Do Lafzon Ki Kahani

3.0
Do Lafzon Ki Kahani

 2016年6月10日公開の「Do Lafzon Ki Kahani(2つの言葉の物語)」は、韓国のロマンス映画「ただ君だけ」(2011年/英題:Always)のヒンディー語リメイクである。「ただ君だけ」自体も、チャールズ・チャップリン監督・主演作「街の灯」(1931年/原題:City Lights)の翻案であり、また、「ただ君だけ」はトルコ映画「Sadece Sen」(2014年)や日本映画「きみの瞳が問いかけている」(2020年)などにリメイクされている。カンナダ語映画「Boxer」(2015年)も「ただ君だけ」のリメイクである。

 「Do Lafzon Ki Kahani」の監督は、俳優でもあり、また「Tom Dick and Harry」(2006年)などの監督でもあるディーパク・ティジョーリー。主演はランディープ・フッダーとカージャル・アガルワール。他に、ディーラジ・シェッティー、マーミク・スィン、ユーリー・スーリー、フローラ・サイニーなどが出演している。

 舞台はマレーシアの首都クアラルンプール。スーラジ(ランディープ・フッダー)は元格闘家で、現在はミネラルウォーターの配達や駐車場の料金係などをして生計を立てていた。スーラジは、盲目の美女ジェニー(カージャル・アガルワール)と出会い、恋に落ちる。二人は結婚することになるが、ジェニーの両親が亡くなったこと、そしてジェニーが視力を失ったことは、スーラジの過去の行いに関係していることが分かる。

 かつてスーラジは「ストーム」のリングネームを持つ有名な格闘家であった。だが、対戦相手の妻ナターシャ(フローラ・サイニー)に、癌の子供のためにわざと負けるように懇願され、それを聞いてしまう。後からそれは全て嘘であることが分かり、スーラジは対戦相手に瀕死の重傷を負わせ、格闘技から足を洗う。そして、取り立て屋をして生きていた。元日に彼は一人の男性の取り立てをして殺しかけてしまい、逮捕される。そのときの巻き添えになったのがジェニーと彼女の両親だった。

 スーラジはジェニーに過去の因縁を明かさなかったが、彼女の視力を取り戻す手術を行うべく、短期間に大金を手にしようとする。彼は違法な賭博格闘の世界に足を踏み入れ、そこでライバルのスィカンダル(ディーラジ・シェッティー)と対戦する。試合開始7分後に負けることが条件だったが、彼はスィカンダルを倒してしまう。スーラジは麻薬の運び屋にさせられ、瀕死の重傷を負わせられて放置される。

 一方、ジェニーの手術は成功し、視力を取り戻していた。だが、スーラジは姿をくらましていた。スーラジはジェニーの勤める病院に入院するが、「サルファラーズ・アハマド」という偽名を使っていたため、彼女はスーラジだとは気付かなかった。

 それでもジェニーはいくつかの出来事から彼がスーラジであることに気付き、彼を追い掛ける。そして二人は抱き合う。

 暗い過去を抱え、しがない人生を送る男性と、事故により視力を失いながらも一人で明るく生きる女性が出会い、恋に落ちる物語である。それだけなら陳腐なストーリーであるが、二人の過去が交錯していることが分かる点にツイストがあった。最後はハッピーエンドでまとめている。

 基本的に原作の忠実なリメイクである。だが、その忠実さはどうも表面的であり、細部が文脈を失っていたように感じた。一番気になったのはヒロインのジェニーの職業である。彼女は先生をしたり看護師をしたり造形家をしたりしており、職業が一定しない。おそらく原作通りにしたのだろうが、何か説明が抜け落ちている。また、終盤で入院したスーラジが握っていた石や、彼が思い出の場所で放した亀など、よく分からないモチーフも出て来た。おそらく原作では意味を持っていたモチーフなのだろうが、リメイクではそれらが網羅されておらず、糸の切れた凧のようになってしまっていた。

 ただ、ヒンディー語映画界で渋い位置にいるランディープ・フッダーの渾身の演技は素晴らしかった。彼がもっとも得意とする、無口だが頼りになる男の役で、アクションシーンでも身体を張って演技をしていた。ジェニーを演じたカージャル・アガルワールも悪くはなかったが、盲人の演技はいまひとつ信憑性に欠けたし、ジェニー役自体に軸がなく、浮いた存在となってしまっていた。

 「Aashiqui 2」(2013年)や「Ek Villain」(2014年)などをイメージした狂おしい悲恋映画にしようとする努力も見受けられ、特に歌にそれが強く感じられた。しかしながら、「Do Lafzon Ki Kahani」にそれらの映画ほど名曲と呼べるものは見当たらなかった。

 題名の「Do Lafzon Ki Kahani」は「2つの言葉の物語」という意味だが、「2つの言葉」とは何かというのは気になるところである。映画のストーリーの中でそれが明示されることはないが、エンディングにおいて「Love never hurts… Love heals(愛は決して傷付けない。愛は癒やす。)」というメッセージが表示される。この最後の「Love heals」がちょうど2単語であるため、このことを言っているのではないかと推測される。

 「Do Lafzon Ki Kahani」は、韓国映画を原作とした、元格闘家と盲目の女性との狂おしいロマンス映画である。ただ、原作を中途半端にリメイクしたことで、文脈を失ってしまった小道具などがあったようにも感じた。原作に力があるため何とか観られる映画になっていたが、決して最上のリメイクとはいえない。