Chintu Ka Birthday

3.0
Chintu Ka Birthday

 2020年6月5日からZee5で配信開始された「Chintu Ka Birthday(チントゥーの誕生日)」は、その牧歌的な題名からは想像できないほど緊迫感あるドラマである。2004年4月、米軍による占領が始まって1年が経つバグダードが舞台の、取り残されたインド人家族を主人公にした物語だ。オール・インディア・バクチョード(All India Bakchod)というコメディー・コンテンツの制作会社に属するコメディアンたちによってプロデュースされているが、コメディー要素はほとんどない、シリアスな物語である。

 監督はデーヴァーンシュ・スィンとサティヤーンシュ・スィンの兄弟。キャストは、ヴィナイ・パータク、ティロッタマー・ショーム、スィーマー・パーワー、ヴェーダーント・チッバル(子役)、ビシャー・チャトゥルヴェーディー(子役)などである。また、サンジャイ・ミシュラーが声のみで出演している。

 2004年4月、米軍のイラク駐留から1年が過ぎていた。ビハール州出身ながらバグダードで浄水器のセールスマンをしていたインド人マダン・ティワーリー(ヴィナイ・パータク)は、妻のスダー(ティロッタマー・ショーム)、彼女の母親ナーニー(スィーマー・パーワー)、娘のラクシュミー(ビシャー・チャトゥルヴェーディー)、息子のチントゥー(ヴェーダーント・チッバル)を呼び寄せ、一緒に暮らしていた。家族は数日前からチントゥーの6歳の誕生日会の準備をしており、近所のベーカリーでケーキも予約していた。彼らの家には大家のマハディーも来ていた。

 ところが突然バグダードで戦闘が発生し、学校は休みになり、ケーキも手に入らなくなる。それでもティワーリー家はチントゥーのためにケーキを焼こうとする。そのとき近くで大きな爆発があり、家には2人の米兵、リードとルイスが上がり込んでくる。マハディーは物置に隠れるが、すぐに見つかってしまう。米兵たちはマハディーとマダンを逮捕する。チントゥーの誕生日はメチャクチャにされてしまった。

 チントゥーのクラスメイト、ワヒードとザイナブがやって来る。その隙にマハディーは逃げ出し、リードが追い掛ける。後に残ったルイスは家を捜索し、テロ組織とのつながりを見つけ出そうとする。やがてリードも戻ってくる。マダンは米兵たちに対し、連行される前にチントゥーの誕生日を祝うために10分だけ時間が欲しいと願い出る。焼いていたケーキは焦げてしまったが、ビスケットを砕いて即席のケーキを作り、マダン、スダー、ナーニー、ラクシュミー、ワヒード、ザイナブはチントゥーの誕生日を祝う。それを見た米兵たちはマダンを連行せずに去って行く。

 映画の中では日付は明示されていなかったが、米軍がバグダードを占領したのは2003年4月9日であり、この日がチントゥーの誕生日なのではないかと思われる。チントゥーは誕生日を楽しみにしていたが、前年は米軍侵攻によって台無しにされてしまった。今年こそはと思っていたが、やはり米兵が家に上がり込んできたために妨害されてしまった。実際に2004年4月9日にはバグダードで米軍に対する大規模な襲撃があった。チントゥーは二度も政情不安の余波によって誕生日を邪魔されてしまった。非常に具体的な設定に基づいていたのでもしかしてと思って調べてみたが、やはり実話に基づいた映画とのことだった。

 2003年、米軍がバグダードに侵攻したとき、現地に住んでいたインド人は全員帰国することになった。では、2004年になぜインド人家族がバグダードに残っていたかというと、それは彼らが違法に渡航してきていたからであった。彼らはインドのパスポートではなく、違法に取得したネパールのパスポートで来ていた。よってインド大使館から助けてもらえず、バグダードに取り残されてしまったのである。

 ティワーリー家がイラクに住んで何年経つのかは不明だが、ラクシュミーとチントゥーはアラビア語を流暢に話しており、それから察するに、数年は住み続けていたことがうかがわれる。アラビア語の台詞が字幕なしで出て来て、しかもその時間がかなり長い。ティワーリー家のメンバーが話すヒンディー語、米兵が話すアメリカ英語、そして現地人が話すアラビア語の3言語で構成されていた。

 実話に基づく映画なのはいいのだが、何を訴えたい映画なのか、いまいち曖昧だったように感じた。戦火の中でも息子の誕生日を祝ってやりたいというマダンの純粋な気持ちが、テロ組織の襲撃に身構えるピリピリした米兵たちの心も和らげたということを伝えたかったのだろうか。なぜマハディーが逃げたのか、ワヒードはテロ組織とつながりがある少年なのかなど、謎のまま終わってしまったことも多い。さらに、ティワーリー家はインドに帰ることができたのかについても何も情報がないまま終わっていた。

 ただ、俳優陣はベテラン揃いだ。ヴィナイ・パータク、ティロッタマー・ショーム、スィーマー・パーワーなど、貫禄の演技を見せており、子役も良かった。米兵を演じた俳優たちも素人ではないだろう。

 「Chintu Ka Birthday」は、米軍占領下のバグダードに取り残されたインド人家族の身に起こった1日の出来事を追ったドラマである。ほとんど密室劇ではあるが、ベテラン俳優たちの競演が見所の作品である。