What Are the Odds?

2.5

 「What Are the Odds?」はヒングリッシュ映画のカテゴリーに入る。主な台詞は英語だが、ヒンディー語の台詞もあり、かなり自由奔放な混合状態となっている。2019年にロサンゼルス・インド映画祭でプレミア上映され、2020年5月20日からNetflixで配信開始された。題名は「偶然だね!」という慣用句である。監督は、長編映画は初となるメーガー・ラーマスワーミー。変わった映画に好んで出演することで知られるアバイ・デーオールがプロデュースと出演をしており、興味を引かれる。

 とはいえ、主演はアバイ・デーオールではなく、「Dear Zindagi」(2016年)ヤシャスウィニー・ダーヤマーと新人カランヴィール・マロートラーという若い俳優たちである。また、プリヤンカー・ボース、モニカ・ドーグラー、マヌ・リシなどが出演している。

 「What Are the Odds?」は、かなり変な映画である。あらすじにしてしまうと何が何だか分からなくなるのだが、奨学金受給審査のための試験の日に、まだ学生の若い男女が出会い、試験を受けずにムンバイーの町を1日ぶらつく中で様々な出来事を経験するという筋書きである。その出来事がいちいち常軌を逸している。入れ歯を拾ってポケットに入れたり、死なせてしまった金魚を埋めに行ったり、バンドに歌を盗まれたり、金魚を盗んで警察に逮捕されたりである。

 また、人物設定も変だ。主演ヤシャスウィニー・ダーヤマー演じるヴィヴェークは、女の子なのに男の子みたいな名前をしている。また、もう一人の主演カランヴィール・マロートラー演じるアシュヴィンは、かなり年上の女性と付き合っている。だが、「普通ではない」ことを自然に映し出すような斜に構えた価値観が映画全体に流れており、女の子が男の子みたいな名前であることや、年の差の男女が付き合うことは、大した議論もなく、ストーリーに溶け込んでいる。

 メインキャスト以外の登場人物も、それぞれ一癖も二癖もある。ムンバイーに雪が降ると信じてセーターを編み続けるアルツハイマー症候群の祖母、高齢者のパフォーミングアーツ団体を率いるリンプー(マヌ・リシ)、長年に渡って小便で作物を育て続けてきたおじさん、おかしな人体実験をする女性科学者パローマー(プリヤンカー・ボース)などなどである。

 その中でアバイ・デーオールは比較的まともな役だ。彼はバンドのリードボーカルを務めるヴァルという役柄を演じていた。ヴィヴェークはヴァルのファンで、彼に自分が作詩作曲した歌も披露する。だが、ヴァルはヴィヴェークの歌を盗用して自分の歌にしてしまった。いわば悪役ではあるのだが、彼だけは筋が通った行動をしており、実はこの映画の不条理な雰囲気を壊していた張本人でもあった。

 映画を観ていて想起したのは、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」だった。舞台はムンバイーなのだが、普通では起こらないような不条理な出来事や、異常な登場人物が次々に出て来て、二人の男女を翻弄する。それらを論理的に受け止めて解釈するのは不可能であるため、ストーリーの流れに身を任せて楽しむしかない。

 意外にも音楽が良い映画だった。プロの作り込まれた音というよりは、アコースティックかつナチュラルな曲ばかりで、軽快なBGMと共に、この映画の雰囲気を作り上げるのに多大な貢献をしていた。

 「What Are the Odds?」は、一般的な娯楽映画でもないし、芸術映画の範疇に入れようとしてもうまく行かないような、不思議な作品である。映像に凝っているわけではないのだが、ファンシーかつサイケデリックな雰囲気の映画で、しかも音楽がとても良い。アバイ・デーオールが出演している映画、といえば納得する人も少なくないだろう。観る人を選ぶ作品ではあるが、インド映画の新しい可能性を感じさせてくれる。