Yevadu (Telugu)

3.5
Yevadu
「Yevadu」

 2014年1月12日公開のテルグ語映画「Yevadu」は、米映画「フェイス/オフ」(1997年)を彷彿とさせる顔面移植をストーリーの起点にしたアクション映画である。題名の「Yevadu」とは「彼は誰だ?」という意味で、劇中でもキーワードになっている。

 監督はヴァムスィ・パイディパリ。主にテルグ語映画界で活躍する監督である。主演は、メガスター、チランジーヴィーの息子ラーム・チャラン。マルチヒロイン型の映画で、カージャル・アッガルワール、シュルティ・ハーサン、エイミー・ジャクソンの3人がヒロイン扱いだ。また、ラーフル・デーヴ、Pサーイー・クマール、ムラリー・シャルマー、ジャヤスダーなどが出演している。さらに、ラーム・チャランと並び立つテルグ語映画界のスターの一人アッル・アルジュンがカメオ出演しており、豪華である。

 アーンドラ・プラデーシュ州ヴィシャーカパトナムに住むサティヤ(アッル・アルジュン)は恋人ディープティ(カージャル・アッガルワール)が地元のゴロツキ、ヴィールー(ラーフル・デーヴ)に付きまとわれていることを知る。ディープティはサティヤが無用な争いに巻き込まれるのを恐れ、彼と共にハイダラーバードに逃げることにする。だが、彼らの乗ったバスはヴィールーの手下たちに取り囲まれ、二人ともナイフで刺される。そしてバスに火が放たれる。

 警察が現場検証を行ったが、サティヤに息があることが分かり、急いでハイダラーバードの病院に運ばれる。そこで彼の手術を担当したのが女医シャイラジャー(ジャヤスダー)だった。シャイラジャーは、患者の顔半分がただれてしまっているのを見て、顔面移植手術を行う。

 10ヶ月後、サティヤは昏睡状態から目を覚ます。彼の顔(ラーム・チャラン)はすっかり変わっていた。サティヤは病院からヴィシャーカパトナムへ逃げ出し、ラームを名乗る。彼はヴィールーとその手下たちに復讐を開始し、彼らを皆殺しにする。その過程で彼はシュルティ(エイミー・ジャクソン)という女性と出会う。

 ヴィールーを殺し復讐を果たしたサティヤであったが、今度は別の謎の人物に襲われる。サティヤは自分の顔がその原因だと気付き、顔面移植手術を行ったシャイラジャーに連絡を取る。シャイラジャーはヴィシャーカパトナムまでやって来て、彼にその顔の秘密を明かす。実はその顔は、彼女の息子チャラン(ラーム・チャラン)のものだった。

 大学生のチャランは正義感の強い人物で、彼にはマンジュ(シュルティ・ハーサン)という恋人がいた。彼の友人シャシャーンクが住む居住区の住民たちは、地元のドン、ダルマ(Pサーイー・クマール)から強制的に立ち退きを要求されており、それに反抗したためにシャシャーンクは殺されてしまった。チャランは友人が殺されたことでこの問題に関わるようになり、ダルマを恐れて何もできなかった住民たちに勇気を吹き込む。

 ところが、チャランがヴィシャーカパトナムで友人の結婚式に参列し、ハイダラーバードにバスで帰る途中、ダルマたちによって止められ、彼は殺されてしまう。しかも彼に止めを刺したのが、彼の友人のはずだったシャラトだった。政治家志望のシャラトは、ダルマの誘惑に負けてチャランを裏切ってしまったのである。チャランの遺体はシャイラジャーに送られた。たまたまそのバスにはサティヤとディープティも乗っており、瀕死のサティヤも同時に同じ病院に送られていた。シャイラジャーは息子を蘇らせるため、チャランの顔をサティヤに移植したのだった。

 真実を知ったサティヤはチャランの人生を生きるため、ダルマが狙う居住区の問題を解決することにする。チャランがいなくても住民たちは勇気をもってダルマに立ち向かっており、まだ立ち退きはしていなかった。住民たちはチャランの復活を喜び、彼を英雄として迎える。サティヤは住民たちと共にダルマの邸宅に乗り込み、悪党どもを一網打尽にする。シャラトも最後にはチャランの味方をした。全てが解決した後、シャイラジャーの願いを叶えるため、チャランを待ち続けていたマンジュのところへ行く。

 ヴィールーに殺されかけたサティヤが、チャランの顔を移植されて復活し、ヴィールーに復讐する序盤は、多少退屈な展開だった。ヴィールーの立場からすれば、見知らぬ人物から急に喧嘩を売られ、次々に部下を殺されていくのでたまったものではない。「彼は誰だ?」と、題名と同じ台詞が発せられる。その辺りの流れが若干のコメディー仕立てで描かれており、笑いはあったのだが、目新しさはほとんどなかった。強いていえば、顔面移植されるまでのサティヤをアッル・アルジュンが演じ、ヒロインをカージャル・アッガルワールが演じていた点、そして顔面移植を機にアッル・アルジュンからラーム・チャランに俳優がスイッチする点に妙味があった。また、舞台は基本的にアーンドラ・プラデーシュ州の港町ヴィシャーカパトナムである。

 しかし、ヴィールーに復讐を果たしてから「Yevadu」の真骨頂が始まる。道端でサティヤは何者かに襲撃され、サスペンス性が生まれる。すぐにサティヤは、自分の新しい顔が襲われた原因だと気付き、「彼は誰だ?」と叫ぶ。その答えを持っていたのは、顔面移植手術を行った女医シャイラジャーであった。

 ここから物語は過去に飛び、チャランの人となりと、彼が殺されることになった経緯が描写される。舞台はハイダラーバードに移る。チャランもまた正義感から巨悪と対峙していた。彼が戦うことになるのは、政界にも強力なコネを持つ実業家であり、実質的にはマフィアのダルマであった。ただ、チャラン一人でダルマを窮地に追い込んでいた。彼は、ダルマが立ち退きを強要していた住民たちに勇気を吹き込み、ダルマに立ち向かうことを教えた。一度、ダルマは立ち上がった住民たちに殺されそうになるが、チャランは命を助けた。しかし、悪党が改心することはなく、ダルマはチャランに反撃に出る。

 ダルマがチャランを殺すために採った手段は非常に姑息なものだった。まず、彼は部下を同時に3ヶ所に仕向けた。ひとつは住民の立ち退きを強制する居住区で、住民たちに暴力を振るわせた。ひとつはチャランの家で、母親シャイラジャーが人質に取られた。そしてもうひとつは恋人マンジュのところであった。いくら無敵のチャランといえども、住民、母親、恋人を同時に救うことは不可能そうだった。しかしながら、チャランは知恵を働かせ、ダルマの家に行って、彼が溺愛していた娘と遊び始める。ダルマは渋々部下たちを退却させざるを得なかった。

 この手段はうまくいかなかったが、最終的にはチャランの友人シャラトを買収し、彼を裏切らせることによってチャランの殺害に成功した。シャラトの裏切りはこの映画でもっともショッキングな場面だ。確かにシャラトは政治家志望で、チャランから「そんな臆病じゃ政治家になれないぞ」と揶揄されたこともあったが、ダルマにあっけなく買収され、友人の殺害までするというのはあまりにも酷すぎる。シャラトは結局最後に再び裏切ってダルマを殺すのだが、それで罪滅ぼしができたとは決して思えない。「Yevadu」の脚本でもっとも弱い部分である。

 テルグ語映画らしく、ヒロインごとにダンスシーンが用意されているほどダンスシーンが多いと同時に、喉を切られたり足を切断されたりと、凄惨な暴力シーンも多い。スターシステムも強力で、ラーム・チャランをとにかく持ち上げることに全力が費やされている。また、タミル語映画ほどではないのだが、テルグ礼賛のローカリズム臭が感じられた。とにかく思い付いたアイデアを全て投入したかのような盛りだくさんの娯楽映画だが、荒削りな作りであり、洗練されていない。

 「Yevadu」は、ラーム・チャランを中心に、3人のヒロインとアッル・アルジュンのカメオ出演という豪華な布陣のアクション映画である。顔面移植手術によってツイストが作り出されており、中盤以降、それがさらに効果的に物語を盛り上げている。ただ、暴力シーンが多く、展開も極端で、荒削りな映画だ。興行的にはヒットとなっているが、必ずしも完成度の高い映画ではない。