Rajjo

1.5
Rajjo
「Rajjo」

 2013年11月15日公開の「Rajjo」は、ムンバイーの売春街で踊り子をしていた女性が、純朴な青年と結婚し、まっとうな人生を築き上げていこうとする物語である。

 監督はヴィシュワース・パーティル。これが初監督作品であり、彼の詳細は不明である。音楽監督はウッタム・スィン。主演はカンガナー・ラナウト。「Gangster」(2006年)でデビューし、「Fashion」(2008年)や「Tanu Weds Manu」(2011年)で知名度を獲得していたものの、撮影時の彼女はまだトップスターには数えられていなかった。

 他に、「Let’s Enjoy」(2004年)のパーラス・アローラー、プラカーシュ・ラージ、マヘーシュ・マーンジュレーカル、ジャヤー・プラダー、ディーピカー・アミーン、アヴタール・ギル、キショール・カダム、ウペーンドラ・リマエー、シヴァーニー・ラーワト、ヴィピン・シャルマー、シャシャーンク・シンデー、ダリープ・ターヒルなどが出演している。

 2025年6月9日に鑑賞し、このレビューを書いている。

 幼少時に実の姉によってムンバイーの売春街カマーティープラーの売春宿に売り飛ばされ、踊り子として育ったラッジョー(カンガナー・ラナウト)は、売春宿を経営するヒジュラー、ベーガム(マヘーシュ・マーンジュレーカル)のお気に入りだった。大学生のチャンドゥー(パーラス・アローラー)はクリケットチームのコーチに連れられて売春宿へ行き、ラッジョーに一目惚れしてしまう。チャンドゥーはラッジョーのところへ足しげく通うようになり、ついにはラッジョーと結婚をすることを決める。二人は駆け落ちをしようとしたがベーガムに見つかる。だが、ベーガムは二人を祝福して送り出した。

 チャンドゥーの父親(ヴィピン・シャルマー)はその結婚を決して認めなかった。仕方なくチャンドゥーはラッジョーを連れてジェーウールまで流れ着き、そこでカムラーデーヴィー(ディーピカー・アミーン)が運営するアーディワースィー(先住民)のための学校で空き家になっていた警備員小屋に住まわせてもらう。チャンドゥーは銀行からローンを得て中華料理屋台を始め、ラッジョーは学校で踊りを教え始める。

 不動産業者のゴーヴィンド・ハーンデー(プラカーシュ・ラージ)は、これから新しく開くダンスバーでラッジョーを踊らせようとしていたが、既に売春宿からいなくなっており、怒りを募らせていた。ゴーヴィンドはラッジョーがジェーウールにいることを知り、なんとか彼女を踊り子の道に引き戻そうとする。ゴーヴィンドは政界に進出して権力を獲得し、それを乱用してチャンドゥーやラッジョーに嫌がらせをし出す。屋台を破壊されたチャンドゥーはバーに通うようになって酒浸りになる。また、ゴーヴィンドはカムラーデーヴィーの学校の理事に就任する。

 学校は25周年を迎え、記念式典にラッジョーが敬愛する舞踊家ジャーナキーデーヴィー(ジャヤ・プラダー)が来賓として招かれる。ラッジョーは彼女の前で踊ることを望んだが、ゴーヴィンドはそれを妨害する。だが、ジャーナキーデーヴィーはラッジョーの踊りの才能を認め、彼女をアルモーラーに呼ぶ。

 インド映画界には、日本の芸妓にあたるタワーイフを主人公にした映画の系統があり、「Pakeezah」(1972年)や「Umrao Jaan」(1981年)などの傑作を生んできた。「Devdas」(2002年)に登場したチャンドラムキーもタワーイフである。「Rajjo」の舞台になっているのは、ムンバイーの売春街カマーティープラーであり、主人公が育ったのは俗に「コーター」と呼ばれる売春宿であるが、彼女は身体を売って金を稼ぐ売春婦というよりも、踊りでもって客を楽しませるタワーイフだといえる。ただ、「水揚げ」は済んでいるという発言があったので、男性客と寝ることもあったと考えられる。

 ラッジョーは売春宿で生まれたわけではない。彼女はどこかの村で生まれ、幸せな幼年時代を送っていた。だが、姉によってムンバイーに連れて行かれ、売春宿に売り飛ばされた。姉夫婦がマンション購入のための資金を捻出するために彼女を売ったと説明されていたが、いくらなんでもそれは酷すぎる。そんなサラリと流していいバックグラウンドストーリーではないと思う。

 もう一人の主人公チャンドゥーは21歳とのことだが、まるで高校生のように純朴な青年である。日頃から異性に強い関心を抱いており、兄貴分に売春宿に連れて行ってもらってラッジョーと出会ったことで、彼は勉強そっちのけでラッジョーに入れ込んでしまう。そして親に内緒でラッジョーと結婚までする。

 チャンドゥーは大学中退状態で稼ぎもなく、ラッジョーを養うのは難しそうだった。両親から勘当されたため、彼にはラッジョーを住まわせる家すらなかった。だが、結婚後のラッジョーは一転して夫に尽くす献身的な女性に様変わりしており、文句も言わずにひたすら健気に夫を支え続ける。ジェーウールに、ボロボロながら新居を構えた二人は、なんとか生活を軌道に乗せようと努力する。

 映画の中には、セックスワーカーとの結婚を訴える活動家が登場する。そうすることで社会の最底辺にいる女性たちを救おうというわけだ。チャンドゥーも彼のその訴えに感化されてラッジョーとの結婚に突き進む。この部分だけを見ると、この映画は男性たちにセックスワーカーとの結婚を勧めているのかと思ってしまうが、後にこの活動家がとんだ偽善者だったことが発覚し、そのメッセージも立ち消えてしまう。このようにこの映画には一貫した軸がなく、思い付きで撮影していったかのような印象を受けた。

 もしかしたらうまく作ればいい物語になったのかもしれない。だが、未熟な監督が撮ったために、終始安っぽさが漂う作品になっている。売買春や売春宿もステレオタイプかつ美化しすぎである。ただ、このような低予算映画に、なぜかカンガナー・ラナウトやマヘーシュ・マーンジュレーカルといった才能ある俳優が起用されており、彼らの演技が作品を墜落から救っている。タワーイフ映画ということで音楽も重要だが、そこも「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)などのウッタム・スィンを起用していて抜かりがない。カンガナーは相当踊りを訓練したと見えて、彼女の踊りも素晴らしい。このようにいい素材がそろっているのだが、料理に失敗した残念な映画である。

 「Rajjo」は、ずば抜けた演技力を持つカンガナー・ラナウト主演のタワーイフ映画である。それだけで期待してしまうのだが、彼女自身はその期待に十分応えている。だが、未熟な監督が撮ったために全くカンガナーやその他の俳優たちを活かせておらず、中途半端な作品で終わってしまっている。カンガナーのファンだったら観る価値はあるが、それ以外に価値を見出すことは困難である。


कोठे की कहानी: Rajjo | Kangna Ranaut Movies | Mahesh Manjrekar | Full Movie | HD