Guest iin London

3.5

 インドでも「お客さまは神様です」という慣用句がある。特に、招待されていないのにやって来た「招かれざる客」は神様だという考えが強い。では、とんでもなく迷惑な「招かれざる客」がやって来たら、我々はどうすればいいのだろうか。そんな迷惑なお客さまを当代一流のコメディアン俳優パレーシュ・ラーワルが演じヒットした「Atithi Tum Kab Jaoge?」(2010年)というコメディー映画があった。

 2017年7月7日公開の「Guest iin London」は、「Atithi Tum Kab Jaoge?」のアシュウィニー・ディール監督が撮った、似た導入部のコメディー映画である。招かれざる客を演じるのはやっぱりパレーシュ・ラーワル。若手のカールティク・アーリヤンとクリティ・カルバンダーが主演を務める。他に、サンジャイ・ミシュラー、タンヴィー・アーズミー、ナヴィーン・カウシクなどが出演している。また、「Atithi Tum Kab Jaoge?」の主演だったアジャイ・デーヴガンやシャラド・ケールカルが特別出演している。

 ロンドンのソフトウェア企業で4年間、労働ヴィザで働いていたアーリヤン(カールティク・アーリヤン)は、英国系インド人女性で金に困窮するアナーヤー(クリティ・カルバンダー)と結婚し、永住権を手にしようと画策する。アーリヤンとアナーヤーは婚姻届登録を10日後に控え、見せかけの夫婦生活を始めるが、移民局に務めるパーキスターン系英国人ハビービー(サンジャイ・ミシュラー)が偽の結婚ではないかと監視していた。

 そこへインドから、アーリヤンの隣人の借家人ガンガーシャラン・ガンドートラー(パレーシュ・ラーワル)とその妻グッディー(タンヴィー・アーズミー)がやって来て、アーリヤンの家に住み始める。アーリヤンとアナーヤーは数日のことだと我慢するが、彼らの存在は、アーリヤンとアナーヤーの結婚を本物に見せるのに役立った。しかも、ガンガーシャランとグッディーはすぐに近所の人々とも打ち解けた。アーリヤンは両親を亡くしていたし、子供の頃から家族に恵まれなかったアナーヤーは特に、家族の温かさを実感するようになる。こうしてガンガーシャランとグッディーはアーリヤンとアナーヤーの結婚式まで留まることになる。

 アーリヤンとアナーヤーは、お互いの利益のための偽の結婚のつもりだったが、次第に本当に愛し合うようになる。こうして二人の結婚は、ガンガーシャランとグッディーのおかげもだって、盛大に祝われる。

 だが、ガンガーシャランはアーリヤンのボス、カーリヤー(ナヴィーン・カウシク)に恥をかかせてしまう。カーリヤーはアーリヤンをクビにしようとするが、それを止める条件として、ガンガーシャランを一刻も早く追い出すことを求めた。また、アーリヤンとアナーヤーは、ガンガーシャランとグッディーがロンドンで怪しい行動をしているのを発見する。二人は実はテロリストかもしれなかった。アーリヤンは二人を英国の郊外に置き去りにする。

 だが、実はガンガーシャランとグッディーは、911事件で犠牲となった息子アジャイ(アジャイ・デーヴガン)の荷物を受け取りに来たのだった。アジャイはロンドンの会社に勤めていたが、たまたま出張で訪れたニューヨークで911事件に遭遇したのだった。それを知ったアーリヤンとアナーヤーは二人を探すがどこにも見つからない。そこでアーリヤンとアナーヤーはニューヨークのグランドゼロへ行く。そこでガンガーシャランとグッディーに再会し、彼らにした仕打ちを謝る。

 「Atithi Tum Kab Jaoge?」では、縁戚だと思って家に泊めた人物が、実は知り合いでも何でもなかったというオチになっていたが、この「Guest iin London」では、とりあえず同じオチが繰り返されているわけではなかった。主人公のアーリヤンにとって、突然インドからロンドンにやって来たガンガーシャランは、親戚ではなかったが、子供の頃に近所に住んでいた人ということになっており、その事実に間違いはないようだった。

 ロンドンでモダンな生活を送る若いカップルにとって、インドをそのままロンドンに持って来たような性格のガンガーシャランとその妻グッディーの存在は、迷惑でしかなかった。しかもアーリヤンとアナーヤーは、ヴィザと金のために見せかけの同棲生活・結婚生活を送っているところであり、余計な面倒は御免被りたかったのである。

 だが、アーリヤンもアナーヤーも、家族の温かさを十分に感じずに育って来ていた。家族を何よりも第一に考える保守的な老夫婦と一緒に過ごす内に、窮屈ではあるが包み込まれるような安心感を感じるようになる。彼らの影響もあって、当初は偽の結婚をするつもりだったアーリヤンとアナーヤーも、本当に夫婦となる。

 前半のこの展開は非常に心温まるものだった。笑いと涙を上手に融合させた、一級の娯楽作品に仕上がっていた。だが、ガンガーシャランとグッディーに怪しい行動が見られるようになった終盤の展開は消化不良であった。まずはグッディーが実はサズィヤー・カーンというイスラーム教徒だったことが分かり、また、彼らの荷物からは、911事件に関する記事や、ガンガーシャランがモスクで礼拝をする写真などが出て来る。これらの物品から容易に推察できるのは、彼らが何らかのテロ活動に関わっているということだった。だが、実際にはそんなことはなく、彼らは911事件で死んだ息子の足跡を追ってロンドンやニューヨークを訪れていたのだった。多少強引なまとめ方だったと感じた。

 この映画は印パ関係が悪化した後に作られた。それ故に、パーキスターンに対する皮肉が散りばめられていた。アンチ・パーキスターンのネタは主に、アーリヤンの隣人ハビービーとの関連で繰り出される。パーキスターンからテロリストが越境して来ることへの批判、2016年9月28日のサージカル・ストライクに関する言及、クリケットのパーキスターン代表が審判を買収していることの示唆など、細かく見ていくとかなり踏み込んだ内容になっている。アンチ・パーキスターン映画に数えられるほどだ。

 また、普通はNRI(在外インド人)というとリッチなイメージがあるのだが、「Guest iin London」では、インドから英国に労働ヴィザを得てやって来たITエンジニアのアーリヤンの方が裕福で、英国で生まれ育ったの方がアナーヤーがタクシードライバーなどをして生計を立てる貧乏人という設定になっていた。現在ではこういう逆転現象も起きているのかと興味深かった。

 「Guest iin London」は、大ヒット映画「Atithi Tum Kab Jaoge?」のアシュウィニー・ディール監督が、同様の「迷惑な招かれざる客」を主題に作ったコメディー映画である。最後をしんみりまとめすぎているきらいはあったが、ギャグの切れは健在だった。しかしながら、興行的には全く振るわなかったようである。おそらく後半の辛気くささが嫌われたのだろう。だが、前半の爆笑は保証する。