Julie 2

2.5
Julie 2
「Julie 2」

 「Julie」(2004年)は、ヒンディー語映画界で俗に「スキンショー」と呼ばれた映画が流行した時代に作られた。スキンショーとは女優の肌見せや濡れ場が多いセクシー系映画のことであり、その発端はビパーシャー・バス主演の「Raaz」(2002年)だった。「Murder」(2004年)のように成功した映画もあったが、単に女優のセクシーショットに依存した映画は早々に飽きられ、歴史の隅に追いやられた。スキンショー映画の中でも「Julie」はヒットした方で、この映画に主演した女優ネーハー・ドゥーピヤーは、大きなブレイクはしなかったものの、一定の知名度を獲得し、その後も業界に留まり続けている。

 「Julie」のディーパク・シヴダーサーニー監督は「Mr. Black Mr. White」(2008年)以来、長い間沈黙を守ってきたが、2017年11月24日に「Julie 2」をリリースした。題名上は「Julie」の続編になっているが、ストーリーのつながりなどは全くなく、シヴダーサーニーが引き続き監督を続けていること、主人公の名前がジュリーであること、そしてスキンショー系の映画であることくらいしか共通点がない。

 主演はラーイ・ラクシュミー。南インド映画界で一定のキャリアがある女優で、「Akira」(2016年)でヒンディー語映画デビューしている。今回彼女は一人二役を演じる。他に、パンカジ・トリパーティー、アーディティヤ・シュリーヴァースタヴァ、ラティ・アグニホートリー、ユーリー・スーリー、ラヴィ・キシャン、ニシカーント・カーマト、デーヴ・ギル、アサド・ラザーなどが出演している。ちなみにニシカーントは前作の脚本家で、「Force」(2011年)などの監督である。

 映画女優のジュリー(ラーイ・ラクシュミー)は、政治家アシュウィン・アスターナー(パンカジ・トリパーティー)の亡き妻スミトラー・デーヴィー(ラーイ・ラクシュミー)の自伝を映画化した「Devi」の主演に抜擢された。有名なフランス人映画監督ジャン・クロードが監督を務める国際的なプロジェクトだった。

 2015年12月25日、自分の誕生日に催された講演会で、ジュリーは父親が誰か分からないこと、母親の再婚相手に13歳のときにレイプをされたことなどを明かし、物議を醸す。その後、彼女が立ち寄った宝飾品店が4人組の強盗に襲われ、ジュリーも銃撃を受けて重傷を負ってしまう。ジュリーは病院に搬送され治療を受けるが生死の境をさまよっていた。

 事件を担当したデーヴダット警部(アーディティヤ・シュリーヴァースタヴァ)はすぐに4人の犯人を逮捕する。だが、彼はこれが単なる強盗殺人事件ではないと直感し、上司の制止を無視してさらに捜査を進める。デーヴダット警部は、ジュリーと親しかったメイクアップアーティストのアニー(ラティ・アグニホートリー)に話を聞くことができ、ジュリーの半生が明らかになる。

 ジュリーは女優を目指していたが、プロデューサーや監督から身体を求められ、それを拒否していたため、何の進展もなかった。ジュリーはアニーと出会い、彼女の紹介で映画監督のモーヒト(ニシカーント・カーマト)の新作に主演として抜擢される。この映画はヒットし、一躍ジュリーは時の人となる。だが、ジュリーに対するプロデューサーの横暴は止まらず、憤ったモーヒトは彼女をかばって反抗する。そのせいでモーヒトとジュリーは業界から干されるようになる。仕事を失ったモーヒトはニューヨークに渡ってしまう。

 取り残されたジュリーは、一転して身体を使ってプロデューサーや監督に取り入り、主演の座を獲得していく。南インド映画スターのラヴィ・クマール(ラヴィ・キシャン)と恋仲になるが、彼の要求を断ったことで破局し、脅迫を受けて、ドバイへ去る。ドバイではラーラー(デーヴ・ギル)というドンと出会い、寵愛を受ける。彼の権力によってジュリーはムンバイーの映画界でさらに仕事を得る。そしてクリケット選手ヴィクラムとも付き合うようになるが、彼はジュリーと結婚する気はなかった。

 ヴィクラムに振られたジュリーは自暴自棄になるが、そのとき偶然モーヒトと再会する。だが、モーヒトは既に結婚し、子供も生まれていた。それを知ったジュリーはさらにショックを受ける。アニーはジュリーを慰める。

 アニーからジュリーの話を聞いていたデーヴダット警部のところに、入院したジュリーのそばにいた付き人アンバーニー(アサド・ラザー)から電話が掛かってくる。何者かが医者に変装してジュリーを殺そうとしていた。それを止めようとしたアンバーニーは殺されてしまうが、ジュリーは助かった。やはりジュリーはたまたま強盗事件に巻き込まれたわけではなく、誰かに命を狙われていたのだった。

 その後、ジュリーは発作を起こして息を引き取ってしまう。ジュリーの葬儀が行われたが、その後アニーは、強盗を受けた宝飾品店の店主から、生前にジュリーが買おうとしていた十字架のネックレスを渡される。その十字架の中にはデータカードが隠されていた。

 実はジュリーは、スミトラーが遺したメッセージを読み取り、データカードを手に入れていた。その中には、アスターナーがスミトラーを殺した証拠が入っていた。アスターナーは州首相になろうとしていたが、スミトラーの方が次期候補になっており、それに嫉妬しての殺害だった。スミトラーの伝記映画を撮ろうとしていたのも、政治的な野心のためだった。アスターナーは、クロード監督とジュリーが「Devi」のラストを改変しようとしていたことで秘密がばれたことに気付き、まずはクロード監督を殺し、次にジュリーを殺そうとしたのだった。

 デーヴダット警部はアスターナーの家に行って追及し、彼を殺す。その後、ラーラーからも電話が掛かってくるが、ジュリーは彼の悪事の証拠も盗撮していたと明かす。

 前作のジュリーは高級コールガールだったが、今作のジュリーは枕営業を厭わない女優ということでスキンショーを作り出していた。そこに、州首相就任の野望を持った悪徳政治家の陰謀が加わり、スリラー映画仕立てになっている。

 現在のシーンと回想のシーンが交互に語られるスタイルの筋書きは、入り組んではいたが分かりにくくはなく、ヒンディー語映画界ではほぼ無名の主演女優ラーイ・ラクシュミーも好演していた。後に事件の黒幕と分かるパンカジ・トリパーティーも絶妙な演技をしていた。アニーを演じたラティ・アグニホートリーやデーヴダット警部を演じたアーディティヤ・シュリーヴァースタヴァも良かった。

 しかしながら、細部の描写が足りず、つぎはぎだらけのストーリーだと感じた。おそらく脚本段階ではもっと長い話だったのだろうが、短くまとめるために随所にカットを入れたことでこうなってしまったのだろう。たとえばドバイのドン、ラーラーとどんな関係を持ったのか、急ぎ足で描写されすぎていて何が何だか分からなかった。ジュリーはモーヒトに対して恋心を抱いていたと思われるが、この二人の関係も中途半端であった。さらに、主人公のジュリーが死に、後に残されたデーヴダット警部とアニーが彼女の遺志を継いでアスターナーとラーラーに引導を渡すのも、どこか悲しい結末である。散らかった筋書きの映画であった。

 冒頭でジュリーがスミトラー・デーヴィーの伝記映画「Devi」のムフーラト・ショットをしていた。これはインド映画独特の習慣で、映画の撮影を開始するときに、スポンサーを含むゲストの前で主演俳優が儀式的にワンショットだけ撮影を行うことをいう。

 「Julie 2」は、前作のヒットよもう一度ということで、しばらく沈黙を守っていた映画監督ディーパク・シヴダーサーニーが思い付きのように送り出した、擬似的な続編映画である。スリラー映画仕立てになっていて、工夫されていた部分もあったが、完成度は高くなかった。無理して観る必要はない映画である。