Rubaru

3.5
Rubaru
「Rubaru」

 ティスカ・チョープラーは、メインストリームのヒンディー語映画の中ではほとんど存在感がなく、「Taare Zameen Par」(2007年)や「Qissa」(2015年)などいくつかの作品での演技で記憶されていた女優だった。ところが彼女が製作・脚本・主演を務めた短編映画「Chutney」(2016年)が高く評価されたことで再評価され、その後も短編映画の製作を続けている。

 2020年11月28日にYouTubeのLarge Short Filmsチャンネルで配信開始された「Rubaru(対面)」は、ティスカ・チョープラーのプロデュース作品3作目にあたる。第1作「Chutney」の監督はジョーティ・カプール・ダース、第2作「Chhuri」(2017年)の監督はマーンスィー・ジャインであったが、第3作となる「Rubaru」において彼女自身が監督となった。つまり、「Rubaru」においてティスカはプロデューサー、脚本家、監督、主演の4役を務めている。

 ティスカの他にはアルジュン・マートゥルくらいが名の知れた俳優であり、ほとんどティスカ独壇場の映画である。

 上映時間は18分ほどである。

 「Chutney」と「Chhuri」は浮気が主題になっていたが、「Rubaru」はガラリと変わり、落ち目の女優の物語になっている。ティスカが演じる主人公ラーダー・マロートラーは往年の名映画女優であるが、年を取った現在、なかなかヒロイン女優として起用されなくなっていた。そこで彼女は舞台劇に挑戦する。こんなストーリーである。

 リハーサルでのラーダーの演技は気持ちが入っておらず、監督(アルジュン・マートゥル)からダメだしをされる。ちょうど、演目は英女流作家ヴァージニア・ウルフの生涯を翻案したもので、難解な小説を書くために全く売れない女流作家シャマー役をラーダーが演じていた。その姿はラーダー自身の現在と重なっていた。

 演劇では、拳銃を頭に当てて自殺するシーンがあった。ラーダーは本物の拳銃に実弾を込めて演技に臨んだ。もし失敗したら自殺する覚悟での本番だった。命を賭けた彼女の演技は迫真のものとなり、観客から惜しみのない拍手が送られる。ラーダーは、映画女優から舞台女優への転身を成功させた。

 ラーダーにはティスカ自身のキャリアと重なる部分もある。ティスカは実力ある女優であったが、運が悪かったのか、実力に見合った評価を受けることが少なかった。40歳を越え、女優としての進退を考える時期に来たとき、彼女は短編映画「Chutney」の脚本を書き、プロデュースし、そして自ら主演を務めて、高い評価を受けた。きっと、決死の覚悟で短編映画に進出したのであろう。そして、その経験を自ら映画化したのがこの「Rubaru」だと思われる。

 「Rubaru」は、短編映画の名手として知られるようになったティスカ・チョープラーが初めて監督をし、プロデューサー、脚本家、主演女優の全てを務めた作品である。彼女の内面世界をそのまま映像化したような作品で、尺の長さからは想像できないようなインパクトの強い映画になっている。


ROYAL STAG BARREL SELECT LARGE SHORT FILMS I RUBARU I TISCA CHOPRA