Mantostaan

3.0

 サアーダト・ハサン・マントーは、英領インドに生まれ、パーキスターンで没したウルドゥー語作家である。特に印パ分離独立時の小説で名を知られている他、社会的なタブーに果敢に切り込んだ生々しい筆致で世間を騒がせた。インドでもよく読まれており、人気の作家である。

 2017年5月5日公開の「Mantostaan」は、印パ分離独立時の出来事を題材にしたマントーの4つの短編小説をひとつの物語に織り込んだ映画である。原作となっているのは、「Khol Do(開け)」、「Thanda Ghosht(冷たい肉)」、「Assignment(言いつけ)」、「Aakhri Salute(最後の敬礼)」である。

 監督はラーハト・カーズミー。キャストは、ラグビール・ヤーダヴ、ヴィーレーンドラ・サクセーナー、ソーナール・セヘガル、ショエーブ・ニカーシュ・シャー、ターリク・カーン、ライナ・バスネット、サークシー・バットなど。また、ラーハト・カーズミー自身も出演している。

 映画は、1947年の印パ分離独立直後の印パ国境付近を舞台としている。それぞれのエピソードはお互いに重なり合うことはないが、同時進行して行く。

 「Khol Do(開け)」では、印パ分離独立後、インド領となったアムリトサルに住むイスラーム教徒スィラージュッディーン(ラグビール・ヤーダヴ)が主人公である。彼は、妻子を連れて、暴動の起きる街中を逃げる。その中で妻を殺され、娘のサキーナー(サークシー・バット)とはぐれてしまう。ラホールの難民キャンプに辿り着いたスィラージュッディーンは必死になって娘を探す。そしてやっと娘を見つける。そのとき、医者が「カーテンを開けて」と言うと、娘はズボンの紐をほどき始める。父親とはぐれている間、サキーナーは男たちに犯され続け、「開けろ」と言われれば反射的にズボンの紐をほどくようになってしまったのである。

 「Thanda Ghosht(冷たい肉)」では、スィク教徒イーシャール・スィン(ショエーブ・ニカーシュ・シャー)が恋人クルワント・カウル(ソーナール・セヘガル)に、暴動の中で起こったことを語る。イーシャールはイスラーム教徒の家に押し入り、家族を殺して金品を奪う。同時に、意識を失った娘を連れ出し、森の中で強姦するが、気付くとその娘は息を引き取っていた。それはまるで冷たい肉であった。

 「Assignment(言いつけ)」では、印パ分離独立後もインド領に残り続けようとするジャッジ・サーハブ(ヴィーレーンドラ・サクセーナー)とその娘スグラー(ライナ・バスネット)の物語である。ジャッジ・サーハブは脳卒中で倒れてしまい、医者を呼ぶ必要があったが、外は暴動が起こっており、スグラーは出ることができなかった。そこで、老使用人を遣わすが、戻って来ない。イードの日、彼らの家に誰かが訪ねてくる。毎年イードの日には隣人のスィク教徒グルムク・スィンがお菓子を持ってくる習慣になっていた。スグラーが扉を開けてみると、そこにはグルムク・スィンの息子がお菓子を持って立っていた。グルムク・スィンは1ヶ月前に亡くなったという。お菓子を置いて去って行くと、今度はスィク教徒の暴徒たちがやって来た。イスラーム教徒に暴行する前に、彼は亡き父親の言いつけを守ったのだった。

 「Aakhri Salute(最後の敬礼)」だけは、カシュミール地方の印パ国境地帯が舞台である。元々は同じ英領インド軍だった兵士たちは、インド軍とパーキスターン軍に分かれ、国境を挟んでにらみ合っていた。パーキスターン軍のラブ・ナワーズ(ラーハト・カーズミー)は、インド軍に幼馴染みの親友ラーム・スィン(タリーク・カーン)がいることに気付く。二人は戦線を挟みながらも親しげに会話を交わす。だが、ラブ・ナワーズが威嚇のために撃った弾が誤ってラーム・スィンに当たってしまう。ラブ・ナワーズは駆け寄るが、ラーム・スィンは敬礼しながら絶命する。

 基本的には低予算映画であり、カメラワークや俳優たちの演技にも何だか素人くさいところが散見される。編集の仕方も上手とはいえず、4つのエピソードがランダムに交錯するので、分かりにくい展開にもなっている。だが、南アジアを代表する作家マントーの有名な短編小説の映画化であり、それぞれのストーリーには、短いながらも引き込まれるものがある。

 「Mantostaan」は、著名なウルドゥー語作家サアーダト・ハサン・マントーの4つの短編小説を原作とし、それらを1本の映画に織り込んだ作品である。ラグビール・ヤーダヴやヴィーレーンドラ・サクセーナーなど、名の知れた個性派俳優たちの出演もあるが、基本的には低予算映画であり、過大な期待は禁物だ。マントーの小説の世界を手軽に楽しむ目的ならば鑑賞する意義があるだろう。