Mitron

3.5

 2018年9月14日公開の「Mitron(友よ)」は、テルグ語映画「Pelli Choopulu」のヒンディー語リメイクである。監督は「Filmistaan」(2014年)のニティン・カッカル。主演はジャッキー・バグナーニー。ヒロインはTV女優で、映画出演は初となるクリティカー・カームラー。他に、プラティーク・バッバル、プラティーク・ガーンディー、ニーラジ・スード、スニール・スィナー、パーリーン・バルサニヤー、モーハン・カプールなどが出演している。

 舞台はグジャラート州アハマダーバード。ジャイ(ジャッキー・バグナーニー)は、大学卒業後、コールセンターに勤めるもすぐに退職し、無為に過ごしている若者だった。料理が得意だったため、YouTubeに料理動画をアップロードしてYouTuberになろうとするが、うまく行かなかった。父親(ニーラジ・スード)はジャイを結婚させて責任感を付けようとしていた。

 アヴニー(クリティカー・カームラー)はオーストラリアに渡ることを夢見ていたが、父親(スニール・スィナー)から止められており、お見合いをさせられていた。ジャイとアヴニーはお見合いで出会うが、家を間違えてたまたま立ち寄ったのだった。

 ジャイは実業家(モーハン・カプール)の娘リチャー(パーリーン・バルサニヤー)と結婚することになる。だが、リチャーの父親はジャイが何もしていないのを気にしており、結婚する前に何かビジネスを始めるように言う。ジャイは、アヴニーから提案されたフードトラックのビジネスを思い出す。アヴニーも、オーストラリア行きのために資金が必要で、ジャイをビジネスパートナーにし、フードトラック「ミトローン」を始める。

 ジャイの遅刻といい加減な仕事振りのせいで最初の顧客には満足されなかったものの、その後は持ち直し、瞬く間にナンバー1のフードトラックとして有名になる。

 それを見たリチャーの父親は、娘がジャイと結婚することを認める。そして、ミトローンのシェア50%を持つアヴニーにバイアウトを申し出る。これでアヴニーはオーストラリア行きの資金を手にすることができるはずだった。同時に父親からオーストラリア在住の相手とのお見合いを持ちかけられ、縁談がまとまる。だが、アヴニーは思い悩むようになった。

 ディーワーリーの日。ジャイとリチャーの結婚式が行われようとしていた。アヴニーも許嫁と結婚しようとしていた。二人はそれぞれの式場からラジオのインタビューに答えるが、その中でやはり一緒にフードトラックを続けたいという気持ちが強くなり、式場を飛び出す。そして、お互いにお互いを目指して走って行き、抱き合う。

 近年、日本では街角でキッチンカーをよく見掛けるようになったが、インドでも同様に流行しているようだ。インドでは路上で料理をして食事を提供する事業は法律で規定されておらず、厳密に言えば違法になるようだ。だが、「Chef」(2017年)のように、キッチンカーを題材にした映画が作られるようになっているところを見ると、市民権を得つつあるように感じられる。

 「Mitron」も、キッチンカーが物語進行上、重要な要素となっている。主人公のジャイは料理が上手という設定で、序盤ではやたら料理をするシーンが強調されているが、それは中盤以降のフードトラック・ビジネスの伏線であった。ジャイはヒロインのアヴニーと共にキッチンカー「ミトローン」を始め、ビジネスを軌道に乗せる。

 基本的にはロマンス映画であるため、お約束通り、ジャイとアヴニーが恋に落ちるわけだが、この二人の出会いから結婚に至るまでは数奇な道筋を辿る。出会いは完全に偶然であった。ジャイもアヴニーもお見合いをしたのだが、本当は別の相手とお見合いするはずだったのが、ジャイの家族が家を間違えたせいで、出会ってしまったのである。しかも、二人が入った部屋の扉が開かなくなってしまい、彼らはじっくりとお互いのことを話す時間を持てた。

 ジャイは自堕落な人間で、結婚によって手に入る予定の、1,000万ルピーの持参金で楽に暮そうと考えていた。だから彼は自らビジネスをする必要はなかったのだが、彼の結婚相手となったリチャーの父親が、結婚の条件として何らかのビジネスを成功させることを出したために、アヴニーの提案したキッチンカーのビジネスに乗っかる形で、フードトラック・ビジネスの世界に足を踏み入れたのだった。

 ジャイとアヴニーは単なるビジネスパートナーであった。だが、一緒に仕事をする内に惹かれ合って行く。彼らのキッチンカーが人気となり、新聞でも報じられたことで、リチャーの父親はジャイと娘の結婚を認めるが、それはジャイとアヴニーのコンビ解消も意味した。ジャイもアヴニーも、当初抱いていた夢が実現されようとしていた。だが、二人とも浮かない顔をしていた。彼らはフードトラック・ビジネスを通して、生き甲斐とライフパートナーを既に見つけていたからである。土壇場で彼らはそれに気付き、既に進行していた結婚を投げ打って、お互いに駆け寄る。インド映画らしい劇的な幕切れだった。

 おそらく原作の脚本がいいのだろう、この「Mitron」はストーリーの良さで娯楽性を保つことに成功していた。ジャッキー・バグナーニーは俳優として成功していないのだが、今回はニートといっていい駄目男を演じており、素の駄目さを活かした配役となっていた。相手役のクリティカー・カームラーは、特別光るものを感じなかったが、悪くもなかった。

 舞台はグジャラート州なので、ヒンディー語映画ながら、登場人物の台詞にグジャラーティー語がかなり混じっていた。題名の「Mitron(友よ)」とは、ナレーンドラ・モーディー首相の演説でよく使われるフレーズである。モーディー首相の出身地もグジャラート州であり、おそらく関連はあるだろう。

 「Mitron」は、フードトラック・ビジネスを中心にして接近した男女のロマンス映画である。最後は結婚で終わる、お約束通りの結末だが、そこに至るまでの紆余曲折にはユニークなものを感じた。興行的には失敗に終わったようだが、つまらない映画ではない。テルグ語映画のリメイクだが、原作の脚本が優れているために救われている作品だといえる。