Super Nani

2.0

 レーカーと言えば、1970年代からヒンディー語映画界に君臨する大女優である。「Khubsoorat」(1980年)や「Umrao Jaan」(1981年)など、多数の賞にも輝いている。私生活も話題に事欠かず、アミターブ・バッチャンと浮名を流した末に独身を貫き通している。21世紀では、「Koi… Mil Gaya」(2003年)や「Krrish」(2006年)などでの演技が印象的だった。ただ、近年はさすがに出演作が減って来ている。

 2014年10月31日公開の「Super Nani」は、この時代には珍しくレーカー主演の映画である。監督は「Masti」(2004年)や「Dhamaal」(2007年)など下世話なコメディー映画を作り続けているインドラ・クマール。キャストは、レーカーに加えて、ランディール・カプール、シャルマン・ジョーシー、シュエーター・クマール、アヌパム・ケール、ラージェーシュ・クマール、シュレーヤー・ナーラーヤン、ヴィシャーカー・スーベーダール、アーンチャル・ドゥイヴェーディーなどである。また、音楽監督はハルシト・サクセーナーである。

 バールティー・バーティヤー(レーカー)はインド人女性の鑑のような人物だった。夫のRKバーティヤー(ランディール・カプール)や子供たちのために献身的に尽くし、神様に祈ることを忘れない信心深い性格をしていた。だが、RKをはじめ、息子のスケートゥ(ラージェーシュ・クマール)、嫁のアースター(シュレーヤー・ナーラーヤン)、娘のガールギー(アーンチャル・ドゥイヴェーディー)はバールティーのことを全く敬っておらず、悪態を付いてばかりいた。

 ある日、米国からバールティーの孫にあたるマン(シャルマン・ジョーシー)がやって来る。マンはバールティーのことをとても慕っていた。マンは、バールティーの家族が彼女に対して酷い扱いをしているのを見て、隣人のリヤー(シュエーター・クマール)と共に一計を案じる。マンはバールティーをモデルとして売り出したのである。広告業者バンブー(アヌパム・ケール)はバールティーを採用し、彼女をモデルにして広告を製作する。瞬く間にバールティーは人気モデルとなった。

 成功を手にしたものの、バールティーの家族は相変わらず彼女に冷たいままだった。そこでマンとリヤーは、スケートゥ、アースター、ガールギーと順に心変わりを促して行き、最後にはRKもとうとうバールティーを尊敬するようになる。バールティーが一家の中で敬われるようになったのを見て、マンは米国に帰って行く。

 まず、題名の「Super Nani」とは「スーパーお祖母さん」という意味である。「Nani」とは母方の祖母にあたる。シャルマン・ジョーシー演じるマンにとって、母親の母親がバールティーにあたる。また、RKは母親の兄弟、つまり叔父である。彼は米国から叔父の家に遊びに来たのである。

 だが、バーティヤー家の雰囲気は良くなかった。バールティーは献身的に家族に尽くしているにもかかわらず、家族にとってはそれが当たり前となってしまっており、誰もバールティーに敬意を払っていなかったのである。バールティーに対するこの冷遇振りはいかにも人工的かつ非現実的であったが、そういう設定だと納得して見続けるしかない。

 そのバーティヤー家に変革をもたらしたのがマンであった。マンは、隣人で、バールティーを尊敬する女性リヤーと共に、彼女に対する家族の待遇を改善しようと努力する。その方法もあまりに現実的であり、首を傾げたくなるものばかりであったが、そういうストーリーなので納得して見続けるしかない。

 ハッピーエンドを常とするインド娯楽映画であるため、序盤では冷遇されていたバールティーも、終盤ではマンとリヤーのおかげで一人また一人と家族の中に味方を増やして行き、最後には難関だった夫のRKの心も勝ち取る。こうして温かい家族が出来上がり、終幕となる。

 この映画は2014年公開であるが、その作りは古風で、まるで1990年代の映画のようだった。インドラ・クマールはその時代に全盛期を迎えた監督であり、当時の路線をそのまま引きずって映画作りをしていると言える。とにかくあらゆる要素が昔のインド映画そのもので、なぜ今の時代にこんな映画が作られたのか不思議にもなる。もはや現代の一般的な観客には合わないだろうが、コテコテのギャグが何とも懐かしく、そして面白く、思わず吹き出してしまうシーンもいくつかあった。

 さらに、主演を務めるレーカーのオーラに圧倒される。撮影時には既に60歳を迎えようとしていたはずだが、全くそうは見えない。20代や30代とは言わないが、40代くらいには見える若々しさを保っており、さすがの一言しか出ない。また、彼女の周囲だけ空気が異なるのである。これは圧倒的な演技力であろうか。醸し出すものが他の俳優たちと違う。往年の名優ランディール・カプールでさえもレーカーの前では凡人に見えてしまう。それほど存在感がある女優であり、使いどころが難しいところもあるのだが、今回は主演ということで、思う存分羽を伸ばしていた。悲劇から喜劇まで、何でもござれの貫禄の演技であった。

 クラシック映画へのオマージュも散りばめられていた。「Shree 420」(1955年)、「Mother India」(1957年)、「Mughal-e-Azam」(1960年)から「Dilwale Dulhania Le Jayenge」(1995年)や「Om Shanti Om」(2007年)まで、インド映画ファンなら誰でもピンとくるパロディーが見られたし、モデルになったバールティーの共演相手としてアミターブ・バッチャンの名前を敢えて出して来るところがまた憎い演出であった。

 「Super Nani」は、1990年代から活躍するインドラ・クマール監督による、まるでタイムカプセルから出て来たような古風なマサーラー映画である。還暦を迎える主演レーカーの存在感が圧倒的で、レーカーを中心に全てが回っているような映画だ。わざわざ観る必要はない出来の映画だが、話の種にはなる。