Roar: Tigers of the Sundarbans

2.5
Roar: Tigers of the Sundarbans
「Roar: Tigers of the Sundarbans」

 インドとバングラデシュの間にはスンダルバン(Sundarbans)と呼ばれるマングローブ林が広がっている。両国政府によってスンダルバンは国立公園や野生動物保護区に指定されており、特に野生のベンガルトラが生息することで知られている。2014年10月31日公開の「Roar: Tigers of the Sundarbans」は、スンダルバンに生息する人食いホワイトタイガーを巡る映画である。

 監督はカマル・サダーナー。本業は俳優で、時々監督もしている。「Roar: Tigers of the Sundarbans」は彼の監督第2作である。キャストは、アビナヴ・シュクラー、ヒマールシャー・ヴェンカトサーミー、アチント・カウル、スブラト・ダッター、ノラ・ファテーヒー、アリー・グリー・ミルザー、アーディル・チャハル、ヴァリンダル・スィン・グマン、アーラン・チャウダリー、プラナイ・ディークシト、プルキト・ジャワーハルなど。無名の俳優たちばかりであるが、後にダンスクイーンとして有名になるノラ・ファテーヒーがデビューしている点だけが特筆すべきである。

 ウダイ(プルキト・ジャワーハル)は野生動物写真家で、ガイドのマドゥ(プラナイ・ディークシト)を雇ってスンダルバンをトレッキングしていたところ、子供のホワイトタイガーを見つけ、保護する。だが、子虎は森林警備隊長(アチント・カウル)に没収された上に、ウダイはその夜、母虎に襲われ、いなくなってしまう。

 ウダイの兄で軍人のパンディト(アビナヴ・シュクラー)は、弟の遺体を探し、仇を取るために、仲間たちと共にスンダルバンに入っていく。そのチームには、スーフィー(アーラン・チャウダリー)、チーナー(ヴァリンダル・スィン・グマン)、CJ(ノラ・ファテーヒー)、ヒーロー(アリー・クリー・ミルザー)、カシュミーリー(アーディル・チャハル)、そしてマドゥがいた。また、虎追跡のエキスパート、ジュンパー(ヒマールシャー・ヴェンカトサーミー)も加わる。

 彼らは虎が出そうな場所に罠を仕掛け待ち構える。目標にしていたホワイトタイガーが現れるが、彼らが作った竹製の檻はあっけなく破壊される。パンディトは相手を見くびっていた。その後、ホワイトタイガーは2匹の虎を従えてパンディトたちを襲うようになる。まずはCJが殺され、次にカシュミーリーが死ぬ。スーフィーは蛇に殺される。

 また、パンディトたちはビーラー(スブラト・ダッター)を名乗る密猟者と出会う。ビーラーに道案内を頼むが、彼はパンディトたちをわざとトラブルに巻き込んでいた。そしてビーラーは彼らを虎の巣に誘い込む。一旦はビーラーが放った麻酔銃がホワイトタイガーに命中するが、その母虎がもう1匹の子虎を守っていたのを見て、パンディトはホワイトタイガーではなくビーラーを撃つ。

 ヒーロー、チーナー、そしてマドゥは虎に殺されてしまうが、ホワイトタイガーはパンディトとジュンパーの命を助ける。二人は森林警備隊に捕獲されていた子虎をそのホワイトタイガーに返す。

 てっきり虎の保護に奔走するチームの真面目な物語かと思って見始めたが、蓋を開けてみれば真逆で、主にスンダルバンで虎狩りをする映画だった。主人公パンディトの率いるチームは単なる密猟者の集まりではなくプロの軍人たちで、密林地帯に入り込むのにもかかわらず、女性キャラがやたら露出度の高い服装を着ている。虎はCGで登場するが、技術的にあと一歩である。とにかくB級映画臭がプンプンする。しかしながら、バングラデシュ側のスンダルバンで実際にロケが行われていることもあって、極度にリアルさもある映画だった。

 敢えてジャンル分けするとしたら、アドベンチャー映画とサバイバル映画の中間になるだろうか。まるでスンダルバンがアマゾンのように描写されており、パンディトたちは密林の中で、養蜂族やカメレオン族など、本当にいるかどうか怪しい部族たちと遭遇する。スンダルバンは虎や野生動物たちのホームグランドであり、狩りに入ったつもりが彼らが狩られる対象となって、仲間たちは次々に殺されていく。彼らに襲い掛かるのは虎だけでなく、ワニや蛇も牙をむく。次はどんなことが起こるのだろうかと、気付くと先の展開をワクワクしながら観ている自分がいた。

 最終的には、あれほど弟の仇ホワイトタイガー狩りに燃えていたパンディトが、必死に子虎を守ろうとするホワイトタイガーを助け、彼もホワイトタイガーから助けられる。こうして彼らの間には不思議な絆が築かれ、虎を保護しようとする方向に向かって映画は幕を閉じる。何とか道徳的にきれいにまとめることに成功していた。ただし、エンディングでパンディトとジュンパーの間に恋が芽生えていたのは唐突すぎて、あくまでこれはB級映画であることを雄弁に物語っていた。

 「Roar: Tigers of the Sundarbans」を観ていて思い出したのは「Kaal」(2005年)だった。人食い虎を追ってジャングルの中に分け入っていくという大枠は共通している。「Kaal」はどちらかといえばホラー仕立てだったのに対し、「Roar」は前述の通りアドベンチャー&サバイバル仕立てで、味付けが異なっていた。

 「Roar: Tigers of Sundarbans」は、インドとバングラデシュの間に広がる密林地帯スンダルバンで撮影された、人食い虎を巡るB級アドベンチャー&サバイバル映画である。もっと実力と経験のある監督が撮ったらかなり面白い映画になっていたのではないかということも感じるが、これはこれでB級グルメを楽しむような気分で鑑賞することができる。もっとも、内容よりも、ノラ・ファテーヒーのデビュー作という点で歴史に名を残すことになる作品ではなかろうか。