Hunterrr

3.5
Hunterrr

 2010年にタイガー・ウッズがセックス依存症であることを明かしたが、2015年3月20日公開の「Hunterrr」は、セックス中毒の男性が主人公の映画だ。マハーラーシュトラ州では、日本語でいう「ヤリチン」を「वासूヴァースー」というらしく、劇中でもよくこの言葉が出て来る。

 監督は新人のハルシュヴァルダン・クルカルニー。主演はグルシャン・デーヴァイヤーとラーディカー・アープテー。他に、サイー・ターマンカル、サーガル・デーシュムク、ヴィーラー・サクセーナー、レイチェル・デスーザ、ヴァイバヴ・タトワウディー、スーラジ・ジャガン、ニーナー・クルカルニーなどが出演している。

 舞台はムンバイー。マンダール・ポーンクシェー(グルシャン・デーヴァイヤー)はセックス依存症の男性だったが、数ヶ月前にお見合いで出会ったトリプティー(ラーディカー・アープテー)と婚約していた。トリプティーの前ではセックス依存症であることを隠しており、今まで女性と関係を持ったことはないと言っていた。

 マンダールは母親に頼まれて空港までショーバー叔母さん(レイチェル・デスーザ)を迎えに行く。ところが、顔を知らなかったため落ち合うことができなかった。そこで空港で見掛けた美女に声を掛け、ホテルに連れて行くが、実はその女性こそがショーバー叔母さんだということが分かる。逃げ出したマンダールはトリプティーのところへ行く。トリプティーの家では、彼女の元恋人チャックス(スーラジ・ジャガン)が寝ていた。チャックスはトリプティーが結婚することで落ち込み、酒を飲んで寝ていた。マンダールは、自分がセックス依存症であることをトリプティーに明かす。だが、トリプティーも実はチャックスの子供を妊娠したことがあると明かす。チャックスが結婚を拒否したため、堕胎し別れたのだった。マンダールとトリプティーは秘密を明かし合ったことでより深く結ばれる。

 「ヴァースー」と呼ばれるセックス依存症の女好きが主人公の映画ではあったが、セックスシーンはほとんどなく、ウィットに富んだブラックコメディーに仕上がっていた。ただ、複数の時間軸が交錯する複雑な構成になっており、分かりにくい映画でもあった。

 映画は主に3つの時間軸が平行して進行する。「現在」の時間軸は2015年で、マンダールはトリプティーとの結婚式を控えている。それに対し、「遠い過去」の時間軸では、マンダールがいかにして女好きになったのか、1989年から順を追って説明される。さらに、「近い過去」の時間軸では、マンダールとトリプティーの出会いから結婚を決めるまでが語られる。

 マンダールにはクシティジという従兄弟がおり、彼から女性を口説く手ほどきを受けた。そしてまだ幼い頃に成人向け映画を観て性に目覚め、学校の女の子に堂々と告白してヒーローとなる。それからは、直感で性的鬱憤を抱えた女性を嗅ぎつけては口説き落とす人生を送ってきたのだった。

 何人もの女性と関係を持ってきたマンダールであったが、いざお見合いをするとなかなかうまくいかない。お見合いの場で彼は過去に何人かの女性と真剣ではない交際をしてきたと明かすが、それを聞いた女性たちは去って行ってしまった。そこで彼は、お見合いの場で、今まで女性と付き合ったことはないと嘘を付き始める。そうするとうまく話せるようになった。そうした過程で出会ったのがトリプティーであった。

 トリプティー自身もお見合い結婚をするつもりはなかった。だが、マンダールはトリプティーにしつこく言い寄り、彼女に結婚を申し込む。婚約式が行われるが、彼女の昔の恋人チャックスが現れ、暗雲が立ちこめ始める。

 マンダールもトリプティーも過去に秘密を抱えていた。マンダールはセックス依存症であることを隠していたし、トリプティーはチャックスの子供を妊娠したことがあることを隠していた。だが、二人は秘密を明かし合うことで、本当に信頼し合える仲となる。恋愛結婚であろうとお見合い結婚であろうと、信頼こそが結婚の礎であると、古風ではあるが大切なメッセージが発信され、エンディングを迎えていた。

 ただ、エンドロールの「Hunterrr 303」では、「Hunterrr Sutra」なるナンパの指南書が出て来て、女性を口説き落とすための3つのコツが伝授される。ステップ1は、もてる男だとアピールしない、ステップ2は、いざとなったら逃げる、そしてステップ3は、1番は狙わずに2番を狙うとのことである。

 グルシャン・デーヴァイヤーは初の主演で、悪くない演技をしていた。ただ、ものすごくハンサムな俳優ではないので、「ヴァースー」役としては適役だったか疑問だ。だが、このくらいの男性がちょうど一番もてるということなのかもしれない。現在絶頂期にあるラーディカー・アープテーも魅力的だった。

 「Hunterrr」は、「ヴァースー」と呼ばれるセックス依存症の男性が主人公のブラックコメディー映画である。意外にセックスシーンは少なく、3つの時間軸を交互に見せることでひとつの物語に仕上げるという複雑な脚本をよく映像化していた。大ヒットした映画ではないが、光るものがある佳作である。