Happy Phirr Bhag Jayegi

2.5
Happy Phirr Bhag Jayegi
「Happy Phirr Bhag Jayegi」

 あまり詳しいことは分からないのだが、中国でインド映画が人気となっているようである。そもそものきっかけは「3 Idiots」(2019年)が中国で公開され大ヒットしたことでブームに火が付いたようで、アーミル・カーン主演の映画を中心に公開されているようである。近年、日本で公開されるインド映画は中国の後追いであることが多い。そうなって来ると中国市場を念頭に置いたインド映画が作られるのは時間の問題である。かつて、「Chandni Chowk To China」(2009年)という中国ロケのヒンディー語映画があったがフロップに終わった。2018年8月24日公開の「Happy Phirr Bhag Jayegi」は、中国を舞台としたコメディー映画である。インドとパーキスターンを舞台としたコメディー映画「Happy Bhag Jayegi」(2016年)の続編である。

 監督は前作と同じくムダッサル・アズィーズ。プロデューサーもアーナンド・L・ラーイで変わらない。前作に出演していたジミー・シェールギル、ダイアナ・ペンティー、アリー・ファザル、ピーユーシュ・ミシュラーも引き続き出演しているが、主役は交代している。今回の主演はソーナークシー・スィナーと新人のジャッスィー・ギルである。他に、アパールシャクティ・クラーナー、ジェイソン・タム、ジーヴェーシュ・アフルワーリヤー、デンジル・スミスなどが出演している。

 グッドゥー(アリー・ファザル)は中国でコンサートをすることになり、ハッピー(ダイアナ・ペンティー)と共に上海を訪れた。しかし、同じ飛行機には同じハッピーという名前の植物学者(ソーナークシー・スィナー)が乗っていた。ハッピー(ソーナークシー)は中国の大学に教授として赴任するところだった。空港の送迎で間違いがあり、グッドゥーとハッピー(ダイアナ)は大学に連れて行かれてしまう。一方、ハッピー(ソーナークシー)は中国人マフィアに捕まる。彼らは、上海で絶大な権力を誇るパーキスターン人、アドナーン・チョウ(デンジル・スミス)の手下で、前作に登場したパーキスターン人政治家ジャーヴェード・シェークを脅すため、その息子ビラールの友人であるハッピー(ダイアナ)を捕まえようとしていたのだった。

 ハッピー(ソーナークシー)は逃げ出し、在上海インド大使館で働くインド人クシー(ジャッスィー・ギル)と出合う。また、中国人マフィアはグッドゥーとハッピー(ダイアナ)を捕まえるために、インドからバッガー(ジミー・シェールギル)、パーキスターンからアフリーディー(ピーユーシュ・ミシュラー)を拉致して来る。バッガーとアフリーディーはハッピー(ソーナークシー)を追うが、中国人マフィアが人違いをしていることに気付く。そして、クシー、バッガー、アフリーディーの3人は、ハッピー(ソーナークシー)が中国に来た真の理由を知る。ハッピーはアマン(アパールシャクティ・クラーナー)と婚約したが、結婚式の日にアマンは逃亡し、現在中国にいることが分かった。彼女は父親に恥をかかせたアマンに謝らせるために中国に来ていた。三人はハッピー(ソーナークシー)がアマンを探し出すことを助けることになる。このような物語である。

 パーキスターンのシーンが登場する「Happy Bhag Jayegi」が実はインドで撮影されているのと同様に、「Happy Phirr Bhag Jayegi」も、中国で撮影されているように見えて実はマレーシアでロケが行われたようである。とは言え、風景には中国らしさが出ており、上海を舞台にした映画として違和感はなかった。ノースイースタンを中国人役にはめ込むような荒技も見られなかった。この映画が今後シリーズ化されるとしたら、外国に迷い込んでドタバタ劇を繰り広げるようなコメディー映画となるのだろうか。

 だが、前作にはまだ一本筋の通ったストーリーがあったのに対し、今作はドタバタ劇の方に主眼が置かれていて、ストーリーの整合性に緩さがあった。シーンとシーンのつながりが雑で、流れにスムーズさがなかった。ダイアナ・ペンティーが演じるハッピーとソーナークシー・スィナーが演じるハッピーの色分けもよくなされておらず、アリー・ファザルとダイアナ・ペンティーはほとんど脇役に追いやられていた。

 その代わり、ソーナークシー・スィナーがドッシリと構えており、彼女の切り盛りによって何とか映画はエンディングまで持ちこたえたように感じた。「Happy Phirr Bhag Jayegi」は完全にソーナークシーの映画である。

 面白かったのはヒンディー語を話す中国人が多数登場したことだが、その中でもチャンを演じたジェイソン・タムのヒンディー語はとても流暢だった。彼はニューヨーク生まれの中国系米国人だが、父親の仕事の関係で幼少時からデリーに住んでいるようで、インドのリアリティー番組でダンスを武器に活躍して来た。小柄なので、スクリーン上で貫禄がないのが残念だが、インド映画界で活躍する中国系俳優ということで、独自の地位を築いて行きそうだ。

 「Happy Phirr Bhag Jayegi」は、ダイアナ・ペンティーがヒロインを務めた「Happy Bhag Jayegi」の続編のコメディー映画である。だが、メインヒロインはソーナークシー・スィナーにバトンタッチしている。前作からストーリー上のつながりがあり、主要キャストも変わらない。だが、前作に比べて雑な作りとなっており、中国が舞台という目新しさを除けば、あまり観るに値しない作品となってしまっている。興行的にも大失敗に終わった。