2014年9月26日公開の「Desi Kattey」は、少年時代からの親友2人が、拳銃密造などを経て、それぞれ別の道を歩むことになるバディーフィルムである。題名になっている「कट्टा」とは、インドで違法に作られアンダーワールドで流通している簡易拳銃のことである。粗悪な品が多いものの、安価なため、下っ端のギャングなどが愛用している。
監督はアーナンド・クマール。過去に「Delhii Heights」(2007年)、「Jugaad」(2009年)、「Jila Ghaziabad」(2013年)を撮っている。キャストは、スニール・シェッティー、アーシュトーシュ・ラーナー、ジャイ・バーヌシャーリー、アキル・カプール、サーシャー・アーガー、ティア・バージペーイー、ムラリー・シャルマー、アキレーンドラ・ミシュラー、パンカジ・ジャーなど。ドイツ系ポーランド人クラウディア・シエスラがアイテムナンバー「Patne Wali Hoon」でアイテムガール出演している。
舞台はカーンプル。ストリートチルドレンとして育ち、幼い頃からの親友だったギャーニー(ジャイ・バーヌシャーリー)とパーリ(アキル・カプール)は、カッター(拳銃)密造工場で働き出し、やがてカッターの密造を取り仕切るようになる。二人は、マフィアのドン、ハリシャンカル・トリパーティー、通称ジャッジ・サーハブ(アーシュトーシュ・ラーナー)の片腕バブルーを殺し、ジャッジ・サーハブの手下として取り立てられる。しかし、ジャッジ・サーハブの側近ラフィーク(パンカジ・ジャー)は二人の台頭を警戒していた。 一方、スーリヤカーント・ラートール少佐(スニール・シェッティー)はギャーニーとパーリの射撃スキルに感服する。かつてラートール少佐は射撃の国内チャンピオンであったが、ライバルにはめられて国際試合で金メダルを取るという夢を叶えられなかった。彼は射撃のチャンピオンを育てたいと考えており、ギャーニーとパーリをスカウトする。 ギャーニーはラートール少佐の下で射撃のチャンピオンを目指す道を選び、パーリはジャッジ・サーハブの下で殺し屋になる道を選んだ。ギャーニーは試合に出場して勝ち上がり、ラートール少佐の妹パリディ(サーシャー・アーガー)と恋仲になる。パーリはジャッジ・サーハブから与えられた標的を次々と殺し、認められる。彼はムンバイーの別荘を与えられ、子供の頃から憧れていた女性グッディー(ティア・バージペーイー)と住むことを許される。また、ジャッジ・サーハブは選挙に出馬し勝利していた。 ギャーニーは国内チャンピオンになるが、過去の経歴から、インド代表選出を却下される。傷心のギャーニーは久々にパーリに会いに行き、そこで思いをぶちまける。パーリも、親友との再会を喜び、彼と共に殺し屋をしようと考える。だが、犯罪者の更生に価値を見出したチャウハーン警部補(ムラリー・シャルマー)の計らいにより、ギャーニーは急転直下、インド代表に選ばれる。その吉報を聞いたギャーニーは喜ぶが、パーリは彼を離そうとしなかった。とうとうパーリはギャーニーを撃ってしまう。幸い、命に別状はなかったが、ギャーニーの利き手である右手を怪我させてしまう。ギャーニーは左手を使って射撃の練習をし出す。左手でも彼は正確な射撃をすることができた。 ギャーニーは国際試合に出場し、勝ち上がる。一方、パーリを敵視していたラフィークは彼を暗殺しようとする。パーリはラフィークを返り討ちにするが、グッディーが殺されてしまう。また、ジャッジ・サーハブと、彼の師匠である政治家ジュワーラー・プラサード(アキレーンドラ・ミシュラー)の間の仲違いに巻き込まれ、彼は暇を出される。 パーリはギャーニーが出場する決勝戦の観戦に訪れる。そこで彼は、ジュワーラーがテロを起こそうとしているのと察知し、試合が行われている裏でテロリストを排除していく。だが、ギャーニーが殺されそうになったため、彼は試合会場でテロリストを射殺する。ギャーニーは無事だったが、パーリは警官に撃たれ、息を引き取る。悲しみを乗り越えてギャーニーは完璧な射撃をし、インドに金メダルをもたらす。
兄弟のようにお互いを信頼し合っているアウトロー男二人組が主人公の映画はインドで昔から人気であり、「Sholay」(1975年)から「Gunday」(2014年)まで多くの映画が作られてきた。「Desi Kattey」も基本的にはそのタイプの映画である。だが、2人の主人公の内の片割れが途中から射撃選手に転向するため、スポーツ映画的な要素も持ち合わせている。
元々拳銃の密造をしていたギャーニーが、ラートール少佐の指導の下に取り組むことになった競技は25mラピッドファイアーピストルである。25m先の標的を速射し、その精度を競う。ストリートチルドレンだったパーリとギャーニーは、どちらも子供の頃から拳銃に慣れ親しんできており、人並み外れた射撃能力を持っていた。だが、パーリはスポーツ選手になることに興味がなく、ギャーニーのみがこの競技の世界に飛び込むことになった。ギャーニーは急速に実績を伸ばし、遂に国内チャンピオンになる。2008年の北京オリンピックでインド人として初めて個人競技金メダリストになった射撃選手アビナヴ・ビンドレーを思わせる展開である。ちなみに、ビンドレー選手は10mエアライフルという種目の選手である。
一方、パーリはマフィア出身政治家ジャッジ・サーハブの片腕として、言われるがままに標的を殺し、殺し屋としての悪名を獲得する。彼はムンバイーに邸宅を与えられ、子供の頃から憧れていた女性グッディーと住むことも認められ、もちろん金にも不自由しない生活を送れるようになった。だが、彼は満たされていなかった。親友のギャーニーがそばにいなかったからである。
射撃の腕を活かして、一方はスポーツ選手になり、一方は殺し屋になった。果たしてその先に何が待ち受けているか。インド映画には「良心」があり、一般的に道徳的な道を進んだ者が幸せになれるラストが用意されることが大半だ。「Desi Kattey」でも、パーリはすぐに落ちぶれるが、ギャーニーはインド代表として金メダルを獲得し、命運が分かれる。
ただ、最後は友情の物語としてまとめるため、ギャーニーの優勝のためにパーリを犠牲にしていた。なぜか射撃の大会がテロの対象となり、パーリはそれを阻止しようと動く。そしてテロリストの銃口がギャーニーに向けられた瞬間、パーリはそのテロリストを撃ち殺し、自らは警察の銃弾を受けて絶命する。こんな大事件があったのに試合はそのまま続行され、ギャーニーは30点満点を叩き出して金メダルを勝ち取る。
「カッター」と呼ばれる国産拳銃から物語を始めて、殺し屋と射撃選手に分岐させる構成は非常に良かった。このようなバディー映画はインド人の大好物であり、うまく取り扱うことで一定以上の映画になっただろう。だが、残念ながら終盤のまとめ方が雑で、一気にグリップ力を失ってしまう。また、パーリを演じたアキル・カプールの演技が弱く、映画を盛り下げてしまっていた。ヒロインの二人も大した印象を残せていなかった。若手の俳優たちの中では、ギャーニーを演じたジャイ・バーヌシャーリーだけはとても良かった。
もちろん、スニール・シェッティーやアーシュトーシュ・ラーナーといったベテラン俳優たちの演技は素晴らしかった。
「Desi Kattey」は、ギャング、スポーツ、バディーなど、いくつかの要素をひとつに盛り込んだ作品だ。スニール・シェッティーというスター俳優の起用もあり、目を引く。だが、後半の展開に難があり、尻すぼみで終わってしまっている。残念な作品である。