を、日本にいながら鑑賞する方法である。字幕は英語のみ、もしくはなし、有料サービスが前提となり、どちらかといえばインド映画上級者向けの解説となる。インドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「OTT(Over The Top)」と呼ばれる動画配信プラットフォームを介して、映画館を経ずに直接配信される映画も多くなっており、日本にいながら最新のインド映画に触れることができるようになったが、逆にいえば、それらの作品は動画配信サービスを利用しないと鑑賞できないということでもあり、動画配信サービスで映画を鑑賞する方法を把握するのは、インド映画ファンにとって必要不可欠な時代となった。

JustWatch India

 インドでも複数の動画配信サービスが群雄割拠の状態となっており、特定の動画配信サービスでなければ視聴できない、という作品がほとんどである。つまり、ひとつの動画配信サービスで全ての作品を網羅することはできず、のめり込んでくると、複数の動画配信サービスに登録する必要性に駆られる。

 それはともかくとして、まずは視聴したい映画がどの動画配信サービスで配信されているか調べる必要がある。

 その際に役に立つのが、JustWatch Indiaである。このサイトで作品名を検索することで、どの動画配信サービスで配信されているか、また、有料か無料か、という情報が得られる。情報が古いこともあるが、概ね正確である。

VPN

 日本にいながらインド映画を鑑賞しようと思った際にもうひとつ大事なのは、適宜VPNを使うことである。VPNとはVirtual Private Networkのことで、インターネット回線を利用したプライベートネットワークのことである。VPNを使うことで、日本以外の国のサーバーを介して、その国のコンテンツへのアクセスが可能となる。なぜ大事かといえば、多くの動画配信サービスは国ごとに配信作品を変えており、日本からの通常アクセスでは視聴できるインド映画の数に限りがあることがほとんどだからである。

 多数の業者がVPNを提供している。無料のものもあるが、信頼性の高いものは有料となる。筆者の場合は、Google ChromeのAddonからの利用が便利なExpressVPNを使っている。有料サービスで、年間100ドルほどである。

インドの携帯電話番号

 インドでは、OTP(One Time Password)による認証が主流で、動画配信サービスの認証の際、OTPが携帯電話番号にSMSの形で送られることが多い。だが、その携帯電話番号は国番号+91から始まるインドの携帯電話番号である必要があり、日本の携帯電話番号ではOTPを受け取れない。インドの携帯電話番号を入手するもっとも簡単な方法はインドに行くことだが、それでもインドのSIMカードを購入する手順は他国に比べて難易度が高い。空港で購入するのがもっとも容易な方法である。また、旅行者向けに販売されているSIMカードの携帯電話番号を永続的に維持するのは難しく、使用していないとすぐに遮断されてしまう。

 ここでは、インドの携帯電話番号がなければ利用できない動画配信サービスもいくつか紹介するが、一般の日本人には利用のハードルが高いと思ってもらって構わない。

UPI

 インドで普及しているQRコード決済は総称して「UPI(Unified Payments Interface)」と呼ばれている。詳細はこちらを参照していただきたい。

 インド独自の動画配信サービスの料金を支払う際、国際的なクレジットカードが利用可能なところもあるが、インド国内で発行されたクレジットカードしか受け付けていないところの方が多い。もしインド国内発行のクレジットカードを持っていない場合、UPIでの支払いという道が残されている。UPIのアクティベーションのためにはインドを訪れる必要があるが、インドの携帯電話番号を所有し、日本からインドの動画配信サービスを利用したいと思った場合、UPIで支払うという手段があることは知っておいて損はない。

 その際は、日本でOTPを受け取るため、インドの携帯電話番号を海外ローミングしておく必要もある。大手キャリアのAirTelでは、海外ローミングのための料金がUPIで支払えることを確認済みである。


Netflix

  • https://www.netflix.com/
  • 日本語字幕/英語字幕/字幕なし
  • VPNほぼ不要/インドの携帯電話番号不要/UPI不要

 日本でも人気のNetflixは、インドにおいて主流の動画配信サービスのひとつだ。ただし、インドでは視聴者数は伸び悩んでいると聞く。日本のNetflixに登録すれば、そのままでも多数のインド映画を日本語字幕付きで視聴できる。OTT作品から過去の名作まで、品揃えも豊富である。日本でインド映画を楽しもうと思った場合、Netflixは必ず利用すべきサービスである。

 言語設定を英語にすることで、さらに多数のインド映画が表示されるようになる。だが、そうやって表示された作品には日本語字幕が付いておらず、英語字幕で鑑賞することになる。ここまでならばVPNは必要ない。

 Netflixも国によって品揃えを変えている。もちろん、インドのNetflixはインド人向けに多くのインド映画を配信している。日本からでも、VPNを介してインドなど他国のサーバーを使ってNetflixにアクセスすることで、さらに多くの作品を鑑賞できるようになることがある。とはいえ、Netflixは日本向けにもかなり多くのインド映画を配信してくれており、Netflixのみを利用するのだったら、VPNの必要性は強く感じないだろう。

 Netflixのインド映画では、日本のNetflixで鑑賞できるインド映画(ヒンディー語映画中心)をリストアップしている。

Zee5

  • https://www.zee5.com/
  • 英語字幕/字幕なし
  • VPN不要/インドの携帯電話番号不要/UPI不要

 インド独自の動画配信サービス。過去の名作から最新作まで幅広い取り揃えだが、渋い作品が多めである。ありがたいことに日本からでも海外ユーザーとして登録ができる。料金は年間100ドルほどである。VPNを使ってインドのアカウントで登録しようと思うと、インド発行のクレジットカード等が必要になる。VPNの利用は必要ない。

 過去のZee5オリジナル作品はYouTubeの公式チャンネルZEE CINEMAなどでも公式配信される。

Amazon Prime Video

 Amazon Prime Videoもインドでは人気がある。だが、Amazonアカウントは国ごとに異なるため、日本のAmazonアカウントでインドのAmazon Prime Videoを視聴することはできない。さらに、インドの携帯電話番号を持たない人はインドのAmazonアカウントを作成できない仕組みになっている。

  • https://www.amazon.jp/
  • 日本語字幕/英語字幕/字幕なし
  • VPN不要/インドの携帯電話番号不要/UPI不要

 日本のAmazon Prime Videoでも、よく探せば、過去に日本で公開された作品を中心に、いくつかのインド映画を視聴できる。過去の名作も徐々に充実してきているし、Amazonオリジナルのインド発ウェブドラマは日本語字幕付きで積極的に配信してくれている。だが、他国のAmazon Prime Videoに比べると日本のAmazon Prime Videoでは視聴できるインド映画がかなり限られている。

 Amazon Prime Videoのインド映画では、日本のAmazon Prime Videoで鑑賞できるインド映画をリストアップしている。

 Amazon Primeで配信されているインド映画を観たければ、米国のAmazon Prime Videoに登録するのがもっともいい方法だ。米国にはインド系移民が多いため、米国Amazon Prime Videoにはインド本国と比べて遜色ない数のインド映画が取り揃えられているし、大半のインド映画の配信開始時期はインド本国と同時である。米国のAmazonアカウントを作成する方法は検索すればネット上で簡単に見つかるので、そちらを参照していただきたい。料金は年間120ドルほどである。

 米国のAmazon Prime Videoで配信されているインド映画には、日本から視聴できるものとできないものがある。できないもの(「This title isn’t available in your location」と表示される)についても、VPNを使えば視聴できるようになるものがあるので、試してみる価値はある。VPNでのアクセスがはねられることもあるが、そういう場合はロケーションを変えて試すとつながることがある。

JioHotstar

 元々Disney+ Hotstarだったが、2025年にJioCinemaとDisney+ Hotstarが合併し、JioHotstarとなった。

 2016年に立ち上げられたJioCinemaはリライアンス系の動画配信サービスで、2022年にはVootを吸収して勢力を拡大した(ただし、実態はVootを運営するViacom18がJioCinemaを買収した)。Disney+は日本でもお馴染みの、ウォルト・ディズニー社による動画配信サービスである。インドでは2020年からサービスが始まった。HotstarはStar Indiaによって2015年に立ち上げられた、インド向けコンテンツを配信するサービスだったが、親会社がディズニー社に買収されたことで、Hotstarのサービスもディズニー社に吸収され、2020年にDisney+ Hotstarとなった。

 これらがひとつにまとまって、JioHotstar(以下Hotstar)となったわけである。

 Hotstarは無視できない数の最新映画を取り揃えており、動画配信サービスでインド映画を鑑賞しようと思った場合、重要なサービスである。だが、残念なことにDisney+ Hotstarもインドの携帯電話番号がなければ登録ができない。よって、通常の方法では一般の日本人には利用できないサービスになっている。

 ただし、逆にいえば、インドの携帯電話番号さえ入手でき、UPIなどで支払いを済ませれば、VPNとの組み合わせで日本からも利用が可能である。これは上で紹介したAmazon Prime Videoのインド版も同じことである。

Eros Now

  • https://erosnow.com/
  • 英語字幕/字幕なし
  • VPN不要/インドの携帯電話番号不要/UPI不要

 インド独自の動画配信サービス。2012年に立ち上げられており、インドの動画配信サービスの中では老舗である。ErosはDVDの配給会社だったこともあり、考え方もDVD寄りで、OTT作品やオリジナル作品というより、過去の名作が豊富な印象である。日本からでも登録でき、VPNを介さない通常アクセスでも全てのコンテンツにアクセスできるはずである。月額400円、年額4,000円の料金設定となっており、もっとも安価に利用できる。観たい作品があるときに月契約をして視聴し、観たい作品がなくなったら解約する、という使い方が賢い。

BMS Stream

 インドのチケット販売サイトBookMyShowが提供する動画配信サービス。BookMyShow自体は2007年創立で、この分野では老舗だが、動画配信は2021年から始まった。定額制ではなくビデオ・オン・デマンドであり、一本一本購入またはレンタルするシステム。一般的な娯楽映画よりも、映画祭サーキットの地味な映画が多い印象である。それ故にこのサイトでしか観られないものもあって、希少価値がある。BookMyShowのサイトには日本からもアクセス可能で、アカウントもEメールで作成可能だが、ストリーミング動画を視聴するためにはVPNが必要になる。また、支払いにもUPIが必要である。

Sony LIV

 ソニー・グループがインドで運営する動画配信サービス。映画よりもドラマ、ヒンディー語よりも南インド諸語に強い。VPNがなければサイトにアクセスすらできない。ヒンディー語映画の鑑賞を唯一の目的とした場合、利用価値は低い。

YouTube

 もはや改めて紹介するまでもない、世界最大手の動画配信サービス。YouTubeでは、インド映画も多数配信されている。YouTubeの無料コンテンツは基本的に全世界共通のはずであり、VPNなどを使う必要がない。ShemarooやT-Seriesなどの配給会社チャンネルが過去の名作を大量に無料で公開してくれている。便利な世の中になったものだ。また、Goldminesチャンネルは南インド映画のヒンディー語吹替版を配信していることで有名だ。ただ、企業のチャンネルではないものの中には、個人が違法でアップロードしているのではないかと思われるものも散見される。また、OTT作品を公開するプラットフォームにはほとんどなっておらず、最新作には弱い。

 YouTubeにて公式に公開されており、かつ無料で視聴できる作品については、映画評の最後にリンクを添えてある。アップロードされている作品はどんどん増えている状態なのでなかなか追いつかないが、気付いたらリンクも追加している。

 ちなみに、YouTubeの「映画と音楽」では、有料ながら、日本語字幕付きまたは日本語吹替付きで、いくつかのインド映画も配信されているので要チェックである。

インディアンムービーオンライン

 日本発のインド映画配信サービスとして注目したいのが、インディアンムービーオンラインである。日本で毎年開催されるインド映画祭「インディアンムービーウィーク」で公開された映画を中心にレンタル形式で配信をしている。日本語字幕付きで1本1,000円である。南インド映画が中心だ。

 ちなみに、インディアンムービーオンラインやインディアンムービーウィークを運営する企業Spaceboxは、インド映画の配給と平行して、都市部を中心に定期的に最新のインド映画の上映会を行っている。英語字幕のみとなるが、インド人観客と一緒にインド映画を鑑賞できるので、本場の盛り上がりを日本にいながらある程度体験できる貴重な場となっている。

JAIHO

 これも日本発の定額制映画配信サービス。月額制で、毎日新しい映画が配信される。映画好きの琴線に触れるラインナップで、インド映画にも力が入れられており、日本で劇場未公開の映画を含む多くのインド映画が日本語字幕付きで常時配信されている。映画配給会社ツインと同系列。

アジアンドキュメンタリーズ

 ドキュメンタリー映画のみになるが、日本発の日本語字幕付き映画配信サービスで、作品ごとに購入することもできるし、一定期間見放題の定額制も選べる。良質なインド関連のドキュメンタリー映画も多数取り揃えており、ドキュメンタリー映画好きにはおすすめである。

Indiancine.ma

 インド映画のオンライン・アーカイブ。著作権が切れた(公開から60年が経った)映画を中心に、合計15,000本の映画をアーカイブすることを目標としている。著作権が切れた映画は一般ユーザーでも自由に閲覧することができる。字幕はなし。