Chhuri

3.0
Chhuri
「Chhuri」

 ティスカ・チョープラーが初めてプロデュースし、脚本を書き、自ら主演した意欲的な短編映画「Chutney」(2016年)は、フィルムフェア賞短編映画賞を受賞するなど大きな成功を収めた。それに気を良くしたのか、ティスカ・チョープラーが同じく製作・脚本・主演を務めた短編映画「Chhuri(ナイフ)」が2017年12月19日からYouTubeのLarge Short Filmsチャンネルで配信開始された。12分半ほどの映画である。

 監督はマーンスィー・ジャイン。過去に2本ほどの短編映画を撮っている。主演はティスカ・チョープラーだが、相手役としてアヌラーグ・カシヤプが起用されている。また、「Hate Story 2」(2014年)のスルヴィーン・チャーウラーが出演している。

 ストーリーは「Chutney」と酷似している。浮気性の夫を持つ賢い妻が、夫や浮気相手に感情的に食ってかかるのではなく、冷静に対処する様子を描いている。ある意味、浮気性の男性にとっては一番怖い反応である。「Chutney」と同じく、浮気相手の女性の名前が映画中に出て来ないので、便宜的に役者の名前を流用して「スルヴィーン」と呼ぶ。

 ある日、夫のシャラド(アヌラーグ・カシヤプ)が誰かから電話が掛かってくるとすぐに家を出ていってしまったのを見て、妻のミーラー(ティスカ・チョープラー)は浮気相手のスルヴィーン(スルヴィーン・チャーウラー)に会いに行ったのだと直感する。ミーラーは娘を水泳教室に送った後、スルヴィーンの家を訪れる。シャラドとスルヴィーンは情事の真っ最中だったが、ミーラーが突然やって来たことに驚き、シャラドはクローゼッドの中に隠れ、ミーラーはドアを開けて対応する。ミーラーは家の中に入ってきて、シャラドを1週間の内2日は貸すと提案し、帰って行く。ミーラーとの会話の中でスルヴィーンは上司のヴィクラムとも浮気をしていることが発覚する。シャラドとスルヴィーンの間で喧嘩になるが、それを尻目にミーラーは去って行く。

 「Chutney」と「Chhuri」を通してティスカ・チョープラーが女性たちに訴えたいメッセージは明白だ。男性の浮気には賢く冷静に対処しようというものである。

 「Chutney」では、ティスカ演じるヴァニターが夫の浮気相手ラスィカーに対し、本当か嘘か分からないような恐ろしい話を聞かせ、暗に警告する様子が描かれていた。とても怖かったのだが、誰にでもそんな話力があるわけではない。ティスカ製作2作目となる「Chhuri」ではむしろ、より誰にでもできる解決策を提示している。

 その解決策とは、浮気相手に敢えて夫を貸し出すというものだ。ミーラーはスルヴィーンに対し、1週間の内2日は夫のシャラドを貸すが、それ以外の日は必要なので家に戻して欲しいと頼む。もちろん、ミーラーはシャラドがスルヴィーンの家のどこかに隠れていて、会話に耳をそばだてていることを承知の上で、このオファーを出した。その意外な提案にスルヴィーンもうろたえてしまい、ついつい別の浮気相手の名前を出してしまう。ミーラーは、夫がスルヴィーンと出会って以来、ファッションに気を遣うようになって若返り、感謝しているとまで伝える。正妻の貫禄を見せつけた形だ。

 「Chhuri」は、「Chutney」ほど身の毛がよだつグリップ力があるストーリーではなかったが、ティスカ・チョープラー、アヌラーグ・カシヤプ、スルヴィーン・チャーウラーの演技が噛み合っており、12分半があっという間の佳作である。


CHHURI I TISCA CHOPRA I ROYAL STAG BARREL SELECT LARGE SHORT FILMS