Badlapur Boys

1.5

 インド発祥のスポーツとしておそらくもっとも世界的に有名なのはカバッディーであろう。鬼ごっこを格闘技にしたようなスポーツで、アジア競技大会では正式種目になっている。インドでは2014年にプロ・カバッディー・リーグが立ち上げられ、人気が再燃している。

 2014年12月12日公開のヒンディー語映画「Badlapur Boys」は、カバッディーをテーマにした映画である。タミル語のヒット映画「Vennila Kabadi Kuzhu」(2009年)のリメイクである。監督は新人のシャイレーシュ・ヴァルマー。主演は、主にマラヤーラム語映画界で活躍するニシャーン。ヒロインは原作でもヒロインを務めていたサランニャー・モーハン。セカンドヒロインとしてプージャー・グプターが出演している。3人ともヒンディー語映画界では無名の俳優だ。キャストの中で一番有名なのは脇役のアンヌー・カプールである。

 ウッタル・プラデーシュ州の農村バドラープルに住むヴィジャイ(ニシャーン)は、父親の死後、農園で下働きをし、母親と共に暮していた。ヴィジャイはカバッディーが好きだったが、雇い主からカバッディーをすることを禁じられていた。父親は、村に用水路を引くために運動をし、最後には焼身自殺をしたため、村人たちからは狂人と考えられていた。ヴィジャイは、何とか父親の汚名を晴らしたいと思っていた。また、バドラープルで年1回開かれるメーラー(祭り)にメーラトからやって来るサプナー(サランニャー・モーハン)と恋仲にあった。

 バドラープルのカバッディー・チームは弱小で知られていた。ある日、カバッディーの元インド代表で、現在は常勝のインド鉄道チームのコーチを務めるスーラジバーン・スィン(アンヌー・カプール)がやって来て、バドラープルのカバッディー・チームを教える。彼らは、初めての勝利を目指して弱小チームと対戦をし、その試合にヴィジャイも出場を許されて参加する。そこでヴィジャイが乱闘騒ぎを起こしてしまう。

 イラーハーバードでカバッディーの州大会が開催されることを知ったバドラープルのカバッディー・チームは、イラーハーバードへ向かう。だが、州大会に出場するためには、下の大会を勝ち抜いて来なければならなず、彼らは出場を拒絶される。しかし、1チームが事故で出場辞退となったため、特別に出場を許される。その場にいたスーラジバーンは、彼らに「バドラープル・ボーイズ」というチーム名を与えた。

 バドラープル・ボーイズの選手たちは、村ではカバッディーをしていたものの、競技化されたカバッディーのルールを知らなかった。そこでスーラジバーンは彼らにカバッディーの公式ルールを教え込む。バドラープル・ボーイズは個性が際立ったチームで、スーラジバーンは潜在性を認めていた。仲違いからインド鉄道チームのコーチを辞任したスーラジバーンは、本格的にバドラープル・ボーイズの指導を始める。おかげでバドラープル・ボーイズは特別出場かつ初出場にもかかわらず、試合を勝ち進む。その中でヴィジャイはスタープレーヤーとして有名になった。

 準決勝戦でヴィジャイは負傷するが、決勝戦には出場する。対戦相手は常勝のインド鉄道チームだった。バドラープル・ボーイズは互角以上に戦い、僅差で勝利するものの、この試合でヴィジャイは命を落としてしまう。観戦に訪れた州首相の前でスーラジバーンは、バドラープルに用水路を作るというヴィジャイの夢を披露する。ヴィジャイの犠牲もあって、バドラープルには立派なダムが造られ、緑が広がるようになった。

 カバッディーを主題にした映画ということで物珍しさはあったが、脚本はまとまっておらず、監督は未熟で、編集は粗い。俳優のスター性や演技力も乏しく、孤軍奮闘して別次元の演技を見せていたのはアンヌー・カプールのみだった。ボージプリー語映画のような低予算の作りの映画で、一般的なヒンディー語映画の観客の鑑賞に耐えられる作品ではなかった。

 カバッディー映画として観た場合には一定の価値は認められる。公式ルールを知らない村の草カバッディー・プレーヤーたちが州大会で優勝を目指すという筋書きであるため、ルールの説明をしてくれているシーンがあり、カバッディーに疎い人にはいい手ほどきとなる。カバッディーの試合シーンの比重も高く、見所の少ないこの映画の中では間違いなく一番盛り上がっている。

 スポーツ映画の結末は予想しやすいのだが、「Badlapur Boys」は衝撃の結末が用意されたスポーツ映画と言っていいだろう。負け犬のバドラープル・ボーイズが急に覚醒して勝ち進むというのはありふれた筋書きであり、州大会で優勝するというのも予想の範囲内だが、なんと主人公のヴィジャイが優勝を決めた瞬間に死んでしまうのである。しかも、その死はすぐには明らかにされず、9ヶ月後のシーンで、ヴィジャイの恋人サプナーがバドラープルを再訪したときに初めて発覚する。思い切った結末にしたものだ。

 バドラープルに用水路を引くことは、父親の代からの果たせぬ夢だった。バドラープルには雨が少なく土地は干上がってしまった。父親は、用水路を引いてバドラープルでバースマティー稲の栽培を可能にしようとしていた。だが、役所に提出した申請書はいつまで経っても上に上げてもらえず、父親は抗議の焼身自殺をして死んでしまった。息子のヴィジャイも死んでしまうのだが、彼の犠牲のおかげでバドラープルには遂に用水路が引かれる。しかも単なる用水路ではなく、ダムができてしまっていた。

 「Badlapur Boys」は、インド発祥の国際的スポーツ、カバッディーを主題としたスポーツ映画である。だが、非常に安っぽい作りで、しかも極端すぎる結末が待っている。普通の人にとっては観るだけ損の映画であるが、カバッディーのルールを知る目的だったら、利用価値はあるかもしれない。