Samrat & Co.

2.0
Samrat & Co.
「Samrat & Co.」

 2014年4月25日公開の「Samrat & Co.」は、探偵が主人公の推理映画である。大家族が住む屋敷で起こった殺人事件を主人公が解くことになる。

 監督はカウシク・ガタク。TVドラマ監督として知られており、代表作に大ヒットドラマ「Kyunki Saas Bhi Kabhi Bahu Thi」(2000-2008年)がある。映画監督としては「Ek Vivaah… Aisa Bhi」(2008年)でデビューしているが、興行的には失敗に終わっている。「Samrat & Co.」は彼の映画2作目になる。

 主演はラージーヴ・カンデールワール。やはりTVドラマ男優として知名度を獲得した人物で、映画デビューは「Aamir」(2008年)になる。他に、マダールサー・シャルマー、ゴーパール・ダット、ギリーシュ・カルナド、プリヤーンシュ・チャタルジー、シュレーヤー・ナーラーヤン、インドラニール・セーングプター、バルカー・セーングプター、ラヴィ・ジャーンカール、ナヴィーン・プラバーカル、ラジニーシュ・ドゥッガル、バウミク・サンパト、スミター・ジャイカル、ラームゴーパール・バジャージ、アジャイ・バンダーリーなどが出演している。また、アイテムナンバー「Tequila Wakila」でダンサーのガネーシュ・アーチャーリヤとシャクティ・モーハンが特別出演している。

 ムンバイーで探偵事務所を開設する有名な探偵サムラート・ティラクダーリー(ラージーヴ・カンデールワール)は、シムラーからやって来た女性ディンピー・スィン(マダールサー・シャルマー)の依頼を受け、相棒のチャクラダル・パーンデーイ(ゴーパール・ダット)と共にシムラーへ向かう。彼女の庭の植木が枯れ出した他、父親マヘーンドラ・プラタープ・スィン(ギリーシュ・カルナド)の様子が変だった。解雇した庭師の呪いとか、幽霊の仕業などとも噂されていた。

 サムラートとチャクラダルが屋敷に着くと、マヘーンドラの長男サンジャイ(プリヤーンシュ・チャタルジー)や次男のヴィジャイ(インドラニール・セーングプター)に迎えられる。ただ、地元で敬われる宗教指導者サティヤデーヴ・バーバー(ラームゴーパール・バジャージ)が除霊の儀式を行ったことで、庭の植木に芽が出て、問題は解決したかのように見えた。

 ちょうどマヘーンドラの誕生日パーティーがあり、サムラートとチャクラダルも招待される。だが、そのパーティーの日にマヘーンドラは窒息死させられる。その場にいたヴィジャイが容疑者として警察に逮捕される。

 しかしながら、サムラートはヴィジャイが犯人ではないと考えていた。当初はディンピーの恋人アヌジ(アジャイ・バンダーリー)を疑ったが、彼もマヘーンドラと同じ時刻に殺されていた。次に運転手のハリ(ナヴィーン・プラバーカル)が真犯人として浮上するが、彼も交通事故に遭って死ぬ。また、近所に住むナーラーヤニー(スミター・ジャイカル)も怪しかったが、彼女はマヘーンドラに恨みを抱き、脅迫メールを送っていたものの、殺人犯ではなかった。

 サムラートは、真犯人が携帯電話でサティヤデーヴ・バーバーに何度か連絡していたことを突き止め、バーバーのアーシュラム(道場)に赴くが、バーバーも殺された後だった。サムラートは、マヘーンドラの経営する会社で働くディーパク(ラジニーシュ・ドゥッガル)こそが、かつてマヘーンドラによって根絶やしにされた一家の生き残りだと気付き、彼のところへ行く。だが、ディーパクはアヌジを殺していたものの、マヘーンドラは彼が殺す前に死んだことが分かる。

 結局、サムラートは真犯人がサンジャイであることを突き止める。マヘーンドラは母親の自殺の原因や妹ディヴィヤー(シュレーヤー・ナーラーヤン)の病気の原因がマヘーンドラにあると考え、彼を恨んでいた。また、マヘーンドラが遺書を書き換え、財産の半分が慈善団体に寄付されることになったことも彼を怒らせた。サンジャイは逮捕される。

 主人公の探偵サムラートは人並み外れた推理力や洞察力を持った人物という設定である。だが、推理小説や推理映画にこのような設定は付き物で、何の目新しさもなかった。サムラートを演じるラージーヴ・カンデールワールは、シャーロック・ホームズを意識したスマートな身のこなし、思考が雪崩を打って噴出するかのようなマシンガントーク、そして文武両道を誇示するアクションに全力を傾けていたが、どれも成功していなかった。決して演技力のない俳優ではないが、サムラートというありきたりな探偵キャラにユニークな命を吹き込むほどの気合は入っていなかった。

 推理映画は複雑に絡み合う人間関係やどんでん返しに次ぐどんでん返しのストーリーが最大に見所になるが、「Samrat & Co.」のプロットに大した捻りはなく、ただただ一直線だった。容疑者が浮上するとすぐに殺されるという繰り返しでワンパターンである。

 キャストの顔ぶれを見ても、ラージーヴ・カンデールワール、プリヤーンシュ・チャタルジー、ラジニーシュ・ドゥッガルなど、映画界でいまいち地位を築けなかった俳優が目立つ。唯一別格なのはギリーシュ・カルナドだ。カンナダ語の劇作家でもあり、俳優でもある。数多くのヒンディー語映画にも出演している。彼の出番は限定的だが、スター不在の映画の中で燦然と輝いている。

 全体的に映画として稚拙な作りであり、TVドラマの延長線上で作られたような印象を受けた。特に序盤と終盤に用意されたアクションシーンは脱力を催すものであった。

 「Samrat & Co.」は、抜群の推理力と洞察力を持った探偵を主人公にした推理映画である。だが、このような映画は古今東西腐るほど作られている。この映画が何か目新しいものを提供できているかというと大いに疑問である。むしろ、非常に単純な筋書きの映画で、今更何を訴えたくてこのような陳腐な映画を作ったのか聞きたくなる。無理して観る必要のある映画ではない。