Sonata

2.5

 2017年4月21日公開の「Sonata」は、アパルナー・セーンが監督し、アパルナー・セーン、シャバーナー・アーズミー、リレット・ドゥベーら3人の女優が主演する映画である。インド映画に詳しい人なら、これらの名前を聞いただけで、この映画が特別であることを察知するであろう。劇作家マヘーシュ・エルクンチュワールの同名舞台劇を原作としている。

 時は2008年11月26日、場所はムンバイー。高級アパートの一室に一緒に住む2人の独身女性アルナー・チャトゥルヴェーディー(アパルナー・セーン)とドロン・セーン(シャバーナー・アーズミー)、それに彼女たちの友人スバドラー・パレーク(リレット・ドゥベー)を中心に物語が進む。アルナーはサンスクリット語の教授、ドロンは多国籍企業の幹部、そしてスバドラーはジャーナリストで、それぞれの分野で成功しているキャリアウーマンであった。また、この日は彼女たちの友人ミーラーの誕生日で、アルナーとドロンの家を訪れる予定になっていた。

 舞台劇を原作としているだけあって、舞台はほとんどアパートの一室から動かない。そして登場人物の会話を中心に物語が進む。時間は夕方から夜までの一晩のみだ。アルナーは保守的な性格、ドロンは明朗闊達な性格、そしてスバドラーも派手な女性で、この三人が人生の様々なことをワイン片手に話し合う。スバドラーが付き合っている暴力的な男性のことについて話し合ったり、ワインを初めて飲んだアルナーが昔の恋人のことを語り出したり、ドロンが学生時代に一度だけアルナーの恋人を寝取ったことを暴露したりと、様々な出来事が起こる。

 台詞のほとんどは英語であり、ヒングリッシュ映画に分類される。だが、舞台劇からそのまま持ってきたような直訳風の英語であり、写実性がない。アパルナー・セーン、シャバーナー・アーズミー、リレット・ドゥベーはインド映画界を代表する女性たちで、お互いに仲がいいことが予想される。何となくこの三人が同窓会のような気分で、低予算で手っ取り早く作った映画がこの「Sonata」であるように感じられた。

 また、2008年11月26日という日付はインドにとって特別である。なぜならこの日、ムンバイーで同時多発テロが起こったからだ。勘のいい人ならば、この日付を聞いてすぐにピンと来るだろう。案の定、最後は同時多発テロで締められており、彼女たちの友人が、自分の誕生日だったにもかかわらず、テロの犠牲になって死んでしまう。原作の演劇は2000年に作られているため、ムンバイー同時多発テロの導入は映画ならではのアレンジだと考えられる。

 ムンバイー同時多発テロで死んだミーラーという人物はほとんど登場しないのだが、性別適合手術を受けて男性から女性になったという設定で、興味深いキャラであった。ミーラーは映画監督をしており、次回作として自身の自伝的な映画を作ろうとしていたが、その矢先にテロに巻き込まれて亡くなってしまった。

 「Sonata」は、インド映画界を代表する女性映画監督であるアパルナー・セーンが、自ら主演し、しかも当代一流の女優であるシャバーナー・アーズミーとリレット・ドゥベーなどを起用して作った、会話中心に展開する映画である。原作が舞台劇なだけあって、舞台劇の雰囲気を脱しておらず、しかも英語の台詞が固くて写実的ではない。映画の最後でムンバイー同時多発テロに言及されていたものの、それが発生して物語が終わってしまっているので、このテロをテーマにした映画とするのも困難である。アパルナー・セーン監督の作品にしては、観る人を選ぶ作品だと感じた。友人たちと寄り集まって自己満足のために作ったのではなかろうか。