ボリウッド

 日本もしくは世界においてインド映画を指す呼称として「ボリウッド(Bollywood)」という言葉がよく普及している。

 インド映画産業の拠点は言語ごとにインド各地に分散している。ヒンディー語映画産業はマハーラーシュトラ州の州都ムンバイーを拠点としている。ムンバイーの旧名はボンベイ(Bombay)と言う。「ボンベイ」の頭文字「B」と、米国の映画都市である「ハリウッド」を掛け合わせて、「ボリウッド」という言葉が作られた。

 日本および世界の多くの人々が勘違いをしている点だが、「ボリウッド」という言葉は、その語の成り立ちから分かるように、ヒンディー語映画産業、もしくはヒンディー語娯楽映画産業のみを指し、インド全体もしくは他地域・多言語の映画産業は普通は指さない。

 「ボリウッド」という呼称は1980年代にインドのメディアが作り出したとされる。ヒンディー語映画産業の「愛称」と見なされることも多いが、業界内の人間からは必ずしも好意的に受け止められている言葉ではない。この言葉がインド映画産業全体を指すという誤解が世界中に広まってしまっているという理由に加え、ともすれば「ハリウッドの劣化コピー」というイメージを伴い、蔑称となり得るからだ。

 ヒンディー語映画界の大御所、アミターブ・バッチャンも、自身のブログAmitabh Bachchan’s Official Blog “Bachchan Bol”において、「ボリウッド」は「とても有害な言葉(the much maligned word)」とまで語っている(2009年4月29日「Day 362」)。さらに、2011年には以下のような発言をし、「インド映画はハリウッド映画に劣っていない」と高らかに宣言した(2011年9月11日「Day 1241」)。

Amitabh Bachchan

A larger number of the world population watches Indian movies as opposed to Hollywood – 3.8 billion to 3.2 billion.

世界の人口の内、ハリウッド映画鑑賞者の人口が32億人であるのに対し、インド映画鑑賞者の人口は38億人である。

 もちろん、アミターブの発言内の「インド映画」とは、ヒンディー語映画を含むインド全体の映画のことを指すと考えていいだろう。

 「ボリウッド」の使用禁止を喧伝するつもりはないが、Filmsaagarでは、サイトのポリシーとして、ヒンディー語映画産業に従事する人々の意向を尊重し、特別な場合を除き「ボリウッド」という呼称は用いず、「ヒンディー語映画」「ヒンディー語映画界」「ヒンディー語映画産業」などを使用することにしている。一方、「インド映画」と言った場合は、アミターブのブログと同様に、ヒンディー語映画のみならず、インド全体の映画のことを指すと考えて欲しい。

 ちなみに、業界内部では、ヒンディー語映画界は一言で「インダストリー(the Industry)」と呼ばれることが多い。