Bahut Hua Sammaan

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Bahut Hua Sammaan
「Bahut Hua Sammaan」

 2020年10月2日からDisney+ Hotstarで配信開始された「Bahut Hua Sammaan(大層な尊敬を受けた)」は、普段ぶっ飛んだキャラを演じることが多い脇役俳優サンジャイ・ミシュラーを主人公ともいえる重要な役に据えたブラックコメディー映画である。監督は「Prague」(2012年)のアーシーシュ・R・シュクラー。

 ほとんど有名な俳優は起用されておらず、メインのキャラを、スローモーションダンスで人気を博したダンサー、ラーガヴ・ジュヤールとTVドラマ俳優アビシェーク・チャウハーンが演じている。他に、ラーム・カプール、ニディ・スィン、ナミト・ダース、フローラ・サイニーなどが出演している。

 舞台はウッタル・プラデーシュ州ヴァーラーナスィー。ボニー(ラーガヴ・ジュヤール)とファンドゥー(アビシェーク・チャウハーン)は落ちこぼれの大学生で、落第して就職できずにいた。二人はバクチョード・バーバー(サンジャイ・ミシュラー)と出会い、大学キャンパス内の銀行の見取り図を渡され、銀行強盗を勧められる。ボニーとファンドゥーは助けが必要だと考え、先輩のチャンドゥーに2人の悪党、ラージューとボーラーを紹介してもらう。だが、ラージューとボーラーは銀行強盗に興味を示さなかった。そこでボニーとファンドゥーは水道を通って銀行の金庫室に侵入するが、既に盗まれた後だった。しかも警察が到着しており、二人は逮捕されてしまう。二人は、女警官ボビー・ティワーリー(ニディ・スィン)に拷問される。

 ボニーとファンドゥーの前に銀行強盗したのはラージューとボーラーだった。銀行から3千万ルピーを盗み出した二人は、砂マフィアのバールー・バイヤーに借金があったため、彼と落ち合うために、サプナー(フローラ・サイニー)のファームハウスへ行く。だが、バールー・バイヤーの刺客に殺されそうになる。ラージューとボーラーは逃げ出し、後に残ったサプナーは金を持って逃げた。

 実は銀行の金庫には、大学の学長PMSの大事な「コーヒヌール」が収められていた。PMSはアジャイ・スィン大臣の報告に行き、アジャイはハーブ製品製造会社アカンド・バーラトを経営する宗教指導者グル・マハーラージに報告する。また、アジャイは元コマンドーの殺し屋ラブリー・スィン(ラーム・カプール)を雇う。

 ラブリーはまずバールー・バイヤーを殺し、次にサプナーを殺す。ラージューとボーラーも殺そうとするが、その前に彼らは警察に逮捕される。バーバーはラージューとボーラーから「コーヒヌール」の在処を聞き出し、釈放されたボニーとファンドゥーと共に取りに行く。だが、ラブリーが待ち構えていた。バーバーが撃たれるものの、ボニーとファンドゥーは「コーヒヌール」を持って逃げることに成功した。

 「コーヒヌール」とは手帳のことで、そこには、グル・マハーラージが州首相に多額の賄賂を渡していることは詳細に記録されていた他、アカンド・バーラトの製品に中毒性のある化学物質を混ぜていたことまで記されていた。ボニーとファンドゥーはそれをボビーに見せる。ボビーは真相を究明するため、ゴーラクプルにあるアカンド・バーラトのラボにボニーとファンドゥーと共に潜入する。そこでラブリーと銃撃戦になり、ボビーは負傷するが、そこへ復活したバーバーが現れ、ラブリーを倒す。

 PMS、アジャイ、グル・マハーラージらは逮捕された。バーバーは、子供が欲しかったボビーの精子ドナーとなる。そしてボニーとファンドゥーはアカンド・バーラトの株を空売りし、グル・マハーラージ逮捕による株価急落で大儲けする。

 落ちこぼれの二人組ボニーとファンドゥーが、バクチョード・バーバーという謎の老人と出会ったことで、銀行強盗をすることになり、そこから様々な事件に巻き込まれるという筋書きのブラックコメディー映画だった。映画に特に何らかのメッセージが込められているわけではなく、先の読めない展開を楽しむ種類の娯楽作である。

 ユニークだったのは、コミック調の演出があり、効果音がデーヴァナーガリー文字で表示されたり、コマからコマへ移動するような映像効果が使われたりしていた。また、普段は脇役に徹しているサンジャイ・ミシュラーが、元コマンドーとも対等に渡り合う戦闘力を持った革命家バクチョード・バーバーを演じ、いつになく格好いいキャラをもらえていたのが大きな見所であった。

 映画の大きなサスペンスとなっていたのが、「コーヒヌール」の謎である。普通、コーヒヌールといえば、世界でもっとも有名なダイヤモンドのことで、インドの歴代の支配者の手を渡ってきたが、現在は英国王室の所有物となっている。だが、映画の中でいう「コーヒヌール」とは、ダイヤモンドのことではなかった。最近急速に信者を増やす宗教指導者グル・マハーラージと、彼が経営するハーブ製品会社アカンド・バーラトの汚職に関する記録が満載された手帳であった。

 ちなみに、アカンド・バーラト社のモデルになっているのは、バーバー・ラームデーヴが共同経営するハーブ製品会社パタンジャリ・アーユルヴェード社であろう。パタンジャリの製品はインドで人気であり、バーバー・ラームデーヴは新興宗教指導者の代表格である。

 サンジャイ・ミシュラーのためにあるような映画だったが、若い2人の主演男優も元気だった。「Sonali Cable」(2014年)で俳優デビューしたラーガヴ・ジュヤールは、今回は得意のダンスを見せるシーンに恵まれなかったものの、次第に俳優業が板に付くようになってきた。彼に比べると、アビシェーク・チャウハーンの方はこれといった特徴に欠けたが、悪い演技ではなかった。

 主演の2人以上にインパクトがあったのは、女警官ボビー・ティワーリーを演じたニディ・スィンである。ウェブドラマで主に活躍する女優で、「Brij Mohan Amar Rahe!」(2018年)にも出演していた。端役ではあったが、堂々とした演技で存在感を出せていた。

 「Bahut Hua Sammaan」は、普段は個性的な脇役を演じているサンジャイ・ミシュラーが重要な役回りをするブラックコメディー映画である。2人の落第生が銀行強盗を試みたところから始まるドタバタ劇が、先の見えない展開と共に描かれる。観て損はない映画である。