Home Stories

3.0
Home Stories
「Home Stories」

 2020年6月12日からYouTubeで配信開始された「Home Stories」は、ロックダウン中に撮影された、ロックダウンを主題にしたオムニバス形式の映画である。4人の監督が4つの短編映画を撮り、それをつなぎ合わせて一本の映画にしている。

 ひとつめのエピソードは「Out With It(持ち出し)」。外出恐怖症になり家から出られなくなった主人公がやっとのことで外に出たらロックダウンが始まったというオチである。監督はサーヒル・セーティー。主演は「Brij Mohan Amar Rahe!」(2018年)などのアルジュン・マートゥル。

 ふたつめのエピソードは「Will You Be My Quarantine?(あなたは私の隔離になってくれる?)」。ワンナイトスタンドのつもりで一夜を過ごした男女が、そのままロックダウンに突入して3週間一緒に過ごすことになったというあらすじだ。監督はアヌラーグ・カシヤプの妹アヌブーティ・カシヤプ。主演は「Mujhse Fraaandship Karoge」(2011年)などのサバー・アーザードと、ナスィールッディーン・シャーの息子で「Dil Dosti Etc」(2007年)などのイマード・シャー。

 みっつめのエピソードは「Delivering Smiles(笑顔をお届け)」。ロックダウン中に市民の生命線になったデリバリーボーイが主人公の映画だ。監督は新人のタンヴィー・ガーンディー。主演はタンマイ・ダナーニヤー。

 よっつめのエピソードは「Web Ne Bana Di Jodi(ウェブが作ったカップル)」。ロックダウンの中でビデオチャットを通して結婚式を挙げるカップルの物語である。監督は新人のアシュウィン・ラクシュミー・ナーラーヤン。主演はアプールヴァー・アローラー、ヴィール・ラージワント・スィン、ラーケーシュ・ベーディーなど。

 基本的には、ロックダウン中に知恵を絞ってみんなで映像作品を作り上げたことを楽しむ映画であり、それぞれのストーリーに必要以上の深みや興奮などを期待してはならない。ただ、映画の最後に流れるメイキングを観ると、完全に各人が隔離状態で撮られた映画ではなく、複数の俳優などが一緒に仕事をしている様子も見て取れた。

 また、デリバリーボーイが主人公の「Delivering Smiles」では、おそらく実際にロックダウン中の屋外で撮影されている。目を凝らして見るとどうやらデリーのようだ。ロックダウン時、自動車が全く消えた道路の様子などが記録されており貴重である。

 4つのエピソードの中で一番印象に残ったのは4つめのオンライン結婚式だ。やはり結婚式はインド映画の核心だが、ロックダウン中に作ったロックダウンの映画でも結婚式を取り上げるところに執念を感じた。それだけでなく、ホロリとする内容でもあった。

 「Home Stories」は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、インドで最初のロックダウンが行われたときに、ロックダウンという限られた環境をものともせず、有志によって工夫して作られたオムニバス映画だ。それぞれのエピソードよりも、こういう映画が作られたことに、どんな状況に置かれてもポジティブに生きることを教えられる。


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