Siya (2016)

3.0
Siya
「Siya」

 2016年11月1日からYouTubeで配信開始された「Siya」は、一人の女性の人生を3つの時間軸によって表現した5分ほどの短編映画である。監督はシヴ・ローヒラー。過去に「Bhaag Milkha Bhaag」(2013年/邦題:ミルカ)の助監督などを務めているが、監督は初めてのはずである。キャストは、アウリトラー・ゴーシュ、サティヤジート・ドゥベー、ニテーシュ・ワードワーなどである。

 主人公はスィヤーという名前の女性である。少女時代を除き、アウリトラー・ゴーシュが演じている。1984年、1996年、2016年におけるスィヤーのエピソードが語られるが、1984年は「家庭の破壊者(The Home-wrecker)」、1996年は「主婦(The Home-maker)」、そして2016年は「家庭の探求者(The Home-seeker)」と題が付けられている。

 「スィヤー」という名前は、「ラーマーヤナ」のスィーター姫の別名であることを理解する必要がある。1984年のシーンではスィヤーは学校の舞台劇でスィーター役を演じていた。ラーヴァナに誘拐されたスィーターはラーマ王子に救出されるものの貞操を疑われ、最終的には森に追放される。そのときスィーターは身籠もっており、ラヴァとクシャという双子の息子を生む。森でスィーターと再会したラーマは王国に帰るように頼むが、スィーターはそれを断る。そのシーンが舞台劇で演じられていた。このエピソードはこの短編映画全体の下敷きになっていた。

 1996年のスィヤーはアトゥル(サティヤジート・ドゥベー)と結婚したばかりの新婚状態で、実家のムンバイーから婚家のインドールに引っ越して2週間ほどだった。スィヤーは早くもホームシックになっており、ガネーシュ・チャトゥルティー祭に合わせて実家に帰りたいと言う。最初はそれを機嫌良く聞いていたアトゥルだったが、突然豹変し、彼女を叱りつける。その後の二人の夫婦仲がうまくいかないだろうことを暗示していた。

 2016年のシーンではスィヤーは実家のムンバイーにおり、息子のクシー(ニテーシュ・ワードワー)とビデオチャットで会話をしていた。どうやらクシーは米国に留学しているようであった。スィヤーはアトゥルとは別居していたが離婚していなかった。彼女はムンバイーを自分の家として認識していた。

 スィーターは地面から生まれたとされる。ラーマと再会したスィーターは彼と王国に戻ることはなく、地面の中に呑み込まれてしまう。「Siya」のスィヤーも、ムンバイーで生まれ育った女性であり、ムンバイーが唯一の「家」であった。

 一般的にインドの女性は結婚後に夫の家に入って生活を始めるが、必ずしも安住できるわけではない。「ラーマーヤナ」のスィーターにとっても、アヨーディヤー王国は家にはなり得なかった。女性にとっても生まれ育った家こそがいつまでも「家」であるということをこの「Siya」は示していたといえる。


https://www.youtube.com/watch?v=w-eT4A7nQcE